ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第5回>


 前回書いたとおり、私は、Nintendo64がクソゲーを排除するのは難しいと
考えている。
 なぜなら、「スーパーマリオ64」が、あまりにも名作すぎるからである。
 私はまだNintendo64を持っておらず、したがってこのソフトも持っていな
いわけだが、店頭で少し体験しただけで、いや、人がプレイしているのを後
ろから見ているだけでも、これが名作だということがわかる。
 それだけすごいゲームなのだ。ましてや、マリオということで、知名度も
抜群である。
 Nintendo64というハードにとっては、同時発売ソフトにこれだけの名作が
あるというのは心強い。だが、マリオがあまりに名作すぎるため、弊害が生
じているのもまた事実である。
 Nintendo64に関する、一般誌の記事。どれを見ても、「スーパーマリオ64」
のことしか書かれていない。「パイロットウィングス64」と「最強羽生将棋」
は、ほとんど無視されている。
 まだ3本しかないのにこの状態である。これからソフトが増えてくれば、
間違いなく、問屋や小売店で不良在庫が発生し、それらは“クソゲー”と呼
ばれることになる。
 もちろん、目立たないソフトにも良作はある。「魔導物語はなまる大幼稚
園児」(徳間書店インターメディア)や、「美少女レスラー列伝」(ケイエ
スエス)などは、私個人としてはけっこう好きなゲームである。
 だが現在の市場は、それらのソフトもひとくくりに“クソゲー”と認識し
てしまう。売れないゲームはイコール“悪”なのだ。
 Nintendo64でも、売れないゲームは当然出てくる。ましてやロムカセット
である。問屋や小売店は、さらなる不良在庫を抱え込むことになるだろう。
 SCEのように、ソフトの宣伝を任天堂が肩代わりする必要が出てくる。
SCEは、いち押しソフトの宣伝を行ったが、任天堂はそれとは逆に、いま
ひとつ売れ行きの良くないソフトをバックアップするのである。不良在庫を
減らすにはそれしかない。
 もちろん、売れ行きばかりではなく、内容も救いようのない、本当の意味
での“クソゲー”もなくならないはずだ。参入メーカーを見ればわかる。
 たとえばアクレイム。アメリカでは人気のあるメーカーだから、大量のソ
フトを発売するのは間違いない。
 それだけならばいい。だがアクレイムはおそらく、それらのソフトすべて
を、日本でも発売しようとするだろう。そうなるとスーパーファミコン時代
と、何ら変わりなくなってしまう(ファミ通のアンケートによると、アクレ
イムは、「売れもしないソフトを大量に発売するメーカー」として、問屋か
ら圧倒的に嫌われている)。任天堂が、アクレイムの大量輸入をどこまで阻
止できるか。ここにNintendo64というハードの将来を占う鍵がある。
 同じことがいえるのが、テクモである。「キャプテン翼」の版権がバンダ
イに移り、今のテクモには「テクモスーパーボウル」しかなくなった。
 「テクモスーパーボウル」は、アメリカでは売れセンだが、日本ではそれ
ほどでもない。任天堂としては、アメリカのNintendo64にはテクモを参入さ
せて、日本では参入させたくないところだろう。だが、日本企業であるテク
モがそれをよしとするとは思えない。
 テクモが日本のNintendo64に参入してしまうという状況は、ちょっと想像
したくない。最近のテクモはソフトを作る際に、「とりあえず○○みたいな
やつ」というふうに、企画を立てているとしか思えない。テクモがNintendo
64に参入できるなら、他の中堅真似ゲーメーカーも参入できてしまうだろう。
逆に、ワープやズームのような新興どころは、人気ソフトがあっても参入で
きない(資金的な問題等で)。そうなると、Nintendo64が「最もクソゲー比
率の高いハード」にもなりかねないのである。(続く)

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