ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第25回>


 まったく、正月からいろんなことが一度に起き過ぎる。
 私も以前「ウォーロック」誌で、“一年ひと昔”と書いたことがある。そ
れだけゲーム界の流れは、昔から速かったわけだが、それにしても今月の流
れは、普段にも増してあまりに速い。
 今週のこのコーナーでは、エニックスの「『ドラクエ』はPSで出す」発
表を受けて、3機種の中でPSがいかに有利になったか、検証してみようと
思ったのだが・・・。ここにきてセガが寝技をうってきた。
 セガとバンダイの合併。
 初めて耳にしたときは、「ふうん、そんなこともあるんだなぁ」くらいに
聞き流していたのだが、後からよくよく考えてみて、これが物凄いニュース
であることに気づいた。
 セガとバンダイが合併するということは、バンダイのソフトがサターン以
外から発売されないということである(合併するのは10月だが、バンダイの
PS撤退はそれ以前に行われるだろう)。
 ご存じの通りバンダイは、マンガ・アニメの版権を大量に持っている。と
くに集英社系の版権に関しては、ほとんど独占状態である。
 「ドラゴンボール」のゲームが、PSで大ヒットを記録したことは記憶に
新しい。また系列会社バンプレストの『スーパーロボット大戦』シリーズの
完成度は、高く評価されている。
 ゲームにあまり詳しくない、いわゆる初心者層を、ゲームに引き込むには
最適のメーカーである。こうしたユーザー層は、紛れもなくPS500万台の
原動力であり、同時にサターンが最も取り込めてない層である。
 バンダイと合併して、いろんな版権を取り込んで、『スーパーロボット大
戦』も取り込むことで、初心者層をPSから取り込む。サターン陣営の描く
シナリオはこういったところだろう。うまくいくかどうか。注目したい。
 さて、今週もともと書く予定だったお題に移る。
 既にご存じのことと思うが、エニックスがPSへの参入を発表。さらに、
『ドラクエ』の次回作をPSで発売すると発表した。
 まあ、PS参入第1弾が『ドラクエ』ということはないだろう。もしそう
なら、今の段階で、開発がかなりのところまで進んでいなければならないは
ずだが、エニックスのコメントを見るかぎりでは、そういうわけではなさそ
うだ。これから『ドラクエ』を開発する、というのでは、今年中の発売はま
ず無理(エニックスは「98年4月以降」としている)。それまでPSで1本
もソフトが出ないのでは、エニックスも商売あがったりだからだ。
 エニックスが『ドラクエ』PS発売を決めた要因としては、PSの普及台
数の多さ以外にも、コンビニでソフトが発売できるということが大きかった
のではないかと、私は想像する。
 はじめは私も、「コンビニでのソフト販売」は、そんなに大きなニュース
ではないと思っていた。要するにソフトメーカーが、任天堂への対抗策とし
て独自の流通ルートを開拓したというだけの話である。あくまでメインは従
来のルートであり、コンビニ流通は大勢には影響を与えないだろう。そうと
らえていたのだ。事実、音楽CD店でソフトが売られたときがそうだった。
だが、コンビニにあって音楽CD店にない要素が、一つあったのだ。
 テレビコマーシャルの多さ。
 セブンイレブンなどの大手コンビニが、自社のCMで『ファイナルファン
タジーVII』を宣伝するのである。コンビニは『FFVII』のネームバリュー
を利用できるし、『FFVII』はコンビニのCMで宣伝してもらえる。コン
ビニでのソフト販売は、お互いに大きな利益をもたらしたのである。
 スクウェア自身のCMと合わせて、年末年始のテレビには、『FFVII』
の画面映像が、これでもかというくらいに出まくった。エニックスもこれだ
け凄い宣伝攻勢を見せられては、PSへ心が動くのも当然だろう。(続く)

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