ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第20回>


 私が一番好きなレースゲームは、なんといってもメガドライブの『スーパ
ーモナコグランプリ』(セガ)である。
 その次は、『F1サーカス』(日本物産)。以下、『エグゾーストヒート
II』(セタ)、『F1グランプリII』(ビデオシステム)、スーパーファミ
コン版『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(タカラ)と続く。
 『スーパーモナコ』のいいところは、アーケードからの移植にもかかわら
ず、ドラマ性がある点だ。弱小チームからスタート。他チームのドライバー
に勝ってそのシートを奪い、徐々に徐々にステップアップする。そして念願
のワールドタイトルを奪取する。
 普通のゲームならここで終わるところだが、『スーパーモナコ』は終わら
ない。2年めに、開幕から2戦続けてライバルに敗れ、シートを奪われてし
まうのだ。「過去の人」呼ばわりされながらも、中堅どころのチームから再
起をはかる。再びワールドチャンピオンとしてよみがえったとき、はじめて
エンディングを迎えるのである。
 『F1サーカス』は、レースシーンのスピードの速さに定評のあったゲー
ムだが、移籍のシステムも独特だった。移籍の交渉がシーズン中に行われる
ので、いつ、どのチームと契約するか、駆け引きが重要になってくる。
 『エグゾーストヒートII』は、「『F−ZERO』のマネ」といわれてい
たが、なかなかよくできていたと思う。下位カテゴリーで好成績をおさめて
F1へ。F1では獲得賞金で、マシンの性能を上げていく。
 『F1グランプリII』には、自分のチームを作り、オリジナルドライバー
で戦うモードがある。他のチーム・ドライバーがみな実名なので、妙に現実
味がある。もっとも、他チームに移籍して戦ったほうがはるかに効率がいい
というのが惜しい気もする。
 『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』には移籍の要素こそないが、各レ
ースにそれぞれテーマが設けられている。原作(アニメ)をうまく活かした
作品といえよう。またこのゲーム、BGMがすごくいい。
 こうして見ていくと、私のレースゲームの好みは、至極偏っている。レー
スゲームにストーリー性を求めてしまうのだ。とくに、弱小チームからのし
上がっていく、『太閤立志伝』的なものが好きである。
 F1では、強いチームと弱いチームに、大きな格差がある。強いチームと
そのドライバーは、F1ファンじゃない人にもよく知られているが、弱いチ
ームとそのドライバーは、F1ファンでもよく知らない。
 この点で、F1チームと共通しているのが、ゲーム雑誌である。
 私は「ウォーロック」誌に書いていた頃、いろんなゲーム雑誌をF1チー
ムに見立てて、ストーリーを作っていたことがある。それが今の「V−St
ory」の原型になるわけだが、このストーリーでいうと私は、コローニで
F1デビューして、チームのF1撤退後、リジェのテストドライバーを経て、
ジョーダン入りしたことになる。
 今はひそかにザウバーのシートを狙っている。
 自分がそんな状況だから下位チームのドライバーには、どうしても共感し
てしまう。また、下位チームからステップアップして、トップクラスにのぼ
りつめたドライバー(ハッキネンとか)には、憧れを持ってしまうのだ。
 F1で私が一番好きなのは、実はストーブリーグだったりする。誰がどこ
に移籍するか、いろいろな噂を聞くのが楽しい。
 各ドライバーやチームの行動に、各人の人間味が現れている。こういう人
間味を、レースゲームにまで求めてしまうから、『FORMULA 1 』に対する私
の評価は、どうしても辛くなってしまう。ご了承願いたい。
 今回の原稿は、ゆりかもめの車内で書いた。次回は、コミケで見つけた意
外な人の本について書こう(続く)。

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