ゲームについて考えることは喜びである
連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第19回>
プレイステーションがまだ発売される以前、「PS-X」という仮称でよばれ
ていた頃、その機能を示す画面写真として、F1のレースゲームらしき写真
が使われていたことがある。
テクスチャーこそ貼られていなかったものの、自機は明らかに黄色いベネ
トンのマシンであった。レースゲーム好き、とくにF1ゲームの好きな私は、
この画面を見て「PS-X」に、おおいに興味をもったものである。
しかし、本体と同時に『リッジレーサー』という素晴らしいレースゲーム
が出たからか、それともSCEが『モータートゥーングランプリ』の路線に
転向したからか、今までプレイステーションに、F1のゲームはなかった。
あの画面写真も、すっかり人々の記憶から消え去った頃、“それ”は突然
姿を現したのだ!
『FORMULA 1 』。
「F1日本グランプリ前夜祭」で、片山右京選手が操縦していた“それ”
は、あの頃よりさらに本物っぽいグラフィックになっていた。
すべてのマシンやサーキット(95年版)に、本物と同じ広告が貼られてい
る。なんでも、全チームのスポンサーと契約したのだとか。ウィリアムズか
らセガが撤退していてよかったね(笑)。
もっとも、このテのリアルなレースゲームは、操作感までリアルなことが
多く、えてして素人には手に負えないゲームになりがち。私はそういうスト
レスのたまる系のゲームがあまり好きではないので、“それ”を買おうかど
うしようか、正直いって迷っていた。
だが、新宿西口ヨドバシカメラでのキャンペーンを見て、即座に購入を決
意。『FORMULA 1 』には、「アーケードモード」なるものがあったのだ!
説明しよう。アーケードモードとは、『リッジレーサー』や『デイトナ』
のように、画面上に残り秒数がカウントされており、ある地点を時間内に通
過すれば、秒数がエクステンドされるモードである。『FORMULA 1 』のアー
ケードモードでは、他車に当たっても壊れないし、芝に落ちてもスピンしな
い。コーナーが近づくと自動的に減速する。走行ラインはコース上に黒く表
示される(実際のF1でも、ライン上はタイヤかすが付着して黒く見える)。
パソコンゲームの『GRAND PRIX』(マイクロプローズ)に近い感覚である。
難易度設定を「イージー」「ノーマル」にすれば、どんなに弱いマシンを
選ぼうが、予選ブッチして最後尾からスタートしようが、楽々優勝できてし
まう。ストレス解消にオススメ。
ただ、調子に乗って「グランプリモード」をプレイすると、がらりと状況
が違ってくる。
まあ、簡単なモードが別にあるのだから、こちらが難しいのは当然。コー
ナーが近づいても減速しない。芝にタイヤが乗ったら即スピン。コースの全
体マップなど表示されないので、コースを覚えておかないと、まともに1周
するのも難しい。これはリアルさを追究したがゆえの難しさだから別にいい。
しかし、リアルさとは関係のない要素が、難易度をさらに上げているよう
な気がする。
まず、敵車がラインを譲らない。明らかにこちらのほうがコーナーへ先に
飛び込んでいるような状況でも、決して譲らず、こちらのマシンに体当たり
する。実際のF1なら、出場停止になってもおかしくない行為である。
アーケードモードなら、芝に片輪突っ込んで前に出ることができるが、グ
ランプリモードではそれができないだけに、よけい腹がたつ。
他車に個性がないのも気になる。皆、等間隔に並んで、同じラインを同じ
スピードで走る。たとえば、アレジはスタートがうまいとか、シューマッハ
は周回遅れをかわすのがうまいとか、パニスはとにかく完走重視とか、アー
バインは完走など考えないとか(ヲイ)、各ドライバーの特徴が欲しかった。
私は昔からF1ゲーム好きで、しかも下手の横好きだから、どうも目が厳
しくなってしまうのだが。(続く)
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