ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第2回>


 正直な話、ここまで大成功するとは、思っていなかった。
 「第2回ぷよマスターズ大会」のことである。
 もっとも、すべてのことがうまくいったわけではない。「ぷよまん本舗」
では1時間も待たされたあげく、ぷよまん、ぷよゼリー等の主力商品は軒並
み品切れ。私もとうとうキレてしまい、店舗スタッフやCSAボランティア
スタッフに怒鳴り散らしてしまった。
(あのときのスタッフの皆さんに、この場を使ってお詫びいたします)
 もうひとつ、これは私が過剰に気にし過ぎなのかもしれないが、『ぷよぷ
よ』というゲーム自体が、プレイヤーを差し置いて、主役になってしまって
いるのが気になった。
 本戦で司会者は、プレイヤーの名前を、なかなか観客に紹介しなかった。
プレイヤーが80人もいた時点ではともかく、残り4人となっても、まだ紹
介しないのは問題がある。
 客席から起こったコールが、
“よーんじゅ! よーんじゅ!”
“ごーじゅーご! ごーじゅーご!”
 ゼッケン番号でコールされては、当のプレイヤーたちもいい気はしないだ
ろう。競走馬だって、G1に出てくるような馬はちゃんと名前で呼ばれる。
 どうもゲーム業界では「人間」が表に出てこない。格闘ゲームの「待ちプ
レイ」云々に関する問題も、このあたりに根があるように感じられる。
 ただし、冒頭に書いた通り、今回の「ぷよマスターズ」は大成功に終わっ
た。それはあらゆる要素が、すべて大会成功に結びついたからである。
 まずもっとも大きな要素は、ゲームそれ自体。『ぷよぷよ通』になって加
わった「相殺システム」が、観客をヒートさせるのに一役買った。
 降ってきた「おじゃまぷよ」を、連鎖を作ることで相殺できるため、白熱
した攻防が、『ぷよぷよ(1)』よりも長く続くようになった。連鎖が起こ
るたび、会場はどよめき、盛り上がる。
 選手の名前を紹介しないことこそ気になったが、本戦の司会者二人は、非
常にうまく客席を盛り上げていた。客席を二つに分けての応援合戦で観衆を
あおる。観衆も、ゲーム大会の観衆とは思えないほど(?)よくノッていた。
 決勝戦は、九本勝負という長丁場だったが、最後まで観客のテンションは
途切れなかった。5−3でこの戦いに勝利し、二万人の頂点に立ったのは、
大島広史選手。だがこの“ぷよマスター”に立ち向かった者がいた。
 初代マスター、阿部“シェゾ男”崇史選手だ。
 阿部対大島の対戦も九本勝負。つねに大島選手が有利に試合を進め、4−
2と先にリーチをかける。だがそこから阿部選手が粘りを見せる。会場の
「シェ・ゾ・オ!」コールに後押しされて、4−4のイーブンに持ちこんだ。
 そして九本勝負の九本め。両者が互いに連鎖を作動させると、魔法の玉が
激しく画面上部を行き来する。息詰まる持久戦となったが、最後に粘り勝ち
をおさめたのは、阿部“シェゾ男”選手のほうだった。
 かくして阿部選手は“グランドマスター”の称号を獲得した。
 この勝利は、「シェゾ男時代」の到来を、見る者に印象づけた。二万人の
頂点に立ったマスターでさえ、阿部選手には勝てなかったのだ。
 阿部選手は王者となるにふさわしい「華」をもっている。弱冠一四歳とい
う若さ。派手なシェゾの衣装。大舞台に立ってもひるまない度胸。すでに決
定している海外遠征(ソウル)で、まずは力を見せつけておきたいところだ。
 もちろん他のプレイヤーたちは、シェゾ男時代を一日も早く突き崩そうと、
躍起になるに違いない。阿部選手の行く先は、決して穏やかな道ではない。
 だが今日のところは、観客たちは、王者の誕生を素直に歓迎していた。彼
らは大会の余韻に浸るかのように、田中克己&BONGO FIVEのライブや、プレ
ゼント大会の、盛り上がりを楽しんでいた。(続く)

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