ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第1回>


 いつからだろう?
 ゲーム関連の雑誌やテレビ番組に、サラリーマンが顔を出すようになった
のは。
 初代ファミコンがブームの頃には、もっと奇妙な連中が、これらの媒体に
ひっきりなしに登場していた。“16連射”高橋名人、“覆面総帥”ミスタ
ーX、“希代の悪役”インドマン等々。
 彼らはまさに「怪人」であった。
 ゲームは「遊び」である。「遊び」の世界の住人には、遊園地から脱走し
てきたかのような「怪人」たちがふさわしい。彼らが子供たちの人気を集め
ていたのも、当然のことといえよう。
 今のゲーム界には、こういう「怪人」がほとんどいない。作り手も売り手
もマスコミも、みんな同じように、スーツを着て、サラリーマンづらして、
雑誌やテレビでゲームを紹介する。皆、いかにも「このソフトを買ってくだ
さい」という顔をしている。一部のマスコミを除けば、見ている子供たちを
楽しませようというパフォーマンスは一切ない。読者や視聴者の反応など念
頭に置くことなく、ただ事務的に、言うべきことだけ言ってさっさと終わる。
 だから人気が出るはずがない。
 たしかに現在、ゲームは子供だけのものではなくなってきている。むしろ
メーカーやマスコミは、それより上の世代、中高生や大学生を、ターゲット
にしているふしがある。だから「怪人」が減って、そのぶんサラリーマンが
目立つようになったのだろう。
 だがそれではゲーム界が、ビジネス臭くなってしまう。大きなイベントに
行くと、スーツ姿でパンフレットを配るメーカーの人をよく見かけるが、あ
れはやめてほしい。「好きでやってるんじゃありません。仕事だからやって
るんです」と顔に書いてあるからだ。サラリーマン、それも仕事をするサラ
リーマンの姿は、ゲームという「ハレ」の世界には似つかわしくない。
 ゲーム界を、日常世界、「ケ」の世界の闇から救うため、今こそ「怪人」
が必要な時なのだ。
 確かに「怪人」というのは、子供向けのキャラクターである。だが子供向
けのキャラクターが、中高生や大学生、あるいはそれ以上の世代に、まった
くウケないかといえば、そんなことはない。『ウゴウゴルーガ』などを例に
出せば明らかである。
 今のゲーム界にも、「怪人」がまったくいないわけではない。たとえばブ
ンブン丸氏。ゲームの腕もさることながら、「大技を狙った華麗な勝ち方」
を目指す彼は、ギャラリーはもちろん、一般マスコミの前にも堂々と出てい
けるキャラクターである。顔がコワいのもいい。
 かつての高橋名人の役割を担えるのは、彼しかいない。テレビ東京の夕方
のゲーム番組で、彼がレギュラーにならないだろうか? 高橋名人やミスタ
ーX、それに渡辺浩弐氏は、これで有名になった。
 あるいは雑誌である。ファミ通の発行部数も確かにすごいが、大手のマン
ガ雑誌だと、その3〜7倍もの読者に、名前を覚えてもらえるのである。
 週刊少年ジャンプで有名になったのが、堀井雄二、木村初、宮岡寛、さく
まあきらの各氏。ヤングジャンプで売り出したのが、ミスターXら“ファミ
コン4超人”。彼らのような「子供たちのヒーロー」が、今こそ必要なのだ。
 だいたいゲーム界の住人は、あまりにもマスコミに出なさ過ぎる。だから
何かゲーム絡みの問題が起こった場合、よく知りもしない人間の浅はかなゲ
ーム批判ばかりが、一般マスコミに乗って流布されるわけだ。
 「てんかん報道」などはそのいい例だ。あのときはゲーム界の人々も、各
雑誌でこの問題を取り上げていたが、その「各雑誌」というのが全部ゲーム
専門誌だったので、彼らの意見がゲームファン以外に伝わることはなかった。
 ゲーム界から、親しみやすい生身の人間が登場すれば、ゲームに対する世
間の偏見も、かなり薄れるのではないかと思うが、いかがだろうか。(続く)

ご意見・ご感想・原稿ご依頼等はこちらまで
ff4a-tky@asahi-net.or.jp  または NIFTY:GEF05575
次ページに進む
「The Game Power」に戻る
ホームページに戻る