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best of 2003

2003年は50冊読了。2002年は69冊だったんだなぁ。アメリカに来て以降はほとんど読めなかったけれど、前半で結構たくさん読んだつもりだったんだったのに。2002年は前半で更に飛ばしていたのか〜(就職活動で忙しかったんじゃないのか>わたし^^;)。ストレスが溜まって本に走ってたのかも・・・。

と言うわけで、2003年のマイ・ベスト。
まず文学?部門では、Ruth L. OzekiのMy Year of Meatsと、ティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』。

こどもの本/ヤングアダルト部門では、上橋菜穂子の新刊『神の守り人』2冊組。ファンタジーの世界を目いっぱい楽しみつつ、色々考えさせられた。ファンサイトを見ていると、守り人シリーズは、たくさんのファンに愛されて、本当に素敵なシリーズに育ってきたな、と思う。続きが楽しみ〜。

次点は今年初読みだった小野不由美の十二国記シリーズかな。

2003年は新しい音楽をあまり聴かなかったかも。すでにCDが200枚くらいある上に引越しの年だったので買い控え。でもそろそろ、また買ってみようかな。


Winter Break

と言うことで冬休み。惰眠をむさぼる冬休み。ふにゃにゃ。

★48『白夜行』 東野圭吾 (集英社文庫) 2002

本が読みたい〜と言っていたら日本から送ってくれた文庫本その一。文庫で850ページ強なんだけれど、結構面白いし、冬休みになった気楽さで夜更かしして一日で読んでしまう。筆力があるし、きっちり書き上げてくるなぁ。ただ、女性の描き方が、ひどく寂しいな、とも思う。初出は集英社、1999年。

★49『神鳥―イビス―』 篠原節子 (集英社文庫) 1996年

送ってくれた文庫本その二。こっちもさくっと読んでしまった。う〜ん、わたしの好みからちょっと外れてるなあ、これは。ふみみ。

★50 My Year of Meats by Ruth L. Ozeki (Penguin Books, New York) 1998

今年最後の読了本はちょうど50冊目。そしていきなり今年のベスト・ブックに躍り出る、佳作。貸してもらって何となく読み始めただけに得した気分。

大学のわたしの仕事場に、夕方になるとお掃除のおじさん(janitor)がやってきて掃除をしてくれるのだけれど、彼はどうやら日本語を勉強しているらしく、わたしを見つけては声をかけてくれる。先日その人が、「この本、なかなか面白かったよ」と言って貸してくれたのがこれ。

作者は日系アメリカ人の女性で、日本に留学して古典文学を勉強していたこともある、ドキュメンタリー制作者。この小説の主人公のJane Takagi-Littleも同じ設定。日本での牛肉の消費を増やすために、アメリカ産肉の輸出を促進する利益団体、"BEEF-EX"がスポンサーとなって、ドキュメンタリー番組"My American Wife!"の制作が開始される。この番組は、知られざるアメリカの各地に住む「アメリカン・ワイフ」の生活を取材して、牛肉を使ったレシピを紹介してもらう、と言うもので、ジェーンは当初コーディネーターとして雇われる・・・。

最初はちょっと読みにくいのだけれど、中盤から息を呑むような面白さだった。日本とアメリカの間、そして男社会のテレビ業界、文化のはざまに生きるジェーン。彼女は、かりっとしていてなかなかかっこいい。空間が交差する構成。日本に住む拒食症のアキコ。ドメスティック・バイオレンス。人種差別。性差別。そして牛肉業界の汚染。硬いテーマなのに、ぴりっと皮肉のスパイスが効いていて、するっと読める。清少納言の枕草子まで絡んで、出てくる女性たちは哀しく、そして様々に魅力的でもある。

日系アメリカ人の女性が書いた、日系アメリカ人の女性の話で、アメリカではこういうジャンルは"women of color"(非白人の女性)の文学、と呼ばれることが多い。日本では「マイノリティ文学」と呼ばれるのかな。この本を読んで、どうしてこういうジャンルが必要で、そしてきちんと評価され、日の目に当たることが大切なのか、実感できた気がする。この本を読んでいると、ジェーンやアキコはわたしに近いところにいる、という気分になる。わたしの問題を、物語ってくれる本。

もちろん、わたしは一時的にアメリカに住んでいるだけで、日系アメリカ人の女性たちとは立場が違うことも多いのだけれど。最近、わたしは"students of color"なのだろうか?と問われたり、自問する機会が何度かあった。わたしが住んだことがある「アメリカ」は、ほぼ大学のキャンパスに限られていて、肌の色で差別された、と実感したことはまだない。

日本に帰れば、わたしはエスニック・マジョリティで、強者の傲慢さを持って、時にわたしは差別される側に対して、あまりに無神経にもなりうる。そして、同時に自分・たちが肌の色で差別されうる、と言うことを、まだ(おそらくそれは幸運なことでもあるのだろうけれど)肌で理解していない。やれやれ、わたしは差別される対象であると同時に、底の方では無意識的 racist(差別主義者)でもあるのだ。授業で勉強しても中々わからない実感がわいてくる。

日本語訳も出ているみたいだけれど、アメリカに住んで、この本を英語で読んだからこそ、こんなにも色々考えさせられたんだろうな、と思う。ちょっとつめが甘いところもあるけれど、面白かった・・・。これを読んでいると、Amtrakに乗って南部に旅をしたくなる。それから、ベジタリアンにはならないにしろ、牛肉はあんまり食べないようにしようっと^^;。




Thanksgiving Break

ここのページ、まだ見てくれる人いるのかしらん。とりあえず、自己満足的備忘録。

学期が始まると、毎日の課題に追われて小説は全く読めない日が続く。4コース、12単位分の授業を取って(一単位=1週間に50分、で計算。3単位の授業が多いので、週に3日×50分とか、2日×1時間15分になる)、週に13時間働く生活では、小説は危険なトラップでしかない。だって読み出したら止まらないんだもん・・・。

わたしの専攻は「女性と公共政策」と言うもの。今学期取った授業は、統計学とミクロ経済学(この2つは必修)、「アメリカにおける女性、公共政策、法の調査」(専攻の必修)、それからロー・スクールで「法と女性に対する暴力」と言う授業。必修の2つは基本からきっちり教えてくれるのでいいのだけれど、やたらに課題だの小テストが多い。専攻の必修はやたらに読む量が多い(本8冊+論文とかもろもろ)上に課題が多くて、読み残しがたくさん・・・。ロー・スクールの授業は、確かに勉強にはなったけど、やっぱり一番大変で、弁護士になるんじゃなくってよかったわ、わたし。でも、アメリカの法律に関するわたしの知識って、前に留学した時に取った政治学の授業が少し判例とか州の条例とかを扱ってたのと、『アリー・myラブ』だけ、なんだから、仕方ないといえば仕方ないか^^;。

仕事は楽しいのだけれど、やはり英語できちんとコミュニケーションが取れないとだめだな、と再確認した。まあ、日本語でもしゃべるの上手くないんだから、ゆっくりやるしかないんだけれどね。

と、言うことで休暇に読んだ本の記録。

★47 Apparition Alley by Katherine V. Forrest (Berkley Prime Crime Book, New York) 1997.

秋学期の唯一の土日以外のお休み、感謝祭休暇。11月の最終木曜日がThanksgiving Dayで、次の日の金曜日と週末を合わせて4連休になる。のんびり読み残していた教科書とか、課題をしようと思ってたんだけど、ミステリを貸してもらってしまったので、つい一日で読破・・・。

"apparition alley"は日本語にすると「亡霊路地」くらいかな。同性愛者の女性が主人公の、いわゆるレズビアン・ミステリ。アメリカではきっちりとジャンルが確立してるのがすごい。ロス・アンジェルス市警の刑事、Kate Delafieldが主人公のシリーズの5作目のよう。わたしはシリーズ物は最初から読むのが好きなんだけど、これしかなかったので。日本ではこのシリーズは未訳。この作者の作品は、1983年の恋愛物Curious Wineだけ日本語訳されているみたい(『愛を、知るとき』大栄出版) 。

なかなかに面白かった。切ないわ。警察でのカミング・アウトの問題を扱っていて、人物描写とかも結構しっかりしている。目の色の描写が多くて、ちっとハーレクイン(読んだことないけど^^;)的な雰囲気もあるのだけれど。主人公のケイトの恋人の目は青紫色(^^)。

女性探偵物ってまだあまり読んだことがないのだけれど(アメリカのだと、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンと『女には向いていない職業』のコーデリア・グレイしか読んでないかも・・・)、グラフトンのキンジーと、ケイトを比べると違うところが多くて面白い。

キンジーは探偵で一匹狼タイプ。確か、警察官になるつもりでポリス・アカデミーに入ったけれど規制にうんざりして、保険会社の調査官になってその後独立したんだったと思う。

一方ケイトは、市警でも評判のいい刑事で、組織への愛着も強い。"my police family"とか言っちゃうのだ。色々な葛藤があっての言葉ではあるし、女性でしかも(半分クロゼットに入っているとはいえ)レズビアンの彼女が一目置かれ、受け入れられるのは大きなことだけれど、キンジーのドライな反骨精神もちょっと懐かしい。キンジーは着る服にも無頓着で、依頼人のパーティとかに行く時は仕方なく一張羅の黒いすとんとしたワンピースを着ていく、とか言う細かい描写も好きだ。服装とかのディテールを読むのも、ミステリの楽しみの一つ。ケイト・デルフィールド・シリーズはちょっとその辺が弱いかな。でもきっとまた読むけれど。


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