発行日:98年9月27日(日)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.594


92〜97年の6年間に渡る給餌活動の分析について - 2

[グラフ:東谷山と栃木県井頭公園の食餌量]

左:東谷山の給餌の推移、
右:栃木県井頭公園
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東谷山の消費傾向と面白いことに、栃木県井頭公園の食餌量の変化が極めて類似していることがこの両者の比較から判明しました。

  1. 井頭公園のデ−タはリス研通信No.264(93年8月)に掲載されているものを利用。
  2. 消費量は、凡そ東谷山の2倍程ですが、その推移動向は極めて類似。
  3. ただ井頭公園では、その入手し易さから、カシグルミを投与。カシグルミの中身の量はオニグルミの約倍。相対的には更に多く4倍ほどの消費量。
  4. このことから頭数も4倍以上と推定される。
  5. また夏に消費が低下する期間は「クルミ以外の食べ物に依存するのか、単に人間と同様に食欲が落ちるのかは今後の研究課題です」とあり同様なコメントが述べられています。


マツノザイセンチュウについて

【出典】
原色樹木病虫害虫図鑑
保育社、 P.146
寸法
0.6〜1mm
媒介
マツノマダラカミキリ
方法
新梢を食害するときに材の中に侵入。
線虫
樹脂道周辺の細胞に口針を刺し込んで吸汁。
増殖
きわめて早く短期間に高密度となり樹を枯死させる。
枯死
8月以降に多く、針葉が褐変を始めるとすでに手遅れで間もなく枯死する。
実験
1樹当たり3万頭の線虫を接種すると1-2週間後にはヤニの流出がとまり、樹の含水量が減少し夏季では接種後、4週間で葉色が衰えることが報告。

秋季第三期幼虫がカミキリの蛹室付近に集まり越冬翌春4 月ごろ蛹化すると第四期幼虫となり蛹に取りつき成虫が羽化すると気門から気管へ移動。

[図:マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの生活サイクル]

ドングリを運ぶ動物? 森の時速

【出典】
「自然を守るとはどういうことか」
守山 弘 著、農山漁村文化協会出版 P.28

ドングリは重たいので、自然落下では親木の樹冠下からあまり離れない。ドングリを遠くまで運ぶことができるもの、それはネズミ類とカケス。(それにヤマガラ)

アカネズミ
ノネズミは冬季に食料を貯蔵する。コナラ、ミズナラ、クリ、トチノキ、スダジイ、マテバシイ、ヤブツバキ
[運搬距離]
運搬距離200m以下
河川を渡って運搬はできない。
カケス
ドングリを食べるだけでなく、地下に貯蔵する。
[運搬距離]
親木から最大1.2キロメートルまで運搬し地面に埋めている。
ヤマガラ
スダジイの実を樹幹、土手、木の根元に埋める。

最終氷河期が終わって気候が温暖化し、亜寒帯針葉樹の後退に続いて温帯落葉広葉樹(ブナ)が北上し、裏日本型と表日本型の二つのタイプに分かれていった。これは1万2000年前に起きた。どのくらいの速さで北上したのだろうか?

「照葉樹林の主要な構成種であるカシやシイの種子は40キロメートルを移動するのに1000年から1500年かかって北上した。これは、一回の移動で500から800メートルもドングリを飛ばさなければならない。」… 縄文時代に照葉樹林が北上した速さは、カケスによって支えられていた可能性が高い……。コナラやシイは芽生えてから種子を付けるようになるまでにはほぼ20年くらいかかる。……自然の成立ちを考えるうえで、生物の移動速度を視点に加えることの重要性がある。

【面白い視点ですね。照葉樹林が広がるスピードが、1 回の移動で800mとすると20年間で1回となるため、毎年40mづつ進むとすると時速0.45cmで進んだという移動が森林形成の歴史の中に内包されているという「事実」がなぞ解きのように浮かび上がってきて】


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