ステレオ月面写真
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ここで紹介する写真は,擬似的に視差を作った「擬似ステレオ写真」ではなく,本当に視差のある画像を取得し,ステレオ写真として構成しています。
撮影方法は難しくありません。1〜3時間程度の時間差をおいて月を撮影するだけです。そうすると,地球の自転により,観測者と月の位置関係が微妙に変化します。それを視差として利用したものです。
厳密に言えば,撮影間隔を空けると,月齢も進みますし,月も公転して動いていますから,それほど綿密に作られたものではありませんが,臨場感ある画像がお楽しみいただけると思います。
平行法……左画像を左眼で,右画像を右眼で見る……で,ごらんください。
左右の画像の間隔は,50〜55mmぐらいになるのが適正です。モニターで調整できない場合,フォトペーパーに適切なサイズでプリントしてくだされば,かなりリアルな立体像が楽しめます。
なお,このページの画像は,すべて正立像にしています。
また,目の健康のため,あまり長時間注視しないようにしてください。
2004.07.01
↑が大きすぎて立体視しにくい方は,↓でお試しください。
右:21:45,左:24:06 BORG76ED+LV12mm+QV-2900UX
月齢13.7。満月の前の日の月です。正立像ですから,左のほうがわずかに欠けています。
サイズを大きめにしてみました。大きいほうが臨場感がありますが,解像度の低いモニターでごらんの方は,画像が大きくて平行法がやりにくいかも知れません。一旦,適当なサイズにプリントアウトして,じっくり眺めてみるのも手です。
「宮森峡谷」をたずねて……
月の表側には,日本人名のついた地形はほとんど見当たらないのですが,「宮森峡谷」と言う名前の地形が存在することを教えてもらいました。
月の首振り運動(秤動)によっては,ほとんど見えなくなる場合もあると言う,月の東の端っこにある地形です。満月直前の,月の向きがちょうど良い条件のときに狙って観測しなくてはいけません。
月の西側(この場合は左の端っこ)を拡大してみます。
リッチョーリ・クレーターを割るように通っている谷が,お目当ての「宮森峡谷」です。
月面図をお持ちの方は,クレーターの位置から照合できると思います(天文年鑑の小さな月面図でも照合できます。)。
望遠鏡用の月面図は倒立像なので,図版を逆さまに持って照合してみてください。
さて,せっかくなので,宮森峡谷の立体写真も試みてみました。
月の端っこのほうなので,立体視の難しいエリアですが,欠けぎわが遠くに見えるようなつもりで,ある程度先入観を持って眺めれば,何とか立体視できるのではないかと思います。
……Registaxで画像を強調したら,かえって平べったくなってしまいました(汗)。
リッチョーリの上に,小さな明るいクレーターがあり,そのすぐ右側が浅い溝のように窪んでいるのが立体視出来ると思いますが,この窪みの部分も,宮森峡谷の続きです。クレーターを切り裂き,水路のようにうねりながら伸びた溝……宮森峡谷は,小さいながら,ダイナミックな風景を作っていたのです。ステレオ写真化することで,リッチョーリの上側(北側)のエリアまで,しっかり見えるようになりました!
2004.07.27
月齢11.4。時間的にも観測しやすく,バラエティに富んだ地形の見える時期。
右: 20:15,左: 21:32 BORG76ED+LV15mm+QV-2900UX,露出1/320s
撮影間隔が狭いので,やや平面的に見えますね……レモンのような形にも見える。
拡大撮影用には,このぐらいの撮影間隔でも良いのですが……。
月面北部です。
右: 20:11,左: 21:26, 露出1/15。機材は全面写真と同じで,デジカメのズーム機能で拡大しています。
いちばん大きなクレーターがプラトンPlato。右のほうにアルプス山脈とアルプス谷。
画像に地名を重ねてみました。
ちょっと工夫して,文字が手前に浮かび上がるようにしてあります(高さはまちまちですが…)。
フラットな地形だと立体視しにくいことがありますが,文字が浮き出るようにしてあると,文字を目標に立体視が出来ると思います。
(この画像は縮小すると文字がつぶれてしまうので,縮小画像はありません。)
ちょっとカッコいいでしょ。
月面南部も見てみましょう。
右: 20:12,左:21:30。撮影条件は上の写真と同じ。
おなじみ,ティコTycho近辺のクレーター密集地帯です。
名前付きの画像で,クレーター名と一緒に立体視をお楽しみください。
あまりたくさんの文字を入れると,肝心の地形が見にくくなりますので,大きいクレーター3つにだけ,名前を入れました。
2004.08.02〜03
満月を少し過ぎました。
比較的気流の安定した夜で,月面東部のクレーターをじっくり狙います。
右: 22:26,左: 24:32 BORG76ED+LV15mm+QV-2900UX,露出1/500s
右: 22:23,左: 24:29 BORG76ED+LV15mm+QV-2900UX,露出1/15s
危難の海の北側のクレーター群です。
これも地名を入れてみました。
月の端っこのほうは,月面図との照合がちょっと難しいエリアです。それだけに,丹念に見てゆくと,今まで気づかなかった地形が見つかったりして,楽しみも多いものです。