<色浜>
(いろのはま)福井県敦賀市

旅行日 '97/7

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 現在の地名は色ヶ浜(いろがはま)。敦賀駅から色ヶ浜へ向かうバスは、朝昼夕に1本ずつで一日3便! 私は海水浴シーズンに走る臨時バスに便乗して行って来てしまいました。
 芭蕉が「さびしさや すまに勝ちたる 浜の秋」と詠んだ地ですが、現在夏季に限れば、海水浴客やウィンドサーフィン(?)に興ずる若者たちで、たいそう賑わいます。(道路も大渋滞!)
 それと(野暮を承知で申しますが)この近辺には数多くの原子力発電所が立地してます。


十六日、空晴たれば、ますほの小貝拾はんと、種の浜(いろのはま)に、舟を走らす。海上七里あり。

 陽暦では9月29日。芭蕉がこの地を訪ねたのは、西行法師ゆかりの地であるから。『山家集』には次の歌が所収されてます。

 潮染むる ますほの小貝 拾ふとて 色の濱とは 言ふにはあるらん

 ますほの小貝(右写真)は、大きさ数ミリの薄桃色の美しい貝です。いまでは海は汚れ、浜は埋め立てられ、ほとんど見られなくなってしまったそうです。


 浜は、わづかなる蜑(あま)の小家にて、侘(わび)しき法華寺有り。ここにちゃ(茶)をのみ、酒をあたゝめて、夕暮れのさびしさ、感に堪へたり。(中略)
 その日の日記、等裁(とうさい)に筆をとらせて、寺に残す。

 「侘びしき法華寺」とは、本隆寺(ほんりゅうじ)のこと。「その日の日記」は現在も寺に所蔵されています。
 私は短い時間でしたが堂内に上がらせていただき、寺の奥さんからその貴重な「日記」を拝見させてもらいました。さらには、やはり芭蕉を慕ってこの地を訪れた人々のエピソード、著名な俳人が来遊したときの模様などを伺っています。
 上の「ますほの小貝」もこの寺で頂戴したものです。俳諧について大したことも知らない私に、いろいろと・・。ありがとうございました。


続いて、芭蕉の句(↓)へ。



<芭蕉の句>

 さびしさや すまに勝ちたる 浜の秋
(さびしさや すまにかちたる はまのあき)

<句意>
なんと寂しいことよ。(古来有名な)須磨(の秋の寂しさ)にも勝っている色の浜の秋である。

 「須磨」とはもちろん現在の神戸市西郊、海岸沿いの地域のこと。
 本隆寺の奥さんが「私が嫁いで来たころ、静かでほんとうに良いところでした・・」と、幾度も、申し訳なさそうにおっしゃっていたのが、心に残ります・・。


ここではもう一句紹介します。




 波の間や 小貝にまじる 萩の塵
(なみのまや こがいにまじる はぎのちり)

<句意>
波の引いたあとに(西行法師が詠んだ美しい)ますほの小貝にまじって萩の花屑がが散り混じっているよ。
三省堂・新明解シリーズ「奥の細道」(桑原博史監修)より




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