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<幌延深地層研究センター>
(ほろのべしんちそうけんきゅうせんたー)

<基本データ>
所在地
北海道天塩郡幌延町北進432番2
開所
2001年4月
運営
日本原子力研究開発機構(JAEA)

<研究内容>
地層科学研究
地層処分研究開発



<核のゴミと幌延深地層研究センター>
 原発を運転しているとどうしても核のゴミが出てくるが、この中でも高レベル放射性廃棄物という代物は、放射能が問題の無いレベルになるまで数万年から十万年もかかると言われている。この核のゴミの問題は原発を持つ世界各国が共通に抱える大問題である。海に捨ててしまえば手っ取り早いのではとも思うが「ロンドン条約」というのがあり、1996年の議定書で核のゴミの海洋への廃棄は禁止されることになった。その他ロケットに積んで宇宙空間へ廃棄するとかいう構想もあるが現実的とは言い難いし、陸上に数万年も核のゴミを管理する施設を作るというのは、未来の世代に延々とはるか過去の世代の負担を押し付けることになる。結局、核のゴミは地下数百メートル以下の深地層埋設処分するということで各国とも方向性は揃っているが、日本ではどこに処分場を作るか、まだその候補地すら現れないという状態であるし、どのように埋設するかその研究もまだ始まったばかりである。

 旭川から日本最北端の駅・稚内まで宗谷本線の特急列車で3時間30分程かかるが、あと50分程で稚内に着くという所に幌延(ほろのべ)の町はある。町域の西側は日本海に面しているが、町の中心部は海からは10km以上も離れている。
 酪農以外これといった産業もない幌延町は過疎脱却の切り札として、1980年代から原子力発電所、或いは放射性廃棄物関連の施設誘致に向けて動き出す。しかし周辺自治体の反対の声が強く、また1983年に北海道知事に就任した革新系の横路氏が慎重な立場を示したという事情もあって実現化には至らなかった。
 2000年11月、北海道と幌延町、当時の核燃料サイクル開発機構の3者間で協定が結ばれ、幌延町に放射性廃棄物の地層処分のための研究施設を設ける事、研究に際して実際の放射性廃棄物は用いない事、施設は研究終了後に閉鎖し放射性廃棄物の最終処分場には転用しないことなどが定められた。
 そうして設立された「幌延深地層研究センター」では現在、東立坑、西立坑、換気立坑の3本が地底に向けて掘削されており、これらは地下500mの深さまで掘られる予定。岩石や地下水などの地質調査がされるとともに、高レベル放射性廃棄物を深地層に安全に埋設することができるかどうかの研究がなされている。

右は原子力発電環境整備機構(NUMO)の資料より。将来の放射性廃棄物「深地層処分」のイメージ図



<交通>
●旭川駅から幌延駅までは、宗谷本線特急列車で2時間40分から3時間程。普通列車で4時間から4時間30分ほど。
 研究センターは駅から4km程北にあり、駅前から沿岸バスの「豊富留萌線」の「豊富駅」行きにのって10分ほどの「深地層研究センター」バス停で下車すぐ。私は、片道はタクシーを利用したが料金は1,300円ほどだった。列車、バスともに本数が少なく旅程を組むのに苦労した。なおセンターの人の話によると、稚内経由で来る人の方が多いようだ。稚内駅から幌延駅までは特急でも普通でも1時間くらい。
 なお、沿岸バス「豊富留萌線」は国鉄羽幌線廃止に伴う代替バス。乗り通すと3時間50分もかかる。路線バスとしては長ロングランであり、国道232号線(通称:オロロンライン)をひたすら走る。日本海や天売・焼尻島を臨む旅情豊かな区間。

沿岸バスのページへリンク

<幌延深地層研究センター「ゆめ地創館」訪問記>
旅行日 2012.07.10

↑名寄駅を午前7時50分に出発するこの列車で今日はスタート。旭川から稚内まで260kmほどを5時間50分かけて1両きりで走る普通列車です。
↑列車に乗って2時間40分ほど。幌延駅が近づくと、列車の正面に利尻富士の頭の部分がチラリと見えてきた。
↑さて着いた幌延駅。駅周辺に広がる幌延の市街はさして大きくないのですが、この地方の拠点という事で駅は結構立派です。ここから深地層研究センターへは4kmほど。バスが無い時間帯だったのでタクシーで向かいました。
↑これが幌延深地層研究センターの展示施設である「ゆめ地創館」。この塔の高さは50m。研究センターでは地下500mまで掘削する予定でその10分の1の高さにしたとか。また展望台は地上45mにあり、幌延町に北緯45度の緯線が通っていることを象徴したものだそうだ。
↑エスカレーターを昇って、正面入口より入ると、受付があって広いロビーが。観光コースにも入れられている訳でなく、迷惑施設を造る見返りに地元対策として作った巨大なハコモノという臭いがプンプンします。
↑VT−500という名のエレベータ。実際には高度差数メートルの1フロア分を下るだけなのだが、わざと2〜3分程時間をかけ、エレベーター内にそれっぽい映像を映したりして、地下500mまでゆくとの設定になっている。ディズニーランドのアトラクションにこんなのがありましたね。
↑地下500m(という事になっているが実際は地上)の展示物。アーチ形になっているのはやはりトンネルをイメージしたのでしょうか。こういう展示施設にいっていつも思う事ですが、原子力発電というもののそもそもが理解できていないと、なかなか分からないと思うのです。
↑キャニスターと呼ばれるステンレス製の容器。このなかに高レベル放射性廃棄物を混ぜたガラス溶液を流し込んで冷却・固化します。『ガラス固化体』と呼ばれ、これが地下数百メートルの地底にズラリと埋設される構想になっています。
↑右上で紹介したガラス固化体を包み込む、筒状の鉄(炭素鋼)で『オーバーパック』と呼ばれています。いかにも頑丈な鉄のようですが、地下数百メートルで地下水に触れる状態で埋設され、何百年も何千年もするとやはり腐食するそうです。
↑ガラス固化体・オーバーパックをさらに包み込むのが『緩衝材』でベントナイトと呼ばれる粘土が使われます。写真はその模型で、バームクーヘン状の輪が10段重なって、高レベル放射性廃棄物を包み込むとのこと。これはあくまでもプランのひとつで、さらに実験が積み重ねられるそうです。
↑高レベル放射性廃棄物には人が近づけませんから、埋設のための作業は機械操作の元、無人の環境下でなされなければなりません。写真はバームクーヘンならぬ『緩衝材』を釣り上げるための機械で、吸盤が下に並んでいます。
↑「深地層研究センター」の完工時の模型。地下には西立坑、東立坑、換気立坑の3本が垂直方向に掘られ、地下500mの深さまで掘削される計画です。
↑高さ50メートルの展望塔から。黄緑の帯、オレンジの帯、ピンクの帯の建物がそれぞれ、西立坑、東立坑、換気立坑で、ここから地下に向けて掘削されています。
↑というわけで、ブルーの『つなぎ』を着て、ヘルメットをかぶり完全武装の私。これから東立坑を下って見学です。
↑ということです。繰り返しますが、地下500メートルまで掘削される計画。
↑このゴンドラに乗り、地下へ。私は深さ140メートルの地点までゆきました。
↑地下140メートル地点でゴンドラを降り、横坑へ。所々で研究のための機材が見られます。
↑このような見学者向けのパネルもあちこちに。ようするにあらゆるものを腐食・浸食してしまう『水』との絶えざる闘いですね。原子力発電所に関してはいろいろ意見がありましょうが、既に日本という国が核のゴミを抱えているのは事実で、その廃棄のための研究がこの北海道の最果ての地でなされていることは知っておくべきでしょう。



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