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<泊原子力発電所>
(とまりげんしりょくはつでんしょ)

<基本データ>
所在地
北海道古宇郡泊村大字堀株(ほりかっぷ)村
運転開始日
1989年6月
事業主体
北海道電力

<原子炉設備の概要>
 
原子炉型式
営業運転開始
定格出力
備考
1号機
加圧水型軽水炉(PWR)
1989.06.22
57.9万kw
 
2号機
加圧水型軽水炉(PWR)
1991.04.12
57.9万kw
 
3号機
加圧水型軽水炉(PWR)
2009.12.22
91.2万kw
 



<泊村と泊原発の概要>
 2012年5月5日、北海道・泊原子力発電所の3号機が運転停止し、1970年以来42年ぶりに日本国内での原発での発電がゼロになったことは大きく報道された。一般にも関心の高いニュースであったが、「北海道にも原発ってあったの?」というくらいの認識の人も多かったろうし、ましてや「泊原発」がどこにあるかとなると知る人の方が珍しかったろう。「泊」という地名は、北海道から沖縄まで日本に広く分布するが、「行き止まりの“トマリ”だ」という説もあれば「港を意味するアイヌ語だ」という説もある。「泊原発」の「泊」は小樽の少し西方に「余市」という小さな町があり(宇宙飛行士の毛利衛さんの出身地)、ここから日本海側に「積丹(しゃこたん)半島」が突き出している。積丹半島の西側の付け根付近に「岩内」というこの地域の拠点となる町があり、その北側8kmほどの所に「泊原発」はある。
 泊村は現在、人口1900人程の小さな村。村内で「泊原発」の北3km程の所に「茅沼」という地区があるが、ここは実は北海道で初めて炭鉱が開発された地である。1867(慶応3)年にはアメリカの技師が招かれ間もなく本格的な採炭が始まった。北海道最古の炭鉱であったが1964(昭和39)年には閉山。「石炭の村」から「原子力の村」へ。時代は変わったが、奇しくもエネルギーの供給地であることは変わらない。
右写真は原子力発電所PR館「とまりん館」の展示パネルより



<地図で見る泊原発付近の変遷>
1977年2月発行の地形図より

まだ原発は影も形もない。図の中心付近の堀株(ほりかっぷ)の集落から国道は海岸沿いに延びている。図の北西(左上)端にある渋井集落の1km程北にあるのが、北海道最古の炭鉱のあった茅沼地区。図の南東(右下)側に発足(はったり)という地区があるが、茅沼の選炭場から発足までは索道(リフトみたいなもの)で、さらに発足から岩内港までは鉄道で結ばれ石炭を港へと運んでいた。
2008年10月発行の地形図より

国道229号は堀株の集落の手前から茶津の集落へと至る全長1400m程のほりかっぷトンネルが新設された。廃止された旧国道付近の山側を開削し海岸を埋め立てて泊原子力発電所が建設される。原発には燃料や廃棄物の運搬に利用される港湾施設も整備された。図の東(右)側の新しく設けられた建物群は、原発関連産業の従事者のための施設だろうか。

使用地形図・1/25000茅沼(1977年2月28日・2008年10月1日)国土地理院発行

<PR施設>
 ほりかっぷトンネルの入り口手前に、「原子力PRセンター・とまりん館」がある。ここの特筆すべき点はなんといっても、事前に連絡を入れておけば、原子力発電所構内の見学ができることである。一人だけでの見学でも構わない。東へ1km程の所にある原発構内まで、係員の人がクルマで連れて行ってくれ、原発の建屋群の裏手の山にある展望デッキから見学ができ、構内の施設について丁寧に説明してもらえる。

<交通>
●札幌駅前バスターミナルから岩内バスターミナルまで、北海道中央バス(所要2時間24分)
●岩内バスターミナルから北海道中央バス・神恵内線(盃温泉街、大森、川白、神威岬行き)で「原子力PRセンター」下車、徒歩2分(所要・約15分)

※札幌から岩内までのバスは小樽駅前も経由する。JRを使うなら、岩内バスターミナルまでは倶知安駅からのニセコバスの便を利用できる(所要45分)。倶知安の一つ先の小沢駅から岩内までは、かつて国鉄岩内線が走っていたが1985年7月に廃止になっている。ちなみに現在バスターミナルになっている場所はかつて岩内駅が所在した所。
※「原発巡り」のついでに「ローカルバス巡り」や「鉄道廃線跡巡り」もしたかった私は、太平洋(内浦湾)側の町、長万部で1泊したのちJR函館本線で黒松内駅へ、ここからニセコバスで日本海側の町寿都(すっつ)へ。黒松内から寿都間にはかつて寿都鉄道という私鉄が走っていた(1968年に事実上廃線)。寿都鉄道は最末期には1日に片道1本(1往復では無い)しか走らなかったいう伝説(?)の鉄道。現在、町役場庁舎のある所は寿都駅がかつて所在した地。寿都からはやはりニセコバスで国道229号線を日本海沿いにひたすら走る。左手にどこまでも荒波を見る旅情豊かな区間。岩内までの所要時間は1時間8分。

北海道中央バスのページへリンク
ニセコバスのページへリンク


<泊原発PRセンター「とまりん館」訪問記>
旅行日 2011.10.26

↑私は寿都という町から岩内まで日本海沿いに走るバスを利用したのだが、このコースを利用すると海の向こうに原子力発電所をちらりと見ることが出来る。雨にけぶる向こうに見える原発が3機。
↑この付近を旅行する際の拠点となる岩内バスターミナル。かつて国鉄岩内線の岩内駅が所在した地にある。私は1985年の鉄道廃止直前にこの地を訪ねている。暇そうにしていた駅員さんから「隣の“西前田“という駅で駅名板が盗まれた」と聞かされたのが記憶に残る。
↑岩内バスターミナルからバスに乗り15分程。原子力PRセンターのバス停で下車する。信号を直進すると、ほりかっぷトンネルを抜け神威岬方面へ、左に行くと泊原発の構内へと続く。
↑ということでやってきた「原子力PRセンター・とまりん館」。原発関連の展示コーナーの他に、地域展示コーナー(この付近には縄文時代の遺跡がある)やプールもある複合施設である。
↑とまりん館のマスコット・キャラクター「とまりん」。あまりのヒネリの無さに嬉しくなってしまう。日本全国、原発の立地する地には必ず「PR館」はあり、またこのようなキャラクターも必ず存在する。
↑この先が原発関連の展示コーナーになる。原発PR館を巡り歩いている身として興味深い展示物もあるが、いきなり来た何の知識もない人が体系的に学べる様にはなっていないように思える。これは他の原発PR館にも言えること。
↑水に浸されている加圧水型原子炉用の燃料集合体の模型。見た目にキレイなので目をひいてしまうが、もちろん本物はこのようにライトアップはされていない。
↑タービンの回転翼の模型。実物大だそうだ。タービンなら火力発電にもあるし、原子力発電特有のものではないのだが。どうも、装飾の効果をねらったような模型(オブジェ?)ばかりが目につく。
↑展示コーナーを一通り見終えると、いよいよ原発構内の見学へ。係員の方にクルマで案内してもらえる。山側に展望デッキがあり1〜3号機を間近で望めるウォッチング・スポットなのだが、保安の都合上、写真撮影は禁止されているのでお見せすることはできません。
↑2時間程の見学時間があったのだが、係員の方の説明が丁寧すぎて残り時間はわずか。急いで記念スタンプを押す。ちなみに今日「10月26日」は「原子力の日」。1963年のこの日に東海村日本原子力研究所の動力試験炉が日本初の発電に成功したことを記念して定められたとか。
↑事前に予約して見学した人だけにもらえる「とまりん」の絵柄が入った記念品のタオル
↑という事で本日の「とまりん館」見学はここまで。もう少しゆっくり見学していろいろツッコミを入れたかったとの思いを残して。バスで再び岩内の町へ戻る。まだまだ私の旅は続きます。



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