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   みことば黙想


〈19〉ヤラベアム事件

聖書

 1
「見よ、神の人が主の命によってユダからベテルに来た。その時、ヤラベアムは祭壇の上に立って香をたいていた。2神の人は、祭壇に向かい主の命によって呼ばわって言った、『祭壇よ、祭壇よ、主はこう仰せられる、「見よ、ダビデの家に一人の子が生まれる。その名をヨシヤという。彼はお前の上で香をたく高き所の祭司らを、お前の上に捧げる。また人の骨がお前の上で焼かれる」』。3その日、彼はまた一つのしるしを示して言った、『主の言われたしるしはこれである、「見よ、祭壇は裂け、その上にある灰はこぼれ出るであろう」』。

 4ヤラベアム王は、神の人がベテルにある祭壇に向かって呼ばわる言葉を、聞いた時、祭壇から手を伸ばして、『彼を捕らえよ』と言ったが、彼に向かって伸ばした手が枯れて、引っ込めることが出来なかった。5そして、神の人が主の言葉をもって示したしるしのように祭壇は裂け、灰は祭壇からこぼれ出た。6王は神の人に言った、『あなたの神、主に願い、私のために祈って私の手をもとに返らせてください』。神の人が主に願ったので、王の手は元に返って、前のようになった。

 7そこで王は神の人に言った、『私と一緒に家に来て、身を休めなさい。あなたに謝礼を差し上げましょう』。8神の人は王に言った、『たとい、あなたの家の半ばを下さっても、私はあなたと一緒に参りません。またこの所では、パンも食べず水も飲みません。9主の言葉によって私は、「パンを食べてはならない。水を飲んではならない。また、来た道から帰ってはならない」と命じられているからです』。10こうして彼はほかの道を行き、ベテルに来た道からは帰らなかった」。
 T列王紀上13:1〜10 
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T.問題提起
 ★善良なユダの神の人をだましたベテルの老預言者が裁かれず、だまされた神の人がライオンに殺されるという、道理に合わないこの昔の事件は今の私たちに何を教えているのか。

U.列王紀上13章の事件の概要
 ★南王朝のユダから一人の神の人(預言者)が北王朝のイスラエルのベテルに来て、金の子牛が祭られている祭壇に向かって、「祭壇よ、お前の上でユダのヨシヤ王が金の子牛を祭る祭司たちをいけにえとする」と神からの預言のことばを叫んでもと来た道を引き返して行った。ベテルの町の老預言者はこの話を息子達から聞いて、ロバに乗ってその神の人に追いつき、老預言者の家に「引き返して、食事をするように」誘った。この神の人は「この地で食事を取ることは神さまに禁じられている」答えた。すると、この老預言者は、「神があなたに食事を与えるように私に命じられた」と彼をだまして食事をさせた。食事が終わるか終わらないうちに、この老預言者に神の言葉がのぞみ、「あなたは神の食事禁止命令を破ったので、自分の家の墓に葬られることがない」と預言した。この神の人がロバに乗って帰る途中でライオンに襲われ命を落とした。この神の人の受難を伝えに来た町の人々に、この老預言者は「神の戒めにそむいた為に、彼はこのような目にあったのだ」と解説した。この神の人の裁きの預言の後も、北王朝イスラエルのヤラベアム王と国民は偶像礼拝を悔い改めず、金の子牛礼拝をやめることはなかった。

V.この事件の背景―ソロモン王以後のイスラエル王国の分裂
 ★ソロモン王の重税にあえいでいた国民は王の家来ヤラベアムを立て、ソロモン王の後を継いだ王の子レハベアム王にくびきを軽くしてくれるように交渉した。
 ★若いレハベアム王は若い家臣の助言に従って、国民に「前王より重い税を課する」と答えた。この時から、ユダとレビ族を除くイスラエル10部族はレハベアム王に反旗を翻し、ヤラベアムを王に立てて、北イスラエル王朝を建国した。
 ★その際、ヤラベアム王は自国民が礼拝のためにエルサレムに通うなら国民はユダ王朝に復帰し、自分を殺すだろうと考え、金の子牛像をこしらえて、「これがイスラエルをエジプトから導き出した神だ」として民にこれを拝ませた
(T列王12:28)

W.ベテルの老預言者
 ★この老預言者の正体を知る鍵は18節の「欺いた(新改訳/だました)」という言葉にあります。彼はユダから来た神の人をだまして、主から禁じられていたベテルでの食事をさせて、この神の人をつまずかせたのです。
 ★彼は神の人が語った預言が真実に神からの言葉であることを知っていました(32節)。神の言葉と知っていながら、それに故意に逆らう罪は預言者を名乗る者(18節)としては特に重大です。
 ★彼はヤラベアム王の偶像礼拝の罪をよく知っていましたが、ユダから来た神の人のような純粋な心を持っていなかったので、王の前に出てこの神の人のように堂々と罪を指摘することが出来ませんでした。
 ★それどころか、息子たちを王の家臣または偶像の祭司として仕えさせていたために、ヤラベアム王朝の安泰を願っていました。現国家体制の維持が自分の家の安全を保障してくれるものと考えていました。
 ★人をだました霊的品性のよろしくない、この老預言者に主の言葉が臨んで、神の人の過ちを糾弾する神の言葉を彼が預言したと言う20,21節のみ言葉に戸惑う聖書読者は少なくないでしょう。
 ★聖書の中には、預言と言う聖霊の賜物を行使している人々がみな霊的品性の高潔な人々ばかりかというと、そうではなく霊的品性のよろしくない人物たちが「預言した」と記されているところがいくつもあるのです。
 ★狂気の預言者と呼ばれるバラムがその代表的人物です。ダビデの命をゆえなく、執拗に狙ったイスラエルの初代王サウルも若いころ預言して、「サウルもまた預言者のうちにいるのか」ということわざが出来たと聖書は言っています
(Tサムエル10:12)
 ★また終わりの日に主から御国への入国を拒否される人々の中に、「私は主の御名によって預言したではありませんか」と自己弁護をする人々の出ることが語られています
(マタイ7:22)
 ★要するに、聖霊の賜物を持ち、それを発揮する者が必ずしも、みな霊的人格においても優れた
(ガラテヤ5:22,23の御霊の実を結んだ)人物だというわけではないということです。

X.ヤラベアム王
 ★ヤラベアム王は若い頃、ソロモン王の家来としてその働きが認められ、労働者の監督として重用されましたが、預言者アヒヤの預言によって、イスラエル10部族の王になる人物とされたことにより、ソロモン王に命をねらわれ、エジプトに一時亡命していました。
 ★ソロモン王の死後、その息子レハベアムが王位を継承するとイスラエルの国民はエジプトからヤラベアムを呼び寄せ、ソロモンの後継王に重税と重労働からの軽減を迫って、退けられ、イスラエルの10部族がヤラベアムを王に立てて北王朝を建国したわけです。
 ★彼は自分の王位の安泰を願い、国民に偶像礼拝を行わせ、彼以後のイスラエルの王たちの悪い手本となり、彼らは「主の目の前に悪を行い、ヤラベアムの道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに犯させた罪を行った」
(T列王15:34)と繰り返し、ヤラベアムの罪に言及されることとなりました。
 ★ユダからの神の人の預言の時、「彼を捕らえよ」と差し伸ばした腕が枯れ枝のように固まってしまった時、自分の罪を悔い改めることなく、腕の癒されることだけを求めた点から考えて、神の人がライオンに殺される事件がなくても、彼が悔い改めることはなかったでしょう。

Y.ユダから来た神の人
 ★この人はベテルの老預言者には出来なかった王への罪の糾弾を大胆にやってのけました。しかし、残念ながら、その実行において首尾一貫性に欠けていました。
 ★彼には「ベテルでパンを食べ、水を飲むことを禁止」されていたことが余程体力的にこたえたのか、帰りの旅の速度が緩慢でした。それで、ロバに乗って後を追って来た老預言者にすぐに追いつかれてしまいました。
 ★この人は老預言者の「預言」を聞いた時、その預言の真偽を吟味する十分な時間がありました。新約聖書Tコリント14:29に教えられているように預言はそれを聞いた者が鵜呑みにするべきものではなく、「預言は吟味すべきもの」なのです。
 ★恐らくこの神の人は祭壇の前での預言の履行によって自分の仕事は終わったと誤解してしまったのかも知れません。その心の隙間に空腹感からの開放を願う肉の欲求も手伝って、食事禁止令からの開放を願う心が老預言者の作り話に無防備に飛びつかせたのでした。
 ★この神の人は蛇にだまされたエバのように、また熟慮した上でエバと行動を共にしたアダムのように
(Tテモテ2:14)、愚かにもだまされてみたいという思いに陥ったのかも知れません。

Z.神の人がライオンに殺され、だました老預言者がライオンに殺されなかったのはなぜ?
 ★神の人がライオンに殺されたのは、偶像礼拝への神の怒りの啓示の重大性を後の聖書を読む人々に訴えるためです。

 「これらのことが彼らに起こったのは、他に対する警告としてであって、それが書かれたのは、世の終わりに臨んでいる私たちに対する訓戒のためである」 Tコリント10:11

 ★偶像礼拝に対する神の怒りは、これを預言する神の人に甘えを許さないことによって、その厳しさが啓示されているのです。
 ★偶像礼拝を糾弾するこの人の死によって当時のイスラエルの人々は、偶像の神が自分たちに味方してくれたのだと誤解して、偶像礼拝を悔い改めるよりもかえってそれにのめり込んで行ったようです。
 ★だまされた神の人が殺され、だました老預言者と町の偶像礼拝者がライオンに襲われなかったことによって、偶像礼拝者はますますその悪に染まって行き、神の裁きの日に仮借なき裁きを受ける事になるのです。
 ★ベテルの老預言者は地上の裁きは受けなかったとしても、来たるべき世にはそれ相当のふさわしい裁きを受けるのです
(黙示21:8)
 ★ユダから来た神の人はライオンに殺されても、死を経ず天に移されたモーセ同様、今は神の元に住んでいるのです。



冒頭の聖書テキストの続き

 11
「さて、ベテルに一人の年老いた預言者がすんでいたが、その息子たちが来て、その日神の人がベテルでした事どもを話した。また神の人が王に言った言葉をもその父に話した。12父が彼らに『その人はどの道を行ったか』と聞いたので、息子たちはユダから来た神の人の行った道を父に示した。13父は息子たちに言った、『私のためにロバにくらを置きなさい』。彼らがロバにくらを置いたので、彼はそれに乗り、14神の人の後を追って行き、樫の木の下に座っているのを見て、その人に言った、『あなたはユダから来られた神の人ですか』。その人は言った、『そうです』。

 15そこで彼はその人に言った、『私と一緒に家に来てパンを食べてください』。16その人は言った、『私はあなたと一緒に引き返し、あなたと一緒に行くことはできません。また私はこの所であなたと一緒にパンも食べず水も飲みません。17主の言葉によって私は、「その所でパンを食べてはならない、水を飲んではならない。また来た道から帰ってはならない」と言われているからです』。18彼はその人に言った、『私もあなたと同じ預言者ですが、天の使いが主の命によって私に告げて、「その人を一緒に家に連れ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ」と言いました』。これは彼がその人をあざむいた(新改訳/だました)のである。19そこでその人は彼と一緒に引き返し、その家でパンを食べ、水を飲んだ。

 20彼らが食卓についていた時、主の言葉が、その人を連れて帰った預言者に臨んだので、21彼はユダから来た神の人に向かって呼ばわって言った、『主はこうおおせられます、「あなたが主の言葉にそむき、あなたの神、主がお命じになった命令を守らず、22引き返して、主があなたにパンを食べてはならない、水を飲んではならない、と言われた場所でパンを食べ、水を飲んだゆえ、あなたの死体はあなたの先祖の墓に行かないであろう」』。23そしてその人がパンを食べ、水を飲んだ後、彼はその人のため、すなわち連れ帰った預言者のためにロバにくらを置いた。
 24こうしてその人は立ち去ったが、道でししが彼に出会って彼を殺した。そしてその死体は道に捨てられ、ロバはそのかたわらに立ち、ししもまた死体のかたわらに立っていた。25人々はそこを通って、道に捨てられている死体と、死体のかたわらに立っているししを見て、かの老預言者の住んでいる町に来てそれを話した。

 26その人を道から連れ帰った預言者はそれを聞いて言った、『それは主のことばに背いた神の人だ。主が彼に言われた言葉のように、主は彼をししに渡され、ししが彼を裂き殺したのだ』。27そして息子たちに言った、『私のためにロバにくらを置きなさい』。彼らがくらを置いたので、28彼は行って、死体が道に捨てられ、ロバとししが死体のかたわらに立っているのを見た。ししはその死体を食べず、ロバも裂いていなかった。

 29
そこで預言者は神の人の死体を取り上げ、それをロバに載せて町に持ち帰り、悲しんでそれを葬った。30すなわちその死体を自分の墓に納め、みなこれがために『ああ、わが兄弟よ』と言って悲しんだ。31彼はそれを葬って後、息子たちに言った、『私が死んだ時は、神の人を葬った墓に葬り、私の骨を彼の骨のかたわらに納めなさい。32彼が主の命によって、ベテルにある祭壇に向かい、またサマリヤの町々にある高き所のすべての家に向かって呼ばわった言葉は必ず成就するのです』。

 33このことの後も、ヤラベアムはその悪い道を離れて立ち返ることをせず、また一般の民を、高き所の祭司に任命した。すなわち、誰でも好む者は、それを立てて高きところの祭司とした。34このことはヤラベアムの家の罪となって、ついにこれを地のおもてから断ち滅ぼすようになった」。
 
T列王紀13:11〜34


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キリスト紀元2006年 7月 20日公開

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