〈18〉ダビデの人口調査
聖書
1主は再びイスラエルに向かって怒りを発し、ダビデを感動して彼らに逆らわせ、「行ってイスラエルとユダとを数えよ」と言われた。
2そこで、王はヨアブおよびヨアブと共にいる軍の長たちに言った、「イスラエルのすべての部族のうちを、ダンからベエルシバまで行き巡って民を数え、私に民の数を知らせなさい」。
3ヨアブは王に言った、「どうぞ、あなたの神、主が、民を今より百倍に増してくださいますように。そして、王、わが主が目の当たりそれを見られますように。しかし、王、わが主は何ゆえにこの事を喜ばれるのですか」。
4しかし、王の言葉がヨアブと軍の長たちとに勝ったので、ヨアブと軍の長たちとは王の前を退き、イスラエルの民を数えるために出て行った。
Ⅱサムエル２４：１～４
ダビデの人口調査は、なぜ民に疫病をもたらす原因になったのか？
★モーゼ（民数記１：１～４６）もヨシュア（民数記２６：１～５１）も人口調査をしています。しかし、なぜダビデの人口調査はいけなかったのでしょうか。
★出エジプト３０：１２に「あなたがイスラエルの人々の数の総計を取るに当たり、おのおのその数えられる時、その命のあがないを捧げなければならない。これは数えられる時、彼らのうちに災いの起こらないためである。」とあります。
★しかし、ダビデが律法のこの規定を守らなかったという言及がないので、これが原因の一つであったかどうかは全く分かりません。
★はっきりしていることは、この同じ出来事が記されているⅠ歴代誌２１：１に 、
「時にサタンが起こってイスラエルに敵対し、ダビデを動かしてイスラエルを数えさせようとした」
とありますから、この事件はサタンの誘惑に乗ったダビデの虚栄心から出た出来事であったことが分かります。
★上記Ⅱサムエル２４：１を読むと、主がダビデに人口調査をせよと命令されたように読めますが、実際はヨブ記にあるヨブの受難をサタンに許された場合のように、サタンがダビデを人口調査実施に誘導するのを主が許されたのでした。
★すなわち、ダビデはサタンから出た思いを神の命令と思い込んでしまったのでした。
★サタンから出たダビデの思いは、人口調査によって自国の戦力を確認して諸外国に戦力を誇示すると共に、主への信仰によらずに世的安心を得たいという思いであったと考えられます。
★ダビデが自分の過ちに気づいたのが人口調査をイスラエルに命じてから約１０ヶ月後（２４：８）、調査が終わって人口総数が分かってからでした。
★その人口総数（兵力）は１３０万人でした。この数は４００年前のヨシュアの時の兵力約６０万人（民数記２６：５１）に比べて２倍強であり、ダビデにとって予想外に低い数値であったと思われます。この現実を目の当たりにして、自分の愚かさに気づいたのでした。
★また、このダビデの人口調査事件は、イスラエルの民に対する神の怒りに第一義的原因がありました。そして、第一節に、「主は再びイスラエルに向かって怒りを発し」とありますから、これは同Ⅱサムエル２１：１～６にあるダビデの時代の３年間のききんを前提に語っていると考えられます。
★主は「イスラエルに向かって怒りを発し」とありますから、ダビデの虚栄心とは別に、記されていない何らかの民の罪のために、イスラエルの民に災難をこうむらせるために、ダビデの人口調査の実施を黙認されたと思われます。
★先の３年の飢饉は、サウル王がギベオンの人々を抹殺しようとした誤った熱心が、そして今回の３日の疫病による７万人の病死（Ⅱサムエル２４：１１～１５）はダビデの自己満足と虚栄心とが第一原因となって起きた災難でしたが、これらはまた、民に対する主の怒りのためにもたらされた民への裁きでもありました。
★ダビデは「私は罪を犯しました。しかし、これらの羊たちは何をしたのですか」（Ⅱサムエル２４：１７）と国民をかばう、悔い改めと謙虚な姿勢を示していますが、「主がイスラエルに向かって怒りを発せられた」事実は動かないのです。
★国家に災難が来る時、それは往々にして民の指導者・為政者の失政・悪政によってもたらされますが、それは同時に国民の罪に対する神の怒りの表れでもあることを、旧約聖書のこれらの出来事が物語っています。
★今日、私たちの日本国は為政者の悪政によって、社会が富裕層と貧困層に極端な二分化が深刻化しており、交通事故死の数倍にのぼる自殺者がここ７年ほど連続して出ている、犯罪が増加しているなどの社会不安が深まっています。
★しかし、この現実は、このような為政者を選出して来た国民の側にも、大いに考え直し反省すべき原因があることを物語っています。
Ⅱサムエル２４とⅠ歴代２１との人口調査の結果の数値が違うのはなぜか。
★これは、Ⅱサムエルの記録が２４：９にあるように「剣を抜く勇士たち」すなわち、戦いに熟達した兵士の数であるのに対し、Ⅰ歴代誌２１の記録はベテランばかりでなく、新兵も含めたすべての兵士の数を挙げているので、１５７万人でⅡサムエルより２７万人多いというだけのことです。
URL http://31church.net
キリスト紀元２００６年 ６月 ３０日公開
