"Yuzo Nagakawa's Life"
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17 Nov 1999 更新

●「うらやましい死に方」選・五木寛之 new
●「生きがいの創造」飯田史彦 new
●「赤穂義士」海音寺潮五郎 new
●「ブラディ・マリーに雪が降る」喜多嶋 隆
●「月の謎とノアの大洪水」飛島昭雄・三神たける
●「花影の花」平岩弓枝
●「恋して進化論」谷村志穂
●「光は新宿より」尾津豊子
●「上海の西、デリーの東」素樹文生
●「わがまま歩き スペイン」ブルーガイド
●「時雨の記」中里恒子
●「闘牛はなぜ殺されるか」佐伯泰英
●「すべての男は消耗品である」村上龍
●「般若心経入門」松原泰道
●「男というもの」渡邊淳一
●「不夜城」馳 星周
●「風雲児」白石一郎
●「海狼伝」白石一郎
●「心・と・からだ」五木寛之
● 北朝鮮 凍土への旅立ち「帰国船」チョン・ヘキ
● 地獄の政治犯収容所「北朝鮮脱出」姜哲煥・安赫
● 北朝鮮の内幕「闇からの谺(こだま)崔銀姫・申相玉
●「ドイツニュースダイジェスト」NEWS DIGEST INTERNATIONAL
●「アジア雑貨仕入れ旅」仲屋むげん堂企画室
● 金賢姫全告白「いま、女として」金賢姫
●「心筋梗塞の前後」水上 勉

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 「うらやましい死に方」文芸春秋"読者投稿30編" 選・五木寛之

 集まってきたすべての記録には、火照るような熱さがあった。重さがあった。恥ずかしいことだが、私は夜を徹してそれらの文章を読み、何度となく泣いた。涕泣という言葉があるが、文字どおり鼻水も涙もぐじゃぐじゃになって流れる有様であった。自分の中に、そんな単純な感情が、これほど残っていたのかと不思議な気がした。そして素朴なことを思った。この国の未来がどうなるかわからないが、すくなくともこの島国に住んでいる人びとは、なんとすばらしい、愛すべき人びとであろうか、と。(選者まえがきより)

<おススメの一言> 色々な人がいるんだな、そしてヒトはヒトのことを本当に大切に思っているんだなと感じた。四十四才でなくなった独身女性のおはなし「お別れ会のシナリオを残して・・」あたりで自然と涙腺がゆるんだ。最後に起きあがって正座し「長い間お世話になりありがとうございました。お隣にも礼を云っといて頂戴」と言って合掌した痴呆症であった老女の律儀さに心を打たれる。(Nov 1999)

(文芸春秋 11月号特集記事 1999年11月1日発行 \700)


 「生きがいの創造」"生まれ変わりの科学"が人生を変える 飯田史彦

 私がみなさんに問いかけたいのは、本書でご紹介する研究成果をもとに、「死後の生命や生まれ変わりを認めるとすれば、私たちの生き方がどのように変わっていくのだろうか」ということです。決して「認めなさい」と無理強いするつもりはありません。本書の目的は、否定したがる方々を説得することではなく、あくまでも、これらを認めることに迷いを感じてらっしゃる方々を勇気づけたり、すでにこれらを「信じて」いらっしゃる方々に科学的情報を提供することによって、みなさんの人生を、大いに応援することなのです。(本書「はじめに」より)

<おススメの一言> 友人が貸してくれた「今はまってる本」に結構はっまった。欧米では、多くの科学者たちによって研究され、さまざまな驚くべき報告がなされている、"生まれ変わりの科学"本書は、その研究成果の数々をふまえながら、「「死後の生命」や「生まれ変わり」を認めるとすれば、私たちの生き方がどのように変わっていくのだろうか」という命題に迫っていく画期的な人生論であり、生きがい論である。自分がこの世に存在する意味を深く体感させる、注目の論考。と背表紙にあったが、著者の意図には同感した。ともかく家族をはじめ近い友人たちに読ませてみたい本ではある。(Nov 1999)

(PHP文庫 い-38-1 1999年9月16日 第1版第1刷 \686E)


 「赤穂義士」 海音寺潮五郎

 僕は思うのだ。赤穂義士のことは、日本人が歴史上もっている大ロマンだと。源平両氏の争覇興亡盛衰のあと、楠公父子を中心とする南北朝の物語、川中島の闘いを中心とする甲越両雄の争覇戦、織田・豊臣・徳川の覇者交代の歴史、明治維新史等と同じように、民族の大ロマンであると。だからこそ、これらの事実の中から数えきれないほど多数の小説や演劇が出来た。文化の大宝庫である。これらの小説や演劇をはずしては、日本の文化はどんなに貧しくなるかわからない。日本人の精神文化面に於ける大遺産である。・・・日本人は国民的教養の一つとして、これらを知っている必要があるとさえ思っている。(著者「まえがき」より)

<おススメの一言> 何度目かな、NHK「元禄繚乱」を見ているうちにまた読んでみた。よく知られた江戸城・松の廊下の刃傷事件から吉良邸への討ち入りにいたるまでには数々の謎があるが、無類の歴史通、海音寺潮五郎がさまざまな傍証を挙げ、推理し、うんちくを傾ける義士論。抜群におもしろい。「花影の花」への流し読みも一興か。(Oct 1999)

(文春文庫 か-2-30 1994年5月10日 第1刷 \460E)


 「ブラディ・マリーに雪が降る」喜多嶋 隆

 <スポーツで最も大切なのは持続させることだ> という言葉がある。この言葉は、<スポーツ> を<夢> におきかえて見ても、真実ではないかと僕は思う。その人なりの<夢> を持つことはもちろんいいことだ。ただし、<夢を持つこと> よりさらに大切なのは、<その夢をもちつづけること> ではないだろうか。さらに言えば、何年かかろうと、何十年かかろうと、夢を実現するために、前進しつづけることが、何よりも大切なことのように、僕には思える。そんな気持ちを胸に抱きながら、今回の小説を書いた。(著者あとがきより)

<おススメの一言> 「この本読んでみて下さい。」と友人になったばかりの青年が飲み屋で渡してくれた。椰子の葉陰を、涼風がフッと吹き抜けていったような、爽やかでシンプルな短編でした。努力、夢、愛、故郷、別れ、出会い、ヒトびと・・・。この若者の「夢」が伝わりました。(Aug 1999)

(角川文庫 CO193 平成11年8月25日 初版発行 \724)


 「月の謎とノアの大洪水」飛島昭雄・三神たける

 約4500年前、地球上の陸地という陸地を水没させた「ノアの大洪水」・・・。インド、中国を始め世界各地に残る大洪水伝説は、この未曾有の大洪水がまぎれもない真実であることを物語っていた。では、地球全土を覆いつくした膨大な量の水は、いったいどこからきたのか? かってその謎に挑んだ「天体M」仮説が提唱された。しかし、肝心の天体Mが発見されず、やがて忘却の淵に消え去る。が、天体Mは実在していた。最大の謎を解く鍵それは天空に輝く月が握っていたのである!現代アカデミズムのパラダイムを根底からくつがえす衝撃の問題作。

<おススメの一言> 「おもしろいよ!」と友だちが貸してくれた本でしたが、これがぼくには大当り。ノアの箱船と月についての新知識満載でした。じつは、20代初期、夢一杯の頃。プロ集団として仲間とつくった写真グループ名を僕たちは「NOAH」と名付けたのでした。(Aug 1999)

(学研 mu books 64 1994年10月25日第一刷 \870)


 「花影の花」平岩弓枝

 元禄十六年二月、大石内蔵助、主税親子は忠臣義士として華やかに散る。その影で、ひっそりと咲き続けた小さく可憐な花・・・。大石内蔵助の妻となり、別れてその後は遺児大三郎とともに、終生”忠臣の妻”として生きた女、りく。その悲しみ多い六十八年間の生涯が、ここに鮮やかに描き出される。「忠臣蔵」後の秘められたドラマに光をあてた感動の力作長編。吉川英治賞受賞作。

<おススメの一言> いま、NHK大河ドラマ「元禄繚乱」でりくを演じる大竹しのぶさんのも、役づくりに際してこの本を読み込んだなと勝手に想像してしまった。こうした書物から役像を取り込んで、創り込み演じきるってのも面白そうだなー、女優魂ってやつかな。あの線の細そうな哀しみと、秘めたしたたかさ。彼女も日本の女を演じられるいい女優さんになったなー。それにしてもいろんな本の読み方があるなー。(Aug 1999)

(新潮文庫 ひ59 平成5年11月25日 二刷 \440)


 「恋して進化論」谷村志穂

 なぜ男と女は恋愛し、セックスし、結婚し、子供を育て、そして浮気をするのだろう?大学で動物生態学を専攻した著者が、このナゾを解明すべく、新進の学者たちに取材。結局、男と女はオスとメス、ということは精子と卵子、せんじつめればDNA・・・・・・と。不可解きわまる男と女の関係を、進化論からひもとき、生態学から考察し、最新の遺伝子科学から解明する異色のダーウィン進化論=愛の生態学。

<おススメの一言> ダーウィンも知らずに恋なんてできない!ままならぬ男と女の関係を最新の進化論から解明する。この中にでてくる「愛は4年説」なんか妙に実感があったりして。(Feb 1999)

(集英社文庫 533 1999年1月25日第一刷 \560)


 「光は新宿より」尾津豊子

 著者は、娘として当然の、父親に対する、ベタ惚れの気持ちをそのまま記し、また、節度を保って、喜之助の生き方をうつす。浮かび上がってくる喜之助は、古きとはいわない、良き日本人の典型、現在、そのすべて失われてしまったといっていい。日本人の美徳を備え、わが文化の重要な部分をしめる仁侠の道、具現者、なつかしい人柄である。付記すれば、戦争直後の新宿について書かれた書物は汗牛充棟の趣きだが、著者の視点からのものはなく、その細部にわたって、驚嘆すべき記憶力により描かれた本書は、尾津喜之助にとどまらず、二十年代の新宿の記念碑といっていい。(野坂昭如「序文」より)

<おススメの一言> 「渋谷にハチ公の銅像があるなら新宿には尾津喜之助だよ!」かの野坂昭如氏がのたまわったとか。友人の清美さんの母上、赤坂「鐸」の女将がお書きになりました。今では、こういう方を純日本婦人というのでしょうか。ともかく正統の香がただよう筋の通った姿の方です(Jan 1999)

(K&Kプレス c0093 1998年5月15日第二刷 \1800E)


 「上海の西、デリーの東」素樹文生  推薦します!イチ押しです!

 インドに行きたかった。そしてぼくは職場を捨てて旅に出た。上海までは船。それから陸路、西をめざす。中国で"没有メイヨー"の連続にムッとし、カンボジア人の"ノープロブレム"は、つまり問題大いにありということが身にしみてわかる・・・。ベトナム、タイを経て聖河ガンジスへ。三十歳を目前に出発した著者が、アジア放浪の苦闘と、その魅力をしなやかに描く、バックパッカー新世代必携の書。

<おススメの一言> 昭和34年、時代の扉を開いた紀行記、小田実「なんでも見てやろう」を読んだとき以来の衝撃でした。ともかく、アジア好きのぼくは、ウン、ウンとうなずきながら、時々、含み笑いをしながら読みました。紀行物の新バイブルの出現です。(Jan 1999)

(新潮文庫 も-19-1 1999年1月1日発行 \667E)


 「わがまま歩き スペイン」ブルーガイド

 全てがワンランク上をゆく 見やすい 得する 迷わない 役に立つ 自由旅行者向けハンドブック。海外自由旅行の道具箱。

<おススメの一言> インターネットを通じて知り合ったデザイナーの杉田尚美さんが、この本の10,132ページのイラストを担当されました。実用性に配慮した新しいガイドブックです。(Dec 1998)

(実業之日本社 c2326 1998年12月30日初版 \1680E)


 「時雨の記」中里恒子

 ・・・「年月ではない、愛のなんのと確かめたことでもない、めぐり逢って、ひととき一緒にいたのは、なにかの宿縁であった。それだけのことであったのだ。」と、愛人の死を陰で見送った「歌枕」の女主人公は袖を濡らしますが、これこそ作者がこの世に残していった最後の肉声のように聞こえないでしょうか。・・・(後記「中里恒子・人と作品」より抜粋)(Nov.1998)

(新文春文庫 な54 1998年11月11日第7刷 \450)


 「闘牛はなぜ殺されるか」佐伯泰英  推薦します!スペイン好きに!

 闘い終わった牛は、どこへ行くのか---- 限りなく死に近い遊技・闘牛。その歴史、技、興業など全てを豊富な図版で解説し、スペイン文化の神髄に迫る。----スペイン旅行必携の書。

<おススメの一言> あれは'70年代でした。友人"佐伯泰英第一期スペイン滞在総集編"であります。やったね佐伯さん!こんな気分になりました。この本持って、またスペイン行って、闘牛と、美術館と、いろんな町や、村や、牧場や、いろんなヒトたち見に行コ。また、そんな気させられました。スペイン好きの人でこの本読んでない人モグリだよ!(Oct 1998)

(新潮選書 c0375 1998年10月1日初版 \1300E)


 「すべての男は消耗品である」村上龍

 快楽主義者リュウのパワーエッセイ第一弾!●セックスに必要なものは体力だ愛じゃない●優秀なキャリアウーマンは知性を必要としない●農耕民族の男にホレル女はみんなクズだ●観光客のように女に接してはいけない●芸のあるかわいい女が男を救う。(目次より)

<おススメの一言> これも古本。オレとライフスタイル違うけど、思ってること結構似てるよ、そうだよなーって感じ。(Oct 1998)

(KKベストセラーズ 1987年8月1日初版 \1200E)


 「般若心経入門」松原泰道

 「般若心経」は、人間の五感にうつる形あるものは、すべて空である(色即是空)。しかし、その空を徹底的に実感すれば、現実に生きることの価値と意義が初めて実感できる(空即是色)と説く。また、死は明るい安らぎであり、生きることに思いまどう煩悩があるからこそ、人間の成長があると勇気づけてくれる。

<おススメの一言> 経文の魅力は、それを百度千度読んで含味することで初めて、計り知れぬものとして伝わってきます。般若心経はその一端をつかむだけで、心に涼しい思いをさせてくれます。熱くてたまらん日に書棚からひきだして読むうちにはまってしまった。(Oct 1998)

(小学館 NON・BOOK-30 昭和47年5月10日初版 \650)


 「男というもの」渡邊淳一

 男の本当の肉体的・精神的内面というものが一般の女性に意外に知られていないからです。たとえその男の恋人や妻であったとしても、彼や夫の生理というか、肉体の内側まで入って尋ねることはあまりないし、尋ねたいと思っても尋ねにくいことだからです。(著者まえがきより)

<おススメの一言> 幼年期 戸惑いと決断 メンタルな性 処女願望 肉体の記憶 なぜ風俗に行くのか 結婚をめぐって エクスタシーへの招待 種の保存 浮気と本気 社内恋愛 妻の浮気 絶対愛とは 別れのかたち 夢と現実 離婚信号 弱きもの 女の時代。以上目次です。興味のある方はお読みになるときっとタメになります。(Sep 1998)

(中央公論社 c0095 1998年1月25日初版 \1400)


 「不夜城」馳 星周

 アジア屈指の大歓楽街--新宿歌舞伎町。様々な民族が巣喰うこの町で、日台混血の故買屋・劉健一は中国人黒社会の中で器用に生き抜いていた。----生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちを、濃密な筆致で綴った危険な物語。

<おススメの一言> 言い訳と知ったかぶりとそぶりの蔓延する制度社会のぬるま湯に浸かっってしまったオレにも、チト触れたものがあったぞ。(JUL 1998)

(角川文庫 は-21-1 1998年4月25日初版 \667E)

この間の読書登録サボッてしまった。

 「風雲児」上・下巻 白石一郎

 慶長15(1610)年、駿府で生まれ育った伊勢山田の神主・仁左衛門は御朱印船で長崎を出港、高山国(台湾)から黄金の都シャム(タイ)のアユタヤに渡った。シャムの女性と結婚し、国王の親衛隊員として頭角をあらわし、やがて日本人でありながら、シャムの王族にまで登りつめた一代の快男児・山田長政の波乱の生涯を描く。

<おススメの一言> 一気に読んでしまいました。ヒトの思い、他のヒトの思い、それぞれに積み重ねた末の行き違い。ほんと実感ですよ。(Apr 1998)

(集英社文庫 し-5-18,19 1998年1月10日第1刷 \480)


 「海狼伝」白石一郎

 海と船へのあこがれを抱いて対馬で育った少年笛太郎は航海中、瀬戸内海を根城とする村上水軍の海賊集に捕まり、その手下となって、やがて”海のウルフ”に成長していく。日本の海賊の生態を生き生きと活写し、海に生きる男たちの夢とロマンを描いた海洋冒険時代小説。第97回直木賞受賞作。

<おススメの一言> 「島に帰ると真っ先に山に登り、瀬戸内の景観を楽しむのが、習慣になっていた。」なんて人物も登場したりして、自分も田舎に帰ると真っ先に城山にあがって故郷の景観を確かめたりするものですから妙に一体感があったりして。(Apr 1998)

(文春文庫 し-5-5 1990年4月10日第1刷 \560)


 「心・と・からだ」五木寛之

 心から体へ、体から心へ、自分を大切にするための12章。人間は <病> を内に抱えて生きており、老いや死から逃れるすべはない。気持ちよく生きて死ぬには、どうすれば良いのか..........。健康幻想を排すること。心と体のコミュニケーションを大切にすること、ちょうど良い加減を見つけること.......著者が実感し、実践してきたことを、わかりやすく率直に綴った人生哲学。

<おススメの一言> 人は死をいかに生きるか。常識に反する実感的心身論。(Apr 1998)

(集英社文庫 い-5-30 1998年1月15日第1刷 \460)


 北朝鮮 凍土への旅立ち「帰国船」チョン・ヘキ

 欺瞞に満ちた「帰国事業」「地上の楽園」のまやかし、日本人妻の消息、そして決死の韓国への逃亡・・・日本から北朝鮮に帰ったある帰国者が明かす悪夢の34年間。

<感想> 1970年代だったと記憶しています。朝鮮の青年と結婚した同郷の後輩の姉が帰還船に乗って北朝鮮に渡ったのは。(Mar 1998)

(文春文庫 1997年6月20日第6刷 \563E)


 地獄の政治犯収容所「北朝鮮脱出」上・下巻 姜哲煥・安赫

 九歳の夏、家族と共にいきなり政治犯収容所に幽閉され、十年にわたり地獄の苦しみをを味わった姜哲煥。好奇心にかられて密かに中国を訪れ、帰国後自首し一年余り同じ収容所で辛酸をなめた安赫・・・これまで秘密のベールに包まれていた北朝鮮の政治犯収容所の恐るべき実態を、二人の青年が初めて白日の下に晒した衝撃の手記。

<感想> 「いま、女として」「闇からの谺」を読んで北朝鮮にはまってしまい読み始めたのですが、ともかく理不尽で、私にはとても信じることのできない世界が、今、日本海のすぐ向こうに存在することに戦慄しました。タイプの違う二人の青年の本音の手記です。人間の生命、自由、仲間、友人、親族、家族といったことを、もう一度自分に問い直させてくれました。(Mar 1998)

(文春文庫 1997年6月20日第6刷 \563E)


 北朝鮮の内幕「闇からの谺(こだま)上・下巻 崔銀姫・申相玉

 「ようこそいらっしゃいました」北朝鮮に連行した女優を出迎えてこの国のナンバー2金正日書記はにこやかに右手を差し出した・・・。1978年、北朝鮮工作員により滞在先の香港から拉致された韓国のトップ女優と映画監督の驚愕の手記。

<感想> 金賢姫の「いま、女として」のあとがきに紹介があったので読み始めたのですが、全668ページ一気に一日で読んでしまいました。どんなサスペンス映画よりも迫真のドキュメントでした。金正日の裸の姿、本音も垣間見ることが出来ました。映画、文化、プロパガンダ、物づくりについても考えさせられました。(Mar 1998)

(文春文庫 1997年9月30日第9刷 \486E)


 「ドイツニュースダイジェスト」NEWS DIGEST INTERNATIONAL

 真面目な記事内容とまっとうな問題意識に好感が持てました。編集者のバランス感覚の良さを感じさせる良質のジャーナリズムといえます。出張先のドイツ・デュッセルドルフで読んだ日本人向けの週間新聞です。ほんと、記事の内容が明快でさわやかでした。

<感想> こちらのひとも何人かがおっしゃってましたが、日本のジャーナリズムのあのセンセーショナリズムは一体何なんでしょうねー。根ほり葉ほりのゴシップ記事に溢れかえる日本をドイツから遠望すると、視聴率稼ぎの商業主義に毒されているとしか思えなくなります。受け手も発信側も発疹状態といえます。まったく。(Feb 1998)

(Duesserdolf)


 「アジア雑貨仕入れ旅」仲屋むげん堂企画室

 ようこそ、むげん堂へ! 私たちは世の人たちが雑貨とよぶ夢のカケラの数々を商っております。安売りはぼくらの誓いを合い言葉に、オモシロものを求めてインド、ネパール、香港、バングラデシュ・・・東南アジアを東奔西走するわが仕入部隊の冒険と涙の物語を初公開。ぜひご愛読のほどを。

<感想> 痛快!買い出し旅日記です。アジアで時々アホな旅人やっていた自分を思い出しました。(Feb 1998)

(岩波書店 同時代ライブラリー24 1996年12月5日第10刷 \927)


 金賢姫全告白「いま、女として」上・下巻 金賢姫

 大統領特別赦免によって死刑を免れた金賢姫は自らの犯した罪を悔い改め、二十六年間の数奇な半生を、つぶさに告白した。日本人教育係・李恩恵の存在、百五十名の尊い命を奪った大韓航空機爆破事件の経緯、北朝鮮の戦慄すべき実態を綴る迫真のドキュメント・・・・

<感想> 自分が思想だと思っているコトっていったい何なんだろう。心の優しさってのは........。ヒトの心の危うさについて、自分の心の危うさについて考えさせられました。優しく生きるってことはもしかしたら.....。(Feb 1998)

(文春文庫 1994年9月10日第1刷)


 「心筋梗塞の前後」水上 勉

 一九八九年六月、七十歳になったばかりの著者が北京を訪れて、天安門事件に遭遇したときから事変は始まった。救援機で帰国後、自宅に辿りついてわずか二時間、心筋梗塞が著者を襲った。死に瀕すること数日、生還する幸いを得たが、心臓の機能は三分の二を失った・・・。二年間入退院を繰り返した日々を克明に描く闘病の記録。

<おススメの一言> 現在の薬漬け医療体制の実態と、その中での私たちの心の持ち方、いのちの生かし方を示唆してくれるような・・・そんな本です。とくに五十歳以上の方におすすめします。臨死体験の記述もさすがです。

(文春文庫 み-1-12 \390)