■直美編■
5日目【7月25日】


 
 

◆7月25日<夕方>◆
『直美さんの責任感2』


 

 もう陽が落ちて、辺りは暗くなり始めている。
 西の空が微かな茜色を残し、どこからか、虫の音が聞こえる。

 昼間の事故から直美さんに会ってない。
 …直美さんいるだろうか?

 俺は直美さんに会いにシーサイドパークのビジターセンターへ向かう。
 事務所の前まで来ると、誰かが中で怒鳴っているのが聞こえた。

 「監視員がついていながらなんで事故が起きたんだ!!」
 「申し訳ありません」
 「私どもの注意が足りませんでした。ほんとうになんてお詫びしてよいものか…」

 事故に遭った子供の両親が来てるらしい。
 うわぁ、失礼ながら見るからに馬鹿そうな親…。
 それに、沢田さんと直美さんが応対している。

 「お詫びなんて欲しくないわよ! お金取っておきながら客の安全も守れないなんて!!」

 神経質そうな若い母親が沢田さんに食ってかかる。

 「本当に申し訳ありません」
 「現場は君が見ていたのだな!」

 父親が直美さんに言う。彼女は俯いたまま小さな声で答えた。

 「はい。私が監視してました」
 「監視してましたじゃないよ! 海水浴客のあんな近くでジェットスキーをやってたんだぞ! どうして止めさせなかったんだ!! そんないい加減なことしかできないなら、監視員なんてやめてしまえ!」
 「ごめんなさい…本当に申し訳ありません」

 何度も何度も頭を下げる直美さん。

 「どう責任を取ってくれるの? あの子あんたがちゃんと見ていなかったから怪我したのよ!」
 「私は…」
 「彼女はアルバイトです。責任ならこの私が…」
 「当事者以外は黙ってて! どう責任をとってくれるの?」

 なんて事だ…彼女のせいじゃないのに。
 確かに多少は責任があるかもしれないけど、事故の後、直美さんは一生懸命やったじゃないか。これじゃぁ直美さん可哀想だよ!