もう我慢できないぞ!
「ちょっと、あんたら責任、責任っていうけど、あんたらは子供をほったらかして何処いってたんだ!」
「なんだお前!」
「宇佐美君」
事務所にいるみんなの目が俺に集まる。
「宇佐美まこと…事件の処理をしてくれた一般の海水浴客だわ、あんた」
「誰だろうと余計な口出しをするなっ!」
頭に血が昇ってるらしく、父親は俺に強い口調で言う。
それにあわせて俺も声を荒げてしまった。
「あんたらの親としての責任はどうなるんだ!」
「それとこれとは話が別じゃないの! こっちはお金払って来てるのよ! 安全に子供が遊べるようにするのが当然じゃない」
母親の方も俺に食ってかかる。俺はどうしようもなく腹が立ってきた。
「勝手なこというな! それ以前に子供が危なくないか見てるのが親の責任ってもんだろが! それにアルバイトに責任のをとれなんて、あんたらのやってることはただの八つ当たりだ!」
「なんだと!! ガキが偉そうな口利いているんじゃねぇ!!」
俺は襟首をつかまれた。
「まこと君、やめて!」
「それに一番悪いのはそんな場所でジェットスキーをやってた奴だろう? 確かに直美さんにも責任はあるけど、彼女が事故が起きた後、一生懸命対処してくれたから子供は助かったんだ!」
「あんた、もういいわ。こんな連中に何言っても無駄よ。帰りましょ」
「ちっ!! なんて海水浴場だ! もう二度と来ないからなっ! 近所にも最悪の海水浴場だって言いふらしてやる。覚えておきやがれ!!」
「お客様それは困ります! お客様!!」
父親は近くにあった事務机を蹴り飛ばして出ていってしまった。
「ふぅ…まったく、全く困ったもんですよね」
パチッ!
痛っ!!
気が付くと俺は直美さんにぶたれていた。
「なんてことしてくれたの! あなたがあのご両親に逆らうから悪評判がたつかもしれないじゃないの」
「痛てぇ。…直美さん! 非道いよ!!」
俺は助けてやったのに、お礼を言われることはあっても、怒られる筋合いはないと思うぞ!
「あんたはあれで満足かもしれないですけどね、我慢してあやまった私や沢田さんの気持ちを考えたの!?」
「悪いのは向こうだぜ!!」
「私たちは従業員で向こうはお客様よ!」
「客であろうとなんであろうと言っていいことと悪いことがあるだろ? なんだよ助けてやったのに!」
「このガキ! もう、君とは絶交よ!!」
「そんなっ! 直美さん!」
直美さんは怒って出ていってしまった。
何がいけなかったのだ?
「宇佐美君の気持ちはわかるよ。でも、自分たちは働いてる以上、お客さんや会社に対して責任をもたなくちゃいけないんだ。まぁ直美ちゃんみたいなアルバイトはそうまでないけど、直美ちゃん責任感の人一倍強い娘だからね」
後から考えると、もっと冷静に対処すべきだったのかもしれない。
俺も頭に血が昇っていた事は否定できない。
くそ!俺は直美さんに嫌われてしまった…。
それから直美さんは俺の前には姿を現さなかった。
【END】
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