■美鈴編■
2日目【7月22日】


 
 
「あのなぁ! せっかく人が心配してやってるのにそういう言い方はないだろ!?」
「誰も心配してくれなんて頼んでいないわよ! いちいち余計な気をまわさないで! それともなに? あんた私に気でもあんの?」

 お互いに怒鳴り合ういつも通りの展開になる。

「そ、そんなのあるわけないだろ。誰がお前みたいな女」
「その割には、少しどもったわね」
「なんだよ…俺に気にして欲しいのか?」
「ば…馬鹿じゃないの!そんな事あるわけないじゃない」
「……」


 美鈴のほうがよっぽど動揺してるじゃないか…って事は、なんだ?美鈴は俺に…??
 思わず頭に昇っていた血が冷める。

「な、なんか変な会話になっちゃったね」

 美鈴もなんだか照れくさそうに声のトーンを下げた。

「あ、ああ。そうだな」
「あんたと話してると、悩んでるのが馬鹿らしくなってきちゃた。…私、もう帰るわ」
「え? じゃあ、送っていくよ。もう遅いし」
「余計なお世話。私の事、嫌いなんでしょ? 変に気をまわさないでよ」
「でも、美鈴も一応、女の子なんだしな」
「一応は余計よ。私は正真正銘の女の子」
「いくら可愛げのない女相手でも、送っていくくらいの器量は持ってるぜ」
「大丈夫よ今日は。優紀を駐車場に待たせてあるから。それじゃあね、バイバイ」

 そう言うと美鈴は駐車場の方へ歩いていく。

 ふぅ…まあ、美鈴の気持ちも晴れたみたいだし、良しとするか。俺も帰ろう。