建築中の別荘分譲団地の中を走って出口を探した。とりあえず、人通りの多いところまで出よう。
気がつくと後ろから5人が追ってきていた。とにかく逃げなければ、次、捕まるとヤバイ。
俺は出口と思われる方向へと路地を曲がる…しかし、その先は行き止まりだった。
「ば、馬鹿! 行き止まりじゃない!!」
「しょうがないだろ! 道知らないんだから。おまえこそ知ってるなら教えろよ! …ってこんなこと言い合ってる暇はないんだ、引き返すぞ」
「残念ね、遅かったみたいよ」
声に振り向くと、そこには静香と4人が立っていた。そのうち2人は石灰で顔を真っ白にしていたが…。
じりじりと壁に追いつめられる2人。俺はそっと美鈴を背中にかばう。
「まったく…どうしてノコノコ出てきたのよ。あんたが来ると話がややこしくなるでしょ」
美鈴が、背中越しに小声で話しかけてくる。
「なんだよ、せっかく助けに来てやったのに。おまえマジでやばそうだったじゃんか」
「余計なお世話よ! 格好つけて、助けに来るなんてほんと馬鹿なんだから! あんたが出てきて何が出来るっていうの? だいたい喧嘩、弱いくせして」
「あ…」
「あんたねぇ…そのこと忘れてたでしょ?」
呆れ顔で俺の顔を見る美鈴。そうだった。俺は子供の時から喧嘩は駄目で、美鈴にすら泣かされた事がある程だ。
た、たしかに、考え無しに行動してしまったかな…。
「なにコソコソ話してやがるんだ! 貴様、たいへんな真似をしてくれたなぁ。礼はたっぷりさせてもらうぞ」
「真っ白な顔をして、凄んでみせても、間抜けなだけだぜ、阿呆」
俺は軽口をたたいて余裕を演じる。でも、美鈴に足が震えてるのバレてたら格好悪いよなぁ。
「な〜に〜お〜! 少々、痛めつけないと解らなねぇようだな!」
「ば、馬鹿、挑発してどうするのよ!」
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