■真澄編■
6日目【7月26日】


 
 
Marine Blue Serenade
6日目

【 朝 / 昼 /  /  】


◆7月26日<朝>◆
『弘のライバル宣言』


 


「よう、まこと」

 駅前で弘を待ち伏せていたら案の定、改札から出てきた。
 俺の姿に驚きもしないであいさつをする弘。俺が待ってることを予測していたのだろう。

「どういうつもりだよ」
「なにが?」
「真澄ちゃんの事だよ」

 俺は思いきって真澄ちゃんの事を切り出してみる。

「ああ。やっぱりそうか。俺もお前に話しておきたかったんだ」

 近くにあった花壇のブロックに弘は腰をかけると俺の方を見て話し出した。

「俺、昔、真澄ちゃんとつき合っていた時あってさ」
「え? なんだって!?」

 なんて事だ。
 真澄ちゃんの昔の彼氏って弘だったのか。

 俺は驚きのあまり一瞬言葉を失った。

「それって、いつの話だよ!」

 俺は思わず大きな声で弘に聞いていた。

「高校のに入ってすぐ。3ヶ月ほどだったけど」

 しらじらしく、そっぽ向いていう弘。

「俺、そんな事、知らなかったぞ」
「う〜ん、言ってなかったからな。別に話さなくちゃいけない事でもないし…あの時はお前と彼女は特別な関係って訳じゃなかったんだろう? じゃあ、問題ないじゃん」

 そう言われて、俺は言葉の勢いを無くす。

「それは、そうだけど…でも、中学の時の彼女ってお前のタイプじゃないんじゃないか?」
「まぁな。いろいろあったんだ」
「……」

 俺はそんな二人の関係には全然気付かなかったんだ。それがなんとなく嫌だった。

「それでな。本題だが、今回、俺、彼女を狙うぜ」
「!!」

 自信たっぷりな顔で俺に言う。確かに予想はしてたが、こうはっきり言われるとは思ってもみなかった。

「惚れ直した。あんなにかわいくなってたなんて。磨けば光る娘だったんだなぁ。今日か明日中に必ず落とす」
「な、なんでそんな事俺に言うんだよ。別に彼女は俺のものでもなんでもないんだろう? 勝手にやれよ」
「いいのかよ。一応、お前も狙っているのなら悪いなって思って。もしそうでも譲る気はないけどな」
「……」
「まあ、いいさ。そういうことだから。あとで恨みっこはなしだぜ。じゃぁな」

 軽く手を上げると弘は背中を向けて去って行く。多分真澄ちゃんに会いに行くのだろう。俺はその背中をどうする事も出来ずに見送った。