■真澄編■
6日目【7月26日】


 
 

◆7月26日<夕方>◆
『弘との関係』


 


「宇佐美先輩」

 少し不安げな表情で俺の名前を呼ぶ真澄ちゃん。
 俺は真澄ちゃんに気持ちを伝えようと、彼女の叔父さんの家へ向かったのだが、その途中、ばったり彼女に出会ったのだ。

「あの、真澄ちゃん。少しいいかな?」
「は、はい」

 俺達は、近くにあった児童公園の椅子に肩を並べて腰掛けた。

「あのさ、昨日の事なんだけど…」
「昨日も言ったと思いますけど、岸田先輩に宇佐美先輩を探すのを手伝ってもらっていただけです。あたし岸田先輩に特別な感情をもったりしていません」

 彼女にしてははっきりと強い口調で返してきた。

「いや、俺と小野寺さんの事」
「宇佐美先輩。はっきり言ってかまいません。あたし嘘つかれた方が傷ついてしまいます」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。違うよ。一人にされてた彼女を見て放っておけなかっただけなんだ。友達として。だいいち、彼女は弘とデートをしに来ていたんだぜ」
「……」

 不安そうな目で俺を伺う真澄ちゃん。

「それに、俺は彼女に対して特別な感情を抱いてなんかいない」

 俺は真剣な眼差しで彼女を見てそう言う。彼女は少し顔を紅くして俺から目を反らした。

「宇佐美先輩は、私が岸田先輩と会っていても平気ですか?」
「平気…じゃないな」
「私もです」
「え?」
「宇佐美先輩が、小野寺先輩と会っているのを見ると胸が締め付けられます」

 真澄ちゃんは俯いたまま真剣な表情で言う。

「でも、私、宇佐美先輩の事、信じてますから。先輩、嘘つくような人じゃないことわかってますから…」

 何処か自分に言い聞かせるような感じで真澄ちゃんは言った。

「ごめんなさい。ちょっと用事の途中ですので、これで失礼します」

 真澄ちゃんは立ち上がると俺から逃げるように駆けて行く。
 俺は告白するタイミングを逃したのに気付いたのはしばらくしてだった。