「う〜む、確かに強敵だ。あの岸田のマセガキか…お前なんて相手にならないだろうな」
妙に納得しながら言う姉貴。
あれ?なんで姉貴があいつの事、詳しく知ってるんだ?
面識はあると思うが、そこまで親しくなかったはず。
「なんであいつの事、そこまで知っているんだよ。やけに詳しそうじゃないか」
「いや、なんだ、わたしも声をかけられた口だからな」
「なるほど…って、えええ? あいつ、姉貴にまで声かけたのか?」
そっぽ向いていう姉貴に驚く俺。
姉貴は照れているというより、康太郎さんを意識しているみたいだ。
まあ、当の康太郎さんはそんな事は気にならないみたいで、楽しそうに俺達の会話を聞いてる
「そ。駅でばったり会ってな。わたしも危うく口説かれかけた。あの男の口の上手さは絶妙だったよ」
うひ〜、姉貴を口説こうとするなんて命知らずな奴…って言うより、なんて奴なんだっ。友達の姉に手をだすなんてっ。
俺はあまりの事にあきれてしまった。
「こりゃ、先に口説いた方が勝ちだな。ぼやぼやしてないで気持ちをはっきり告げた方がいいんじゃないか?まこと」
「そ、そんなの俺の勝手だろ?」
「ま、彼女をライバルの手に落ちてもいいって言うのなら、勝手にすればいいけどな。あとで後悔しても知らないぞ」
「うっ…」
いちいちもっともな事を言うな! なんか腹立つぜ。
それが簡単に出来るなら、こんなに悩まないよ。
「いいか、まこと。いくら相手の事を心の中で想っていても口に出して伝えなきゃ解ってもらえないぞ。逆に気持ちが無くても言葉を巧みに使う事さえできれば相手を説得出来る事もある。どんなに相手の事を強く想っても、言葉なり行動なりでそれを伝えなきゃなんの意味も見い出せない」
「……」
「全てはお前の行動次第だな。弘より先に告白して可能性にかけてみるか、言う勇気がないんなら、弘が彼女を口説くのを黙って見てるか…どっちかだ」
「そんな事はわかってるよ。」
「言い訳なんていくらした所で、本質的なものはなんにも解決しないぞ」
「まぁ、まぁ、博子。まこと君もまだ若いんだから、あんまりきつい事いうのも可哀想だよ。彼の年頃は悩む事も大切な事だし」
見かねた康太郎さんが会話に割り込む。
「そうだな。まぁ、わたしが言っても素直に聞く奴じゃないし…。とにかく後悔しないようにやってみる事だな」
俺もわかってるさ。弘より先に気持ちを伝えなきゃいけないって事は。
でも、告白なんてそう簡単に出来るもんじゃないしなぁ。とにかく、なんとかしなくては。
「ほら、また箸が止まってる。悩むのなら食ってからにしろよな。食器が片づかないだろう?」
「え?ああ。わかった。わかった。食べてしまうよ」
俺は気持ちを切り替えると箸を運ぶペースを少し上げた。