「そ、そうだな。真澄ちゃんには悪いけど小野寺さんかなあ」
「そう…ですか」
肩を落とす真澄ちゃん。さっきの勢いは衰え、うつろな目をしている。
「いや、それは真澄ちゃんの事も大切だよ。でも昔からクラスメイトだった彼女だって大切なんだ。わかってくれよ」
「はい。わかりました。ごめんなさい。いままで迷惑かけて」
「え?」
「あたし知っていれば、先輩に甘えて迷惑をかける事はしなかったです。ほんとうにごめんなさい。さよなら、宇佐美先輩」
「ちょ、ちょっと真澄ちゃん!違うんだ!待ってくれ!」
走り去る彼女の背中を追いかけたが、ビジターセンターのロビーあたりで見失ってしまった。
違うんだ。俺は彼女にも小野寺さんの事、理解してもらおうと思っただけなんだ。真澄ちゃんの事を嫌っていたりするわけじゃない。
…それとも、これは身勝手な考えだったんだろうか?
でも、いまさらもう遅いんだ。
それから俺は彼女に会う事はなかった。
【END】