1日目【7月21日


 
 
 夏休み初日。出発当日の朝。

 先に出発した親父達から少し遅れて、俺は玄関を出た。朝のすがすがしい空気が心地よい。天候は快晴。陽射しは、夏特有の熱を帯び始めていた。
 俺は大きく背伸びをすると駅へ向かって歩き出した。

 なんだかいい事がありそうな予感がする。
 俺は期待と不安を抱えながら、今日から一週間の海辺の街での事を考えていた。いつもとは違う生活。夏の海、そして出会い。
 この予感が本当であればいいと強く願いつつ、俺は重い鞄を背負いなおして街を歩いていく。
 目指すはここから普通電車で一時間。近隣で一番有名なマリンスポットがある三本松町、天乃白浜海岸である。


 俺は三本松町行きの普通電車に乗った。窓から空を見上げると抜けるような夏の青空。今日は絶好の海水浴日和だ。窓から吹き付ける風が、だんだんと熱気を帯びてきてる。

 姉貴達の住む三本松町は人口、二万五千人の漁業と観光の町。ここら近辺で一番美しいといわれる天乃白浜と三本松という2つの海水浴場があり、天寿山を中心とした国立公園がある。

 特に最近はリゾート開発に力を入れている。
 第三セクターの”天乃白浜シーサイドパーク”では公園整備、別荘、ホテルの運営、砂浜の管理、それとできたばかりのテーマパーク型屋外プール”シーサイドアドベンチャープール”など、身近なリゾート地を目指して開発、運営をしているらしい。

 電車の窓から吹き付ける風に、潮の香りがかすかに漂っている。そして、木々の隙間から見えてきたマリンブルーの輝きにに、俺は目を細めた。

 「ちょっと、君、座席に荷物おかないでくれる。他の人が来た時に迷惑でしょ?」

 突然、向かいの席に座ってた女の子に注意される俺。
 ショートカットの活発そうな女の子だ。
 彼女の指摘通り、確かに俺は大きめのバックを自分の座席の隣に置いている。網棚に上げるのが面倒だったのだ。