“ネメシス (上・下)” アイザック・アシモフ (ハヤカワSF)
晩年に書かれた、“ファウンデーションもの” でも“ロボットもの”
でもない作品。
とはいえ、接点になり得る部分はあるようですね。
地球から僅か 2光年の距離にありながら塵の雲に隠されていた赤色矮星
“ネメシス” が、植民衛星の一天文学者により発見された。
その発見を秘密にし、地球から離れ独自の文化を築かんと向かった植民衛星と、
それを追う地球の人々の、それぞれの策謀が繰り広げられる。
ネメシスは太陽へ向かう進路を取っていて、
地球にも大きな被害を及ぼすであろうことが判明するが、
ネメシス系にはさらなる謎が隠されていた。
鍵を握るのは…。
「太陽系を霞めていき地球に災いをもたらす恒星」
というとパニックものを思い起こさせますが、ネメシスが接近するのは 5000
年後、全然差し迫っていませんし、話の本筋とは実はあまり関係ないような気もします^^;。
だから、新刊時の帯に書かれた「血と破滅をもたらす赤い星」というのは、
確かにそうなんだけど何か違うぞ、と。
それ以外の点では比較的ありがちな話かと思いますが、まずまずの出来栄えでしょう。
最後にもうちょっと盛り上げてほしかった気もしますが。
(6/4)
ワンポイント
解決策を持っているのは 4人のうち誰か?
答が明かされる前に考えを巡らせてみると楽しいでしょう。
“内なる宇宙 (上・下)” ジェームズ・P・ホーガン (東京創元社)
あの“星を継ぐもの”
三部作の続編です。
三部作を読んでいない人は当然そちらから読んで下さい。
今度は、ジェヴレン人たちの多くが陥っている無気力状態の謎を解きに
ハント博士がジェヴレンへ赴きます。
「今度は土産に何を期待しているのかな、グレッグ?」
「こっちから注文をつけられるものかね。失われた惑星。星間宇宙船。異星文明…。
ほかに何がある? あるとすれば、別の宇宙ぐらいなものだろうが」
「それだけか? 案外、その別の宇宙にわたしは行くことになるかもしれないぞ」
(本文から引用、一部編集)
そういう話です(^_^)。ハント、コールドウェル以外にも、ダンチェッカーや
ガルース、ゾラックなども相変わらずです。
旧作から 10年近くたって読む者にとっては旧友との再会のような感慨もあります。
でも、話の中ではガニメアンと遭遇してからまだ一年そこそこだというのが信じ難い^^;。
話のノリとしては“巨人たちの星” に近いところでしょうか。
執筆自体も旧作から 10 年経っているので、
コンピュータの内部に関する考察が深くなっているところがうれしいです。
(3/19)
ワンポイント
やはり思うのは…。VISAR なんて贅沢はいいません。ZORAC が欲しい(^_^)。
“奇妙な論理” “奇妙な論理II” マーチン・ガードナー (教養文庫)
SF じゃないです。ノンフィクションです。
原著は“In the Name of Science” というもので、
そのうち約半分を邦訳したのが“奇妙な論理” 、残りの半分のほとんどと、
原著の 30年後の続編“Science: Good, Bad and Bogus”
の一部の概略を補遺としたのが“奇妙な論理II” です。
要は、「元祖・トンデモ本の世界」と言った感じの本です。
やっている本人は、
「自分は大発見をした天才だが、
現在の科学の権威者たちは自分の既得の地位を失うことに怯えてそれを認めない」
と思っているけれども、実際ちゃんと見ると、
単に科学の基礎も知らないでいい加減な実験などをやっているだけ、
といった話を集めたものです。
「トンデモ本〜」では楽しむことを主眼としていますが、
この本はどちらかというと啓蒙を主眼としています
(結構楽しんでもいるような気もしますが)。
だから、人々に大きな影響 (被害) を与えたものが多くとりあげられています。
人々が如何に騙されやすいかを説き、「そんなもんに引っかかるんじゃないよ」
と諭します。
もうちょっと小気味良くびしばしと「何がおかしいのか」を挙げていってくれるのかなぁ、
と読む前は思っていましたが、
駆け足でたくさんのものに触れているせいもあってかちょっと物足りない気がします。
原著が 1952年刊なので最近の話はないのですが、
この本に出てくるような「宗派」で現在も残っているようなのもあるんだろうなぁ、
と思うとぞっとします。
残っている、以外にも昨年あたり話題になったものだけでも幾つかこの本の対象になりそうなのはありますし…。
SF を読むような人は、良質の SF (とちゃんとした科学の本) を読んで目を肥して、
変なものには引っかからないようにしましょう。
(ヴァン・ヴォクトはさんざん引っかかったらしい… ^^;)
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