SF読書録
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1995年以前 (2)

“未来の二つの顔”ジェームズ・P・ホーガン
“未来からのホットライン”ジェームズ・P・ホーガン
“宇宙の戦士”ロバート・A・ハインライン
“2001年宇宙の旅”アーサー・C・クラーク
“2010年宇宙の旅”アーサー・C・クラーク
“ファウンデーション・シリーズ (1〜3)”アイザック・アシモフ
“ファウンデーション・シリーズ (4, 5)”アイザック・アシモフ
“神の目の小さな塵”ラリイ・ニーヴン & ジェリー・パーネル
“歌おう、感電するほどのよろこびを!”レイ・ブラッドベリ
“900人のおばあさん”R・A・ラファティ


“未来の二つの顔”ジェームズ・P・ホーガン (創元SF)

「猫についた蚤を退治するにどうしたらよいか?」
人間はこう質問されたとき暗黙の仮定があることを了解して答を考える。 すなわち、常識を働かせる。 ところが、人工知能でこういう問題を解かせようとすると、 その暗黙の仮定が抜け落ちているかもしれない。 猫に危害は加えないようにという仮定がないと、
「猫ごと焼却炉にほうりこむ」
という答を出すかもしれないのだ。 もちろん、人工知能にいろいろと常識を教えこむことはできる。 しかし、見落としはないのか? 社会の様々な部分の管理を人工知能に任せても大丈夫なのか? いざというときには人工知能を止められるのか? それを実験用のスペースコロニーで確かめよう、という計画が持ち上がった。

人工知能のようなものを、無闇に忌避するわけでもなく、 かといって盲信するわけでもなく、 「実験してみよう」というのが科学的、SF 的な発想です。 当然、実験者が思った通りの結果が出るとは限らないのですが、 ときには思いもかけなかったうれしい結果になることもあるのです。 そこまでの道のりは苦しいかもしれませんが。 と、ここまでを読むと小難しい話に聞こえるかもしれませんが、 しっかりとエンターテイメントしてますので御安心を。


“未来からのホットライン”ジェームズ・P・ホーガン (創元SF)

小説を読んでいると、途中まで読んでおおよその結末が判ることがあります。 そして、その通りの結末を迎えて「なぁんだ、やっぱりそれだけか」と思う場合と 「うんうん、やっぱりそうなったか、よしよし(^_^)」となる場合があります。 この“未来からのホットライン”は後者です。同じホーガンの“創世記機械” は僕にとっては前者であまり好きではないのですが…。 うーん、どこら辺で差がつくのだろう。

この話は、タイトルを見ればだいたい判る通り、「時間もの」です。 ただし、通信が送れるだけです。 老科学者がそれを発見し、その仲間たちとその性質を調べています。 そして、それとは全然関係ない、とある物理実験施設で行なわれた実験が、 最早とりかえしのつかない事態を起こしてしまったことが判明。 何がまずいのかをその実験が始まる前に知らせることができれば…。 しかし、そうすると今流れているこの時間はどうなるのか?

大丈夫です。 最後には「よしよし(^_^)」という結果が待っています。


“宇宙の戦士”ロバート・A・ハインライン (ハヤカワSF)

人類は銀河に進出し、異星人と遭遇した。 その相手とはどうしてもコミュニケーションの余地がなく、 どちらが悪いというわけでもなく(もしくはどちらとも悪いのか)、 「殺るか殺られるか」の状態になっている。 そんな中、一人の少年が「機動歩兵」(パワードスーツを装着し、 惑星に降下して戦闘を行なう) を志す。

作中に登場するパワードスーツがガンダムのモビルスーツの基となった、 ということでも有名な、 その軍隊賛美的ともとれる内容 (ハインラインはよほど良い同僚や上官に恵まれていたんだろうなぁ、 と僕は思います) が賛否両論を巻き起こす作品。 でも、話の本質は一人の少年の成長の物語だと思います。 少年がたくましく育っていくのを見守って下さい。


“2001年宇宙の旅”アーサー・C・クラーク (ハヤカワSF)

月面から発掘された巨大な黒いモノリス。 人類は、それと同じものが地球上に現れ、 絶滅への道にあった人類の祖先を知性の道へと導いたことを知らない。 月のモノリスは太陽の光を浴びると、土星の方向へと信号を送った。 その信号の先を調査するため、宇宙船ディスカバリー号が建造され、 人間たちとコンピュータ (HAL9000) を積んで出発する。

言わずと知れた名作。映画のほうも、SF映画の最高傑作とも評されています。 ちなみに映画と小説はほぼ同時進行で作られたそうです。 ディスカバリーの目的地が違ったりしますが^^; (当時の特撮技術で土星の良い映像ができなかったかららしいです。 その辺りの話は“メイキング・オブ・〜” で読めます)。

大筋は、人類の進化について、細かいところでは HAL9000 はいったいどうしてしまったのか、というところが主要なところです。 映画ではかなり難解ですが、小説ではかなり説明されています。 小説と映画、どちらが先でも良いでしょう。


“2010年宇宙の旅”アーサー・C・クラーク (ハヤカワSF)

2001年宇宙の旅”の続編。 設定は、映画版のほうを踏襲してます (すなわちディスカバリーの行った先は木星 etc.)。 ディスカバリー号に何が起こったのかを調べるために、 ソ連 (うーむ^^;) とアメリカが協力して宇宙船を送り込みます。 また、中国も独自に宇宙船を送り込もうとします。 そして彼らは木星軌道を漂うディスカバリーを発見し、HAL9000 を再起動させますが、 木星に何やら怪しげな変化が…。 エウロパでも何か怪しげな…。

モノリスはいったい何なのか、それが段々と理解されてきます。 前作ほどのインパクトはないかもしれませんが、 壮大な物事が起きつつあることを、その片隅から静かに語って行きます。

さらに続編の“2061年宇宙の旅”もあります。


“ファウンデーション・シリーズ (1〜3)”アイザック・アシモフ (ハヤカワSF, 創元SF)

銀河の中心近くにある首都トランターを要とし、 銀河帝国は栄華を極め、それは永遠に続くかのように見えていた。 しかし、帝国の没落とそれに続く暗黒時代を、 統計的な数学を応用し人間の社会の動きを解析する 「心理歴史学」によって予言した男がいた。 その名はハリ・セルダン。 帝国の没落などという物騒なことを言うセルダンとその仲間を、 皇帝(の代理人)は銀河の辺境の星ターミナス(テルミナス)へと追い遣るが、 それも心理歴史学を活用し、暗黒時代の長さを短くしようという 「セルダン計画」の一部であった。

…やがて帝国は衰退して行き、 ターミナスのファウンデーションと呼ばれる勢力が台頭して行った。 「セルダン計画」はこのまま順調に進むのか?

アシモフの名声を確かなものにしたとも言える壮大な未来の歴史ドラマです。 年代を追って短〜中篇のエピソードが積み重ねられていきます。 2巻め“ファウンデーションと帝国”の後半“ザ・ミュール” からは謎解きの要素も強くなってきます。 読み始めればどんどんとのめり込めることでしょう。


“ファウンデーション・シリーズ (4, 5)”アイザック・アシモフ (ハヤカワSF, 早川書房)

3巻め“第二ファウンデーション”が執筆されてからかなりの間があいて、 “ファウンデーション・シリーズ”が帰ってきました。 “ロボットもの”との統一という野心と共に。

4巻め“ファウンデーションの彼方へ”では“ロボットもの”でもない長編、 “永遠の終り”すら「伝説」として取り込もうとしています。 そして「直感能力者」と言う点で“神々自身” さえも絡めようとしていると見るのは僕の穿った見方でしょうか^^;。 なお、書かれた年代があいているせいもあるのか、 設定が微妙に変わっているところもあるように思います。

5巻め“ファウンデーションと地球”。 まだ“鋼鉄都市”の系統を “ロボットと帝国”まで読んでいない人は、 これを読む前にそちらを読みましょう。 さて、“〜と地球”という名のとおり、 “〜彼方へ”でやり残した地球探索の話です。 この結末、僕はなんか納得は行かないんですが、説得はされてしまいました^^;。

この続きを書かずしてアシモフが亡くなってしまったことを悲しく思います。 (6, 7巻はセルダンの若い頃〜ファウンデーション設立までの話)


“神の目の小さな塵”ラリイ・ニーヴン & ジェリー・パーネル (創元SF)

超光速飛行を開発し、銀河系にかなり進出している人類。 そこへライトセールを掲げ通常空間を旅して、異星人の船がやってきた。 その乗員たちは死んでしまったが、彼らの母星へ向けて探索隊が送り込まれる。 そこで出会った異星人は、それぞれの役割に応じて極度に分化が進んでいた。 そして、もう一つ、人類と共存するためには困った特性を抱えていた。

どんな機械でも改造・改良してしまうウォッチメイカー、 異星人の言葉だろうと覚えてしまいコミュニケーションをとるミディエイターなど、 愛らしくもあるモート人。 彼らの、彼らにとって苛酷な宿命から逃れるための努力ははたして報われるのか。 彼らを救い、そして人類も無事である手立ては存在するのだろうか。


“歌おう、感電するほどのよろこびを!”レイ・ブラッドベリ (ハヤカワNV)

レイ・ブラッドベリ作品ということで SF というよりはファンタジーです。 もともと一冊だった同名の短篇集の後半部分です。 前半部分は“キリマンジャロ・マシーン” というタイトルで出ています。

表題作は SF っぽく、母親を亡くした家族のもとに「電気おばあさん」 (ロボットのおばあさん) がやってきます。 このおばあさんは何でもよくこなし、よく気がつき、 閉じ掛けていた子どもの心も開いていきます。 ただ一人、なかなか心を開かなかった妹も…。 いい話ですが、でも、結末は結構恐いような気もするのは僕だけでしょうか。

それ以外では“ロールシャッハの服を着た男”がちょっと SF っぽいところでしょうか。 この話と、“ニコラス・ニックルビーの友はわが友”が好きです。


“900人のおばあさん” R・A・ラファティ (ハヤカワSF)

「SF 界のほら吹きおじさん」という呼ばれ方が定着している感のあるラファティ。 この短篇集も SFほら話が満載です。 表題作は、この世の初めに遡るまでの代々のおばあさんがみんな生きている、 という惑星に来た男が、何とかしてこの世の始まりの様子を聞き出そうとする話。 他には、そこだけ物理法則がねじ曲がっている惑星の話や、 とてつもない初等教育が行なわれている惑星に地球の PTA の人たちが視察に行く話などなど。 単なる馬鹿話から、ちょっとブラックな話まで揃っています。

Contact: aya@star.email.ne.jp.cut_off_here