もともとこの話は "THE END OF EVANGELION" までの物語に対する、 私の「感想」でした。 EoE 終了時点での二人の関係、シンジの心理状態を私がどう思っているか。 『新世紀エヴァンゲリオン』を碇シンジの(心理的な)成長の物語を見なす時の 感動と不満を述べたものであり、 「次」はシンジに何が起きるべきか ──
y:x でも作者の陰謀:-)によってそういう傾向がありますが、 e:x のシンジは徹底して活躍できません。 『まごころを、君に』の中でシンジは語ります。
「僕はもう一度あいたいと思った、その時の気持ちは本当だと思うから ──」これまで他人との摩擦が恐くて閉じ籠っていた人間が宣言一つでどれだけ変われるか、 ということを思う時、 この言葉はターニングポイントではあるけれども、これだけでは何も変わらない、 ここから先がシンジにとっての試練なのだと思うのです。 考えるだけならタダです。 考えつきもしなかったのが、そういう発想ができる、できたということは重要ではあるけれど、 所詮は "1% の inspiration と 99% の perspiration によって成る" のです。
シンジが最初の一歩を踏み出すまでにはまだまだやっておくべきことがたくさんあります。 e:x はこれで終りですが、 シンジはもうすこし精進していただくことになるんでしょう ‥‥
そして、もう一点。
「人類補完計画」は善か悪か?
という問題。
個の壁を取り払うことの嫌悪感からか、
これを「悪」とする意見が多いのが私はすごく気になりました。
人格融合を問答無用で「悪」とするならば、多重人格者の治療は「悪」なのでしょうか?
今回の計画は、問答無用で人格融合してしまったという点が問題で、
「悪」と断言していいと思いますが、国連の計画として普通に推進した時には、
これはこれで人類の選択の一つとしてありえる話ではないかと思います。
ユイレポートから数えるなら 16 年にわたる計画が子供の一存で失敗するという筋も
納得しがたく、上空の帯の行方についても描きこんでみましたが、
主題を割った恐れ無しとは言えません。
‥‥ 「計画」に甘いのは推進側に属する碇ユイのファンやってるからだ、 ということも否定はしませんが ^_^;
「真実は、君とともにある」clue 相互の関係は読み取れる限界まで薄くなっています。 表層をそのままなぞるか、深読みして深層を再構築するか。 そのあたりのことまでは作者のよくしるところではありません ──
アスカの心理状態など過度の説明不足は相変わらずで、
ただ、アスカとの対決が主題になってる時にアスカの手の内を広げて見せる気は
やっぱりまったくなかった。
形而上生物学やネルフドイツ支部の設定は y:x から持って来た。あっちでもまだ
ぜんぜん使ってないというのがなんとも。もちろん「補完計画」は全く違う。
y:x では「魂」なるものを扱う必要がないから。
生物の寿命や宇宙論のあたりは真実 7 割誇張 2 割嘘 1 割全部あわせて嘘八百というやつで
間違ってもそのまま信じてはいけない(信じる人がいるとも思えんけど)。
ほんとはここは正確を期しても辻褄のあうところで、
いっそそうしようかとも思ったけど無意味に長くなりそうで止めた。
とはいえ論じてて面白かった。癖になりそう。
それでは、また。