2013.02.04

   中央図書館で借りてきた2冊目であるが、櫻井芳雄の「ニューロンから心をさぐる」(岩波科学ライブラリー)である。このシリーズはトピックスを限定して判りやすく解説してあるので、役に立つ。内容は津田一郎の本に引用されていた通りであった。ニューロンは固定した役割を持っているというよりも、他のニューロンとネットワーク(セル・アセンブリー:細胞集成体)を組んでいていろいろな機能に参画している、ということである。Hebbはその仮設を提唱していた。そのことで可塑性や無限の機能が説明できるし、幻肢も説明できる。最近では視覚情報処理のネットワーク図も固定的なものではないという証拠が出始めている。成人になっても軸索は成長し、新しいシナプスを形成することも知られている。これまでの脳研究は動物を麻酔下において統制された実験を行い、安定な回路を確定してきたが、生きている動物はもっと自由である。単独の神経の興奮状態にしても、繰り返し刺激して和を採ってノイズを抑圧して初めて測定可能なものであるが、実際には1回の刺激で応答が起きているわけだから、発見された細胞が重要であることは間違いないにしても、それに全機能を負わせるという論理には無理があるのである。

    ところで、この人は僕より6歳年下で、京大文学部心理学科だったということらしい。その当時僕はカナダの大学で心理学の学生がネズミの脳の解剖をやっているのを見て驚いたのだが、この人も地下室でネズミの脳の解剖をやっていたということである。日本の心理学科でもそんなことをやっていたとは全く知らなかった。

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