2月16日(日):
ハンナ・デュブゲン台本、細川俊夫作曲のオペラ『松風』を見た。元々は空中を舞うモダンダンス風の振り付けで評価が高くて、2年前に東京で日本初演があり、テレビで放映されたのを見たので、もういいかなあ、と思っていたのだが、裕子が見たいというので、一緒に見に行った。

・・今回のはアステールプラザの能舞台を使って、広響を始めとして日本人歌手達による演奏で、演出の岩田宗達曰く、「言葉と音楽に忠実に、演奏者達のパフォーマンスを最大限に発揮する事を心がけた」そうである。結果的には能の流れに近くなって、判りやすくなったと思う。とりわけ、これは演奏の質が良いということもあるだろうが、細川俊夫独特の音使いの意味がよく伝わった。言葉に合わせて音の抑揚や音色が選ばれている。目の前で演奏されたので、大変に迫力があった。特にフルートが大活躍で、ピッコロからバス・フルートまでを駆使して、あらゆる音を出していた。能管のような音も自然に出していた。舞台を見るよりも指揮者の川瀬賢太郎の踊るような指揮を見る時間の方が長かったかも知れない。2回しか公演しないのでは勿体無い。

・・松風を演じた半田美和子はこういうのには適役で、狂気の世界をリアルに演じきっていて、背筋が凍えた。物語は有名であるが、在原行平への思いを果たせず死んでいった姉妹への鎮魂である。ハンナ・デュブゲンの解釈なのだろうが、女の情念がより深く表現されていて、これを中島みゆきが演出したらどうなるのかなあ、とふと思った。

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