晩秋から初冬の花ヤツデ

ここのところ華やかな花を咲かせる植物が少ない時期ですが、目立たない花に眼を
向けてみましょう。それは晩秋から初冬にかけて花を咲かせるヤツデです。

庭木として植えられているヤツデは、目立った植物ではなく、大きい葉が一年中、
青々としていて、しかも、日陰に強いことから、便所の目隠しなどのために植えら
れて来た植物で、一説にはヤツデを庭木として植えておくと邪悪の侵入を防ぐこと
普及したのだとも言われています。

       北向きの大玄関や花八ツ手       村上鬼城

子供の頃、ヤツデの実を紙玉鉄砲・・・細いスズタケを使って自分達で作ったり、
街の稲荷神社の縁日やお祭りの時に、ニワトコの髄と共に買った、あの竹鉄砲と言
う方が解りやすいかもしれません・・・の込める玉としてずいぶんと世話になった
植物です。 それに天狗のうちわなどといって遊びに使った植物です。


10月から12月になりますと、大きな円錐花序−−こんな難しい言葉は止めまし
ょう−−夏の夜を彩る花火、特に2尺玉や3尺玉を打ち上げますと、大きな玉から
子玉が大空に散って、それぞれがパーと開いたように、ヤツデは乳白色の球形の花
の集まりをつけます。 先日読んだ「現代俳句の面白さ」という本の中に

       秘密めく目を八方に花八ツ手      渡部久子

という句を見つけました。 大きな葉の間から伸びてくる乳白色の花の塊はこんな
感じがぴったりします。

草川俊氏の「作物の博物誌」によりますと、日本では虐げられているヤツデもヨー
ロッパでは1830年代に日本から紹介されて以来、独特な葉の形や艶やかな葉の
光沢から立派な鑑賞用植物として、家庭やオフィスで鉢植にされ大事に育てられて
いるといいます。 2年前にロンドンの住宅街を散歩した折りに、玄関前で大切に
育てられているヤツデを見つけ嬉しくなり、足を止めて眺めたりしました。

皆様のお家の庭、ご近所の庭、通勤や通学への道筋、ちょっと気にして見てくださ
い。必ず、ヤツデの花火に出会いましょう。 そして、小春の陽を浴びて、乳色の
花が終ると次第に緑色に変ってゆくのも楽しい観察の対象になります。

                          うめだ よしはる

   サルビア
   ハナスベリビユ
   ツワブキ
   ドウダンツツジ

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