ヤブガラシ

 ヤブガラシが家々の生け垣に絡む季節になりました。 ヤブガラシは少年時代この
草のツルの先端部を摘んで習字の時間に、墨すりの時に加えると、すった墨にねばり
がでて、書いた字に艶が出るとかで、習字のある日にはヤブガラシの蔓を摘んで利用
した覚えがあります。 でも、張り出されることはありませんでしたので、あまり効
果は無いようです。

 

 皆様もご覧になっているように、ヤブガラシの花は黄色や橙色の粟粒程のものが手
の掌を広げたような花梗について、憎たらしい名前に似合わず可憐です。 絵本の中
の星雲のようだと書かれたものもありますが、素晴らしい表現ですね。

     やぶがらし蔑視のうちに花をもつ        映

 雑木が生い茂った薮でも、この蔓性の草に覆われると枯れてしまうということから
、ヤブガラシの名が付されたとあります。 また、手入れの行き届かなくなった家の
周囲などに生えることから、ビンボウカズラの異名もあります。

     やぶがらしかつぎてかしぐ生垣(マガキ)かな  吉田 冬葉

     垣の木を覆ひ枯らせしやぶがらし
              今は衰へ秋ゆかんとす    平田 春一

 暑い夏が来て、ヤブガラシが繁茂するのを見ると、疎開していた田舎の共同墓地の
光景が思い浮かびます。 暑い夏、他の植物はぐったりしてるのに、元気良くつるを
伸ばして木の墓標を覆っているのはヤブガラシでした。 当時、エキリという名の伝
染病が流行り疎開してきた小さい子が次々に死んで行きました。 暑い夏、何人もの
子供の屍が、伝染病で死んだということから、この共同墓地で野外火葬されました。
こんな悲しくて厭な思い出もヤブガラシが垣根の木に絡んでいるのを見ると蘇ってき
ます。
                            うめだ よしはる

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