の順で行われました。今回はこれらの中の三つの論文をアップします。
そして呉さんの講演で、中国のSFは(それがどんなものなのかは
別の話として)ルィーバコフ氏の言う「理想」を持ちつづけていると
いう点、そして中国のSFはあくまでもヴェルヌ的であるという点で
中国のSFとロシアのSFは水と油だということが明らかになりま
した。また、それは間接的に、ソ連のSFとロシアのSFは、まった
く正反対の性格を持つものだということも示唆しています。
続くストリャーロフ氏の講演は、ロシアではソ連時代に文学とSF
に別れてしまったものが、表現も方法もちがうのだけれどある意味で
先祖帰りを果たしつつあり、融合しつつあるという内容でした。つま
りロシアのSFはヴェルヌの評価はともかくとして内容的に全くヴ
ェルヌ的では無く、そればかりかウェルズ的ですらないということで
す。
この時点で中国の作家の言う「科幻小説」とロシアの作家が言う「フ
ァンタースチカ」は、そもそも発祥の原点からして全く違うものであ
るということがはっきりと示されました。この点に関して、もし誰か
らも質問が出なかったら「ゲーテのファウストは科幻小説/ファンタ
ースチカだと思うか?」と聞いてやろうかと思っていました。中国の
作家は違うというと思いますが、ロシアの作家は肯定したはずです。
時間があれば,日本のSF作家代表として参加していただいた森下一
仁さんに日本の状況を説明してもらい、3国の作家で意見の交換があ
れば面白いかなとは思っていたのですが、いかんせん、これをすべて
やるにはあと3時間は必要だったと思います。たぶん、日本はアジア
にありながら、アジアの国々にあって最もヨーロッパ的であるという
点で、また違った像が比較の中で見えたのではないかと思います。
欲を言い出したらきりがありませんし、不完全な点も多かったと反
省していますが、ここまで何とかできたという点で今は満足していま
す。