名探偵ピンじろうシリーズ
10本足の怪物
第2回

 

 ――た・よ・り――

「それから、ほんの数日前。この町から50キロぐらいはなれた町で、この10本足の怪物におそわれたような人がいたんです。おなじく雪の日で、足あとがはっきりとのこっていました。殺された人は、ひっかかれたようなつめあとがありました。前の人も同じです。殺された人の名前は吉田みつおです」(またまた、素晴らしいネーミングセンス)
「田川の次は吉田か……」
「そして今日……。朝、外へでてみたら、1つの死体がむこうの方にあるんです。(むこうって、どこだよ)私は急いでその死体にかけよりました。すると、10本足の怪物の足あとがあったんです。また、つめでひっかかれたようながありました。その人は理田よしお(りだよしお)さんです。(この滅茶苦茶な名前の理由は、間もなく明らかに……)私の友人で、今日家へ遊びにくることになっていたんです」
 男は少しなみだをうかべた。
「今日も雪でしたね……」
 と、ピンじろうはいった。男はなみだをふいて、またしゃべりはじめた。
「それで、私は今までの3人の事件を整理してみたんです。そして、ある1つのことに気がついたんです。田川に吉田に理田。田川の頭文字は『た』、吉田は『よ』、理田は『り』、た・よ・り! あなたの名字じゃありませんか」(おお、そうだったのか! しかし、すべての苗字に「田」が入っていることのほうに、普通は注目すると思うのだが)
「なるほど……。とすると、今度殺されるのは頭文字が『じ』の人……」(いねーよ、そんな奴)
「便じろう……『じ』……」
「じが頭文字という人は少ないぞ。この辺でじがつくといえば……。ウーンと……。あっ! 字水みよ太!」(おったんかいっ! しかも「みよ太」って……)
 ピンじろうのとなりにいる人だ。(これ、わかりにくいけど、隣に住んでいる人って意味でしょうね)字水(じみず)みよた……。
「ようし! 雪の日は字水をずうっと見守って、殺されないようにしよう。そして犯人もとりおさえてやる!」
 ピンじろうはやる気まんまんだった。(っていうか、まず警察に行けって感じだが)

 ――10本足はダイヤがお好き?――

 3日後……。雪はふりはじめた。
 ピンじろうは字水の家へ行った。字水にわけを話し、とめてもらうことになった。
 朝からずっと、ピンじろうは字水につきっきりだった。トイレも風呂もついていくのだった。
「ピンじろうさん……ちょっと、トイレまでは入ってこないでくださいよ」
「しかし、犯人をとりおさえなければ……」
「わかりましたよ……。ついてきてください」(妥協するのが早っ!)
 こんな調子だ。
 しかし、そんなことをしている間に事件はおきた。
「リリリリーン、リリリリーン」(鈴虫ではありません。電話のベルです)
 警察からピンじろうへ電話だった。
 ピンじろうは受話器をとった。
「ハイ。便ですが……。エッ! なんですって! ……。ハイ、ハイ……。すぐ現場へ行きます」
 ピンじろうは受話器をおいた。
「どうしたんですか?」
 字水がピンじろうに聞いた。
「ダイヤ博物館のダイヤが約50個盗まれたんだよ。(約50個って、そんなアバウトな……)そのダイヤは1つ5億円というこうかなものなんだよ」(5億円のダイヤが50個! すげえな。っていうか、どんなダイヤだ?)
「5億円ですって!」
「そう……5億円……。しかも10本足の怪物が盗んだらしいんだよ」
「ええっ!」
 字水はおどろいた。それもそうだ。自分を殺そうとしているはずの10本足の怪物がダイヤを盗んだのである。
「ダイヤ博物館のまわりに足あとがあったらしい……。今からすぐ現場へ行く。君もいっしょについてきてくれ!」
 ピンじろうはそういうと、字水といっしょに自動車へのりこんだ。
「ブブーッ」(笑)
 自動車はダイヤ博物館へ、いちもくさんに走って行く。(この表現って正しい?)
「しかし、10本足の怪物がダイヤも好きだったとはな……」
 ピンじろうは運転しながらじょうだんをいった。(え? それって、ジョークなんですか?)


(挿し絵です。これ、どー見てもダイヤじゃねーだろ。よーく観察すると、必死こいてダイヤモンドを描こうとした痕跡が、背景にうっすら残ってますな)


 

この物語についての解説