第17番 アリア(パミーナ)
このオペラを代表する或いはモーツァルトの作曲した中でも最高峰とも言えるソプラノのアリアがここで歌われます。自分が永久に見捨てられたという悲しさが、烈しい息遣いを思わせる弦楽四重奏によるリズムによって高ぶり、開始早々の1オクターヴの跳躍がパミーナの絶望感を静かに表現します。分散和音に続く長いヴォカリーズ唱法のところはまさに涙がとめどもなく溢れ落ちる様を描いています。「タミーノ、この涙はあなたのために流すのよ」と歌われるときに上昇するフルートとオーボエを聴いて胸が張り裂ける思いをしない人はいないでしょう。終曲で「真の安らぎは死の中にしかない(So
wird Ruhe, so wird Ruh’ im Tode
sein)」と繰り返す時の再度のオクターヴ跳躍を敢えて淡々と歌わせるモーツァルトの音楽作りの素晴らしさを改めて思い知らされます。歌が終わった後のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロから始まる後奏は演奏する上で全曲中最も悩ましいところです。