縮刷版96年10月中旬号


【10月20日】 流行り言葉をすぐに使いたがるのは新聞の癖みたいなもので、最近だと「ストーカー」という言葉が、新聞紙上に載らない日はないくらいに使われている。こないだなんか産経新聞の看板コラム「産経抄」にも使われていた。石井秀夫(コラム筆者)侮りがたし。まあ、確かにあちこちて「ストーカーか」と思わせるよーな事件が起こっているから、これだけ使われるのも宜なるかなと思うけど、なかには事件を猟奇的・扇情的に見せるために「ストーカー」という言葉をわざわざ使う例もあって、うんざりさせられることもある。

 日刊スポーツに福島大学のキャンパスで、暴漢に襲われて重傷を負った女子大生の話が出ていた。大きな見出しが「ストーカーか 女子大生襲う」。なるほどといって小さい見出しを見ると「交際断られて犯行?」とある。えっ、ストーカーって見知らぬ他人に執拗につきまとう姿の見えない奴のことじゃなかったっけ。「交際断られ」て襲ったのなら、それは「ストーキング」の果ての犯行というよりは、振られ男の逆恨みって奴じゃないか。

 まあ、相手に気もないのに恋慕を寄せて、果てに犯行に及んだのだとしたら、ちょっと異常っていえないこともないけれど、なんでもかんでも「ストーカー」って流行り言葉に押し込めるのって、たとえ状況が伝わりやすいとしても、言葉を扱う人種にとって首を絞める行為のように思う。って、自分もそういう傾向がままあるから、人のことは言えないんだけどね。うーん、自省せねば(って、こればっかり)。

 図書館に本を返しに行く。たぶん2カ月以上借りていた。完全に貸出期間をオーバーしているんだけど、夏場から急に増えだした本の下に埋もれて、借りた本が全然見つからなくなってしまって、これまで返しに行こうにも行けなかった。徒歩でトコトコと行く途中で選挙に寄って投票。投票率は1時くらいで3割に達してたか達してなかったか。ちょっと少な過ぎやしないかと思ったけど、夜のニュースでは6割に達していなかったことを知って納得した。雨が降ったりやんだりだったことが影響した? いやいやそんなことはあるまい。やっぱり選挙って、行って行かなくてもあんまり自分に関係ないものって、みんなが思い込み始めてるんじゃないのかな。決して棄権とかいった意識的な行動じゃないと思うよ。

 図書館も閑散としている。昔新刊だった本がそろそろ開架に常駐している頃だと思ってざっと眺めて、法月綸太郎さんの「パズル崩壊」を見つけて借りる。ミステリーでは他に我孫子武丸さんの「腐蝕の街」と西澤保彦さんの「七回死んだ男」をゲット。それからミステリー関連とゆーことで、笠井潔さんの「群衆の悪魔 デュパン第四の事件」に出てきた新聞王・ジラルダンの評伝「新聞王伝説」を借り出す。返すのはいつになるのだろーか。

 帰りに本屋に寄ってソノラマ文庫の新刊を買う。山下定さんの「悪魔のようなあたし」(500円)は、なんだか「うる星やつら」と「県立地球防衛軍」と「究極超人あーる」と「月光魔術團」とその他もろもろを紙袋にいれて、ポンとけったらニャンと鳴いて飛び出して来た猫のよーな作品だった。30分は楽しめる。もう1冊の「裏平安霊異記 乱寛太鬼密行」(560円)は、神護一美さんとゆー人の初めての本。こちらは納得の面白さ。本当にデビュー作かと思えるほどのまとまりで、次作の登場が待たれる。朝日ソノラマさん、よろしく。


【10月19日】 Jリーグの名古屋グランパスエイト対浦和レッドダイヤモンズをNHKで見る。最初に失ったオウンゴールは確かに不運ではあったが、あそこまで攻め込まれてしまったということに、点を失う要因があったのだろう。今日のグランパスはいつものような中盤でのプレスがあまり効果的ではなかったようで、逆にレッズの中盤の潰しにあって、中央はもちろんサイドからもなかなか攻め込めずにいた。

 平野やオリビエの突破でかろうじて中央にボールを寄せても、そこには大魔人のブッフバルトがでいーんと構えていてボールをフォワードに渡さない。これではいかな森山小倉でも、点の取りようがない。ストイコビッチを潰した前節のバックスを恨んでも恨みきれないが、負けは負けとして次こそは是非、相手を粉砕して欲しい。

 先週は見逃した「逮捕しちゃうぞ」を見る。婦警さんがこんなに美人ばっかりだったら、僕はきっと警察官になっていただろーなー。内勤だったら仕事は9時5時だし、日曜日はだいたい休みになるし、給料だって県庁とかよりはずっといい。夜勤が増えればその分超勤手当てだって付くし、勤務中に殉職すれば2階級特進だ。ってこれはちょっと嫌だけど。でも実際のところはミニパトの婦警さんってちょっと恐そーだし、君臨するキャリアにペコペコするのもしゃくにさわるし、先輩にいじめられ市民に疎んじられ、挙げ句神経症になって拳銃で車を打ちまくるよーになってしまうのがおちだから、やっぱり警官にならなくて良かった。

 「セーラースターズ」は久しぶり。敵キャラが1人入れ替わっていたし、聖矢とうさぎのお互いの秘密がばれてしまって(どーして今まで気がつかん?)いて、ちょっとばかり話が進んでいたが、敵を倒して幹部が逃げる展開は相変わらずで、いったいなにが目的なのか、どうなった時が話の終わりなのかが、いまだにまったく見えてこない。このままだらだらいくと、別に毎回見なくたっていいやってことになって、どんどんと視聴率が下がってしまう。あと半年もつのだろーか。

 古本屋で見つけたフィリス・アイゼンシュタインの「妖魔の騎士」(井辻朱美訳、早川書房、上・下各520円)を読む。近く発売される続編「氷の城の乙女」を読む前に、是非とも読み終えておく必要があるなーと思っていたら、ふらり立ち寄った古本屋で上下セットで並んでいた。400円。初版が1983年だから、実に13年ぶりの続編刊行と相成る訳だが、これだけ間が会いても、買う読者は多いのだろー。熱烈なファン層を持つファンタジーの、そこが強みでもある。


【10月18日】 風邪らしい。みずっぱなをしゅるしゅるさせならが出勤。道中こないだ買ったアイザック・アシモフの「ゴールド−黄金−」(早川書房、2200円)を読む。エッセイの1編「書評」がおもしろいが、自分にはとても守れそうもないことばかりが、書評家に必要なこととしてあげられていて悩む。「たとえ最低の出来だと思っても、できるなら最後の一語一句まで細かく目を通すべきだ」ってのはなかなかの苦行だし、「書評家は本に付箋を貼ったりノートを取ったりして、注意深く読まなくてはならない」と言われても、付箋を打って後で読み返して、どうして付箋を打ったのかが思い出せないほどに記憶力が衰えている。結局はばーっと読んで「おもしれえ」か「つまんねえ」のどちらかを、印象として語ることしかできない。もっと訓練せねば。

 時間があったので、江東区の佐賀町にある「小山登美夫ギャラリー」(江東区佐賀1−8−31食糧ビル2F)で開かれている、村上隆さんの個展「727」展をのぞく。村上隆さんは東京芸大で博士号まで取ったすごい人。そんでもって田宮模型の兵隊人形を使ったアートやら、「DOB」というオリジナルキャラクターを使ったアートやらで知られる現代アートの異才。最近は海洋堂の協力で、等身大のフィギュアを作る「プロジェクト・ココ」でオタクたちの度肝を抜いた。今回の個展にはこの「プロジェクト・ココ」は出ていなかったけど、現在発売中の「ぴあ」に写真が出ているから、興味のある人は立ち読みでもなんでもしてくれい。223ページね。

 さて展覧会。なんでも初日には「DOB」の巨大バルーンが中庭を飾ったそーだけど、今は撤去されていた。それでも会場内に飾られた最大の作品には、「信貴山縁起絵巻」にある「雲に乗った神様」かなんかのモチーフを借りて、神様の代わりに「DOB」が乗ってる絵が飾られていた。さすがに日本画出身として初めて博士号を取った人だけあって、アクリルの絵ながら日本画の顔料で書いたような微妙な色合いとゆーか塗り具合を出していた。ほかには「ヘリポート」のてっぺん部分が白い台の上に載せられて、4隅の警告ランプがチカチカと点滅している作品とか、やっぱり日本の絵巻から題を取った、茶碗がぴゅーんと飛んでる場面を抜き出して描いた作品とかを展示中。日本のエッチアニメのキャラクターをカリカチュアライズしたよーな「ヒロポンちゃん」のイラストが描かれたTシャツが欲しかったけど、7000円もするんじゃなー。着ていくのも苦労しそーだしなー。でも欲しいなー。

 同じ建物の1階にある「佐賀町カフェ」では、村上隆さんがプロデュース&キュレーションを担当した展覧会も開かれていて、まだ開店前のギャラリーに図々しく入り込んで(とゆーか最初は知らなくって)、新人アーティストの「チョンピロスポーン」な作品を見せてもらった。村上隆さんが日本のアニメの動画部分を抜き出した絵を前に展示していたのを見たことがあるけれど、この展覧会にもロリコン漫画のキャラクターだけを抜き出したよーな「1年A組エミリちゃん」(岩本正勝さん)とゆー作品があって、得体の知れないパワーを出していた。

 ほかには「さるマン」の竹熊健太郎さんの作品とか、クワガタのブリーディングをアートにしてしまった前田健さんの作品「ドリーミンカラーBOX」とか、とにかくお上品な官営美術館では絶対に見ることの出来ない「チンピョロなアート」を堪能することができた。「727」は火曜から金曜が11時から18時、土曜と日曜が13時から18時、月曜・祝日は休み。1階の「ピコピコショウ」は13時からだったかな。26日には18時から、SF評論家の小谷真理さんと大学教授の松井みどりさんと出演して、「What’sフェミニズム」のテーマでトークショウを行うそーだから、時間(とお金)があったらのぞいてみたい気がしてる。

 会社に戻って「K1−スターウォーズ」を見ながら仕事。女子プロレスしかなかったフジテレビが、正道会館の誘いに乗って、4年をかけて客の入るイベントに仕立て上げた格闘技イベント「K−1」だけに、サクラっぽい芸能人集団はのぞいても、結構な人数が入っていた。佐竹雅昭の試合は、最後のラウンドだけ迫力があったけど、いまいち佐竹に迫力がなくって、結果的にはアンディ・フグの一方的な判定勝ちになってしまった。それにしても年に1回の「グランプリ」の合間に、「リベンジ」だとか「スターウォーズ」だとか、いろんな企画を挟むもんだ。さすがに年1回では間がもたないんだろーね。かといってプロレスみたく週に1回なんてとても無理だし。やっぱ特番にしかならないのか。


【10月17日】 おもちゃのタカラから神田うの人形の資料が届く。手足や股関節や首や腰がコキコキと動くタイプの人形に、神田うのがデザインした衣裳を着せた商品で、人形自体も細い手足と長い髪とくりくりした目が神田うのそっくりに仕上がっている。4000円はちょっと高いが、1つ買い求めて、神田うのがボケた答えを言うたびに折檻したり、手足を折り曲げて恥ずかしい格好をさせて鬱憤をはらすことができるかもしれないなーと思い、なんだかとても欲しくなる。

 17日はかの「サンタ・フェ」の朝日出版社から、神田うのの写真集が発売された日で、タカラでも朝日出版社と共同企画で、写真集に神田うの人形をセットにして、限定1000部で発売しよーとしている。値段は送料込みで11000円。限定版だけに、単体では神田うのデザインに衣裳を着ていた人形が、特別版では写真集と同じプロのデザイナーがデザインした衣裳を着ることになっているのだとか。なんだそれだけってことにもなるんだろーけど、やっぱり「限定版」って言葉には悪魔的な魅力があるからなー。明日現金書留を出しに行こーか。

 田中芳樹さんが講談社文庫25周年を記念して書き下ろした「魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿」(540円)を買ってよむ。27歳の美貌のキャリア警察官が傍若無人に振る舞って難事件を次々と解決しているなんざー、どこかで聞いた設定や、どこかで見たようなキャラクターを張り合わせただけの安易な作品じゃねーかと思わないこともないのだが、そこは稀代の物語師、ちゃんとまとまったわくわくするよーな痛快娯楽小説に仕立て上げている。イラストは垣野内成美さん。かわいい絵で知られる人だけど、高ビーなキャリア警官ってイメージと、ちょっと違うよーな気もする。顔つきが優しすぎる。このあたりは慣れみたいなものだから、今は違和感があっても、続刊、続々刊と進むうちに「垣野内成美じゃなきゃダメ!」ってなことになるんだろーけれど。

 丸善に行って「澁澤龍彦翻訳全集」を予約して、ついでに既発の第1巻を買って帰る。7004円(税込み)とは高すぎるよーな気がするが、前の「澁澤龍彦全集」を揃えた以上は、こっちも揃えないと心残りになりそーなので、やっぱり買わずにはいられない。前と同じ菊池信義さんの装丁、ブーブー紙を外箱に巻き付けて本自体にも付けていて、前の「澁澤龍彦全集」と統一感を出している。今度は本のクロスを赤にしていて、前の金っぽい銀のよーなクロスとの対比が美しい。

 この全集は、別に予約しなくても買えるんだけど、予約しておかないとお金が心細くなった月をスキップしてしまって、結局途中で買わなくなってしまう恐れがある。「海野十三全集」がそうなった実例で、4巻あたりで止まったまま、自宅の本棚で中途半端な姿をさらしている。荒木経惟全集はそれでも、値段が比較的安いこともあって、予約じゃなくてもずっと買い続いている。結局は作者への思い入れの度合いで、海野十三にはそれほど深い感情を抱けなかったのかもしれない。しかし両澁澤全集、この狭い部屋にどうやって置いておく?


【10月16日】 15日付読売新聞東京版のマルチ読書面に、かの「コズミック 世紀末探偵神話」(清涼院流水、講談社、1400円)の書評が出ていて驚く。もしかしたら東京版だけの掲載なのかもしれないので、簡単に説明すると、「エンターテインメント」本を紹介するコーナーの「エンターテインメント」の回で、かの鏡明さんが「コズミック」を取り上げていて、「驚くべき結末!というのは、だいたいにおいて、ただのキャッチフレーズである。(中略)ところが、この本に限っては、本当い驚いた」と述べている。最後も「新人だというこの作者、次作がでたら、私は絶対に読む。どう驚かせてくれるか、今から楽しみだ」と結んでいるから、どうやら誉めているように感じる。

 誉めてはいても実は誉め殺し的な意図をもった文章だったりするケースがないでもないから、「鏡さんも誉めているぞーっ」てな具合に受けとめていいのかどうか逡巡しているが、「本の雑誌」での連載を読んでいる限り、そーいったひねた文章を書く人ではなさそーなので、ここは素直に受けとめたい。批判している文章だったらそのまま受けとめる癖に、誉めている文章を素直に信じないとゆーのは新聞記者の悪い癖みたいなもので、取材なんかで相手と腹をさぐり合うよーなことばかりしているから、いかにもな誉め言葉には裏があって、実は遠回しに批判しているなどとゆーとんでもない誤解をしてしまい、ありもしない裏側を探るよーな、さもしい真似をしてしまう。自省せねばならぬ。

 アイザック・アシモフの新刊「ゴールド」(早川書房、2200円)を買う。実は「ロボット」シリーズも「ファウンデーション」シリーズもほとんど読んだことがないのだが、「ゴールド」には「ロボット」シリーズの短編のほかに、「サイエンス・フィクションについて」「SF小説作法」とゆーエッセイが収録されていて、こちらを読みたくて買ってしまった。つい先だって、P・K・ディックがSFや作品について語ったエッセイを収めた「フィリップ・K・ディックのすべて」を読み終えたばかりなので、比べてみると違いが解っておもしろいかもしれない。もっとも読み残しが「心臓を貫かれて」ほか多数あるので、とりかかれるのは週末から来週にかけてになりそー。

 ついにとゆーかとうとうとゆーか、ハードディスクとメモリーがどーにも足らなくなって、1ギガのハードディスクと16メガのメモリーを買ってしまう。東京駅のほぼ真下にある「アルファランド」でメルコのハードディスクを34000円、アイ・オー・データのメモリーを16000円で購入。マック貧乏の道をまっしぐらに転げ落ちていく。家に帰ってさっそくメモリーを増設して機器を接続。調子が悪かった使用中のマックからアプリケーションをごそっと外部のディスクに移し、内蔵ハードディスクを再フォーマットして、もう1度外部のハードディスクから内蔵ハードディスクにアプリケーションを移し直す。デスクトップに出ていた得体の知れないアイコン(クリックしてもゴミ箱に捨てても「そんなもんないから動かせん」と警告が出る)がすぱっと消えて、サクサク動くよーになった。なんだかうれしい。

 でもやがて来る支払いのことを考えると胃が重く頭が痛くなって仕方がない。頼みのアルバイトも今月いっぱいで終了し、来月からは給料だけが唯一の収入となってしまう。「マスコミなんでしょ。十分じゃん」とは新聞業界の苛烈な条件格差を知らない人の物言い。築地魚市場にある某社を筆頭に、箱根駅伝復路ゴール横にある新聞社とか、経団連会館横の経済が得意な新聞社だったら、それこそ給料袋が立つ(現金だったら、ってことね)よーな収入を得ているはずだ。箱根駅伝復路ゴール横とか経団連会館横とかと同じ大手町にありながら、その差はまさに月とゼニガメ。天と地下1万メートルほどの開きが厳として存在するのである。いっそ「じゃマール」に「よろず原稿書きます」とでも個人広告を出してみよーか。


【10月15日】 富士通に行く。部屋にはいると取材相手とは別に折り畳み椅子の上に狸の縫いぐるみが鎮座していた。取材相手に名刺を差し出した後で、お狸様にを指して「この方は」と聞くと、広報の人が「ワープロの宣伝に出ているお狸様です。どうぞお連れ帰り下さい」と言う。せっかくなので、別にもらった「フィンフィン」(鳥海豚)といっしょに連れて帰って、会社の守り神にする。これで当分は会社も安泰だろう。しかしどーして、わざわざお狸様を取材に同席させていたのだろー。よく解らない会社だ。富士通って。

 大日本印刷も参加しているとゆーので、ホテルオークラで開かれた「ディレクTV」の発表会見に行く。アメリカのディレクTVと直接パートナーを組むのは、ビデオやCDレンタル最大手のカルチュア・コンビニエンス・クラブだが、ほかに出資しているのが松下電器産業、三菱商事、三菱電機、宇宙通信そして大日本印刷と業界の大所ばかり。おまけにアメリカの会社らしく、プロモーションがうまいから、スポーツでも映画でもニュースでも、とにかく素晴らしい番組が海を越えてみられるよーになるんだとばかりの宣伝用ビデオをガンガンと流す。「だからパーフェクTVに入るのは待った方がいいですよ」とゆー宇宙通信の人の言葉にも、思わず納得してしまいそーになる。

 アメリカで獲得している200万世帯と、最近サービスの始まった中南米の市場に向けて、作品を流すチャンスがあるよーに見せているところも、とりあえずは日本向けでしかない「パーフェクTV」に、番組を供給するより有利ですよと、日本側のコンテンツプロバイダーに思わせる要因になっている。世の中そんなにうまく行くはずはないのだが、場の雰囲気だけはいかにも成功しそうな自身に満ちていた。しかし問題は、何といっても来年6月に衛星がちゃんと上がるかどーかで、これがぶっとんでしまったら、大きくスケジュールも狂ってしまう。星に願いを。

 「コンピュサーブ」の偉い人が講演をするとゆーので東京プリンスホテルに行く。英語の話を聞いているとだんだんと眠くなってしまい、懇親パーティーをパスして早めに帰る。帰って「開運なんでも鑑定団」を見ていると、かの唐沢俊一さんが潮健児お手製の「地獄大使のマスク」及び「潮健児イラスト入り洗面器」を持って現れた。ホンモノじゃなくってレプリカとゆーか、遊園地の後アトラクション用ってところが哀しいが、それでも値段は15万円になった。さすが地獄大使。死神博士のマントとどっちが高いだろーか。

 コクラノミコンで収録したとゆー「SF大会出張鑑定」。期待していたほどには大物が出ない。「オネアミスの翼」の絵コンテは山賀さんのサインが入っていてもたったの25000円、「宇宙戦艦ヤマト」の木製キットも新品価格28000円でプレミアが付いて5万円。個人個人の思い入れの割には値段が延びない。宇宙関連の評論家、江藤巌さんの奥さんが持ってきたスペースシャトルの耐熱ブロック(未使用、破損だらけ)と同じ値段ってんだからなー。さすがに手塚治虫さんは高かった。B紙に描いてもらったブラックジャックが折り曲げ傷アリなのに35万円。神様はやはり神様だった。大森望さん所蔵とゆー宮崎駿直筆「惑星カレスの魔女」表紙イラストサイン入りが幾らになるのか、鑑定して欲しかったよーな気がする。100万くらいか。

 遠野一実さんの読み切り短編が載っていると教えられて「コーラススペシャル」(集英社)を買う。「螺旋宮」とゆータイトルの60ページ読み切りは、タイトルから想定されたとーり「双晶宮」絡みのショートストーリーだった。本編を読んでいなくてもいちおー話は通じるが、読んでいたらなお楽しめる。たけだ亜稀さんとゆー人の「羊の数え方」が絵柄もストーリーも気に入った。単行本は出ている人なのだろーか。村上春樹さん訳とゆーマイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて」(文藝春秋)を読み始めて、眠くなったので寝る。アイザック・ギルモアは「サイボーグ009」の博士の名前だったと、今急に思い出した。


【10月14日】 新聞休刊日で一般紙の朝刊が出ないのを後目に、スポーツ新聞は全紙が新聞を発行していて、それぞれに新しいニュースを載せて頑張っている。スポーツニッポンの芸能面の記事はフジサンケイグループの末端に籍を置く人間としてちょっと見落とせない記事。なんでもポニーキャニオンの役員全員が、業績不振の責任をとって辞表を提出して受理されたのだとか。役員の辞表を受理した役員はだれなんだろーかと頭をかしげるが解らない。それはともかく某社1人勝ちのレコード業界にあって、前に新譜の発売を大幅に縮小したソニー・ミュージックエンタテインメントといい、金に糸目をつけず邦楽のアーティストを集めている外資系のレコード会社といい、そして今回のポニーキャニオンといい、どこも厳しい状況を脱しよーと必死になっている様がうかがえる。

 そうこうしているうちに、さすがグループ会社とゆーか、新しい役員人事が回って来て、見ると現在の社長は新しい体制でも代表取締役として残っている。社長とか会長とかいった称号はつかないけれど、代表権を持っているとゆーこには代わりがない。新社長もニッポン放送出身の常務さんだったかの昇格。ポーカーの全取り替えみたく、あるいは政権交代時の大臣のすげ替えみたく、すべての役員をぞろりんと総入れ替えする訳にはいかないよーだ。

 会社にいながらテレビ朝日で午後8時から始まった新しいドラマを見る。朝の「やじウマワイド」に番宣で来ていた佐藤藍子がでっかい目玉とでっかい耳をぎょろぎょろひくひくさせながら、精いっぱいの自然な演技をしていて楽しめた。遠くから絵をみていただけだから、どんなセリフだったかは聞き取れなかったけど、朝の番宣出演でのしゃべりを聞いている限りでは、そんなに抜けてはいなかったよーに思う。いずれにしてもウラが強力な時間帯には変わりがないので、めげずに頑張って戴きたい。「イグアナの娘」みたく化ける可能性もなきにしもあらず、ってとこか。

 11月に出る東芝EMIの新しいCD−ROMの話を書いたり、12月い出るブエナビスタの新しいビデオの話を書いたりと、とりたてて忙しくもないが決して暇でもない1日。夕方になって余所から入ってきたニュースを見ていると、かのネットワン・システムズが店頭公開して、初値が1600万円だったとゆー記事があって腰が抜けた。5万円額面だから、50円額面換算では16000円とゆーことになるが、それでも相当に高い。社員なんかで持っている人がいたら、一気に超特大の大金持ちになったことになる。羨ましいとしか言いようがない。こればっかりは、こっそり分けてくれ、とも言えないし。


【10月13日】 休みを利用して衣替えに取りかかる。押入から冬服を取り出して夏服と入れ換えるだけと簡単なものではあるのだが、何年か前に夏場を過ぎて冬服を取り出したところ、湿気でカビが生えて大変だったことがあるので、「タンスにゴン」を使い古しの「ムシューダ」と取り替え、新しい湿気取りを3コばかり押入に放り込んでおく。古い湿気取りは取り替えラインを超えて水が溜まってチャポチャポいってる。いったどこからこれほどまでの湿気が集まってくるのだろーか。室内で汗をかくよーなこと、ぜんぜんやってないのに。1人だし。(2人だと湿気が出るのか? どーしてだ?)

 フィルムをプリントしてもらっている時間を利用して、徒歩で10分ほどのところにある「ブックオフ」をチェックしに行く。たまに行くと新しい中古本が増えていて、結構な掘り出し物に巡り会うことが出来るので、1カ月に1回程度のチェックは欠かせない。歩いている横を選挙カーが大音声で追い越していった。美人が手を振っていたが美人が手を振ってくれたからって投票してもらえると今でもみんな思っているのだろーか。超美人がハイレグで手を振ってくれるなら考えてもいーかなー。水着だったらもっといーけど、もー秋だし、許してやろー。

 ブックオフでは「おたんこナース」の3巻を発見したが、ちょと目を離しているすきに奪われてしまった。仕方がないので100均の棚を漁っていると、なんとあぽさんの「ワンカラー物語」(白夜コミックス)を発見した。あぽとはかがみ・あきらの別名で、「ワインカラー物語」はかの幻の「漫画ブリッコ」に連載された半自伝的漫画を集めた作品集。3版だったので、実家にいた時に買った初版には入っていなかった、著者が亡くなられたとのコメントが入っていた。

 それにしてもこのブックオフ、前に「サマースキャンダル」を買って次に「レディ・キッド&ベビイ・ボウイ」と「さよならカーマイン」をいずれも100均で買った。きっと誰かがまとめて売り払ったに違いない。とりあえず救出しておくが、実家の蔵書を誰かが内緒で売り払っていない限り重複保有になってしまうので、いずれ「レディ・キッド&ベビイ・ボウイ」「さよならカーマイン」とまとめて「かがみ・あきら復活計画」のプロモーションに利用しよー。そんな計画いつ動くんだって?

 ほかに大原まり子さん原作、岡崎京子さん漫画の「マジック・ポイント」(祥伝社)と西炯子さんの「ラブ・ソング」(小学館)を同じく100均で購入。成田美奈子さんの「エイリアン通り」(白泉社)全8巻800円にもぐぐっと来たが、荷物があったので次回に回す。それにしても岡崎さん、交通事故から立ち直ったとゆー話をついぞ聞かない。亡くなられたとゆー話もきかないから、今でも意識不明で集中治療室での治療が続いているのだろーか。だとしたら一刻も早い回復を心より祈念いたします。

 サッカーは日本代表対チュニジアの試合。前半早々と1点を取って、以後も怒涛の攻撃が続いていたので3対0、よければ5対1くらいで圧倒できるんじゃないだろーかと思って見ていたら、やっぱりとゆーか案の定とゆーか、詰めきれないまま枠にいかないシュートを放つは、決定的なチャンスをことごとく外すはで、結局最初の1点しかとれなかった。

 回数こそ少なかったけど、チュニジアの責め上がるパターンは無駄がなく、3回くらいのタッチであっとゆーまにゴール前までに持っていく。日本といえばバックパスを織りまぜながらようやっとサイド攻撃へと発展させるのに、センタリングが上がらない、フォワードにうまく合わないで得点へと結びつかない。いかんなー。


【10月12日】 スピードこそがネットワークの良いところ。ってなもんで、今週発売された菅浩江さんの「鬼女の都」(祥伝社、1800円)に対する感想に、あちらこちらでお目にかかれるようになったが、思いのほか評判が芳しくなく、大絶賛したくせに、生来の優柔不断がここでも働いて、どうにも居心地の悪い感じを味わっている。SF出身者の書く作品を手放しで誉める自分こそが、なれ合い内輪誉めの該当者なのだとゆー気にもなって来るが、いったん言ったことを覆えすのもつまらないので、好きだったら好きなんだいと、ここは重ねて強弁する。なんてったってあの「コズミック 世紀末探偵神話」(清涼院流水、講談社、1400円)だって誉めてしまうリウイチ様だ。紙に字が書いてありさえすれば、チラシだって誉めるぞー。

 その「コズミック」の唯一ともいえる書評が「アニメージュ」の11月号に掲載中。筆者はもちろん推薦者の大森望さん。推薦した以上は最後まで評価の対象にするって行動倫理には心から敬服する。いったん「営業」した以上は、最後まで「営業」し続けていただきたい。でないと日本中からあの超分厚い本が送りつけられて来て、積み上げれば家が一見建つくらいになっちゃうから。何でも大森さん、今月発売の「小説すばる」にも、やっぱり「コズミック」に付いて書いているそーだから、興味のある人は必見ね。

 急にボオドレールが読みたくなって岩波文庫から出ている「悪の花」(620円)を買う。はじめてボオドレールの詩を読んで、なるほどこーゆー詩を書く人だったんだーと今さらながらに仏文する。この前は急にエドガア・アラン・ポオが読みたくなって新潮文庫から出ている「モルグ街の殺人事件」(360円)を買ったのに、電車の中で落としてしまった。カール・マルクスの「共産党宣言」も読んでみたいとゆー気にもなっている。理由が知りたい人は是非笠井潔さんの「群衆の悪魔 デュパン第四の事件」(講談社、2000円)を読んで下さい。きっとバルザックが読みたくなるはずです。彼らと同時代じゃないけれど、鹿島茂さんとヴァルター・ベンヤミンも追加ね。

 月曜日が休刊日なのに会社に行って電話番。昼から夕方までをジャストシステムから発売されたばかりの「フィリップ・K・ディックのすべて」(ローレンス・スーチン編、2500円)を読んで過ごす。エッセイや創作メモなんかをまとめた本で、ディック自身が構想した「アンドロイドは伝記羊の夢を見るか」映画化にあたってのノートが入っていて興味深い。後に別の人の構想によって映画化された「ブレードランナー」では、リック・デッカードをハリソン・フォードが演じていたが、ディック自身の構想ではグレゴリー・ペックに演らせたかったそーな。なんか凄くよく解る。廃墟となったアパートで人形たちと暮らしていたイジドア訳はディーン・ストックウェルとあるが、どんな役者か全然知らない。ショーン・ヤング演じたレイチェルはディック案ではグレース・スリック。やっぱり知らないなー。

 「ブレードランナー」はK・W・ジーターによって続編が書かれて映画化も決定とあるけれど、前作と同じキャストで製作してくれる保証はまったくない(とゆーかみんな歳くってできない)から、この際ディックのイメージも踏まえて、新しいキャスティングを行ってみるのも悪くない。ロイ・バティだけはルトガー・ハウアーにして欲しいけど。ちなみにディックのメモには、バティについての言及はなかったから、別の人を選ぶにしても、やっぱりハウアーのイメージが継承されるんだろーな。


【10月11日】 新宿高島屋に行く。新宿駅の南口を出ててくてくてくてくてくてくてくてく歩いてようやく到着。そこからさらにてくてくてくてくてくてくてくてく歩いて紀伊国屋書店へと向かう。さて何歩歩いたでしょうか。大きな本屋というから期待していたが、大きいというだけでそこいらの書店に比べて何か特徴があるわけでもなく、在庫点数も決して多くない。文芸書のコーナーがとにかく小さすぎて、わざわざ本を探しに行こうとゆー気になれない。マルチメディアのコーナーも、在庫点数こそ紀伊国屋本店裏のアドホックに比べて多いものの、値段は高いし売れ筋のエンターテインメント・タイトルなんて置いてないから、やっぱり無理に買いにいこうとゆー気にならない。

 唯一1階のコミックのコーナーだけが本店を上回ってい在庫点数が多く、品揃えにも結構こだわりが感じられた。同人誌なんかを平台に置いてるのって、老舗の書店にしてはなかなかの英断だと思う。でも新宿にはその何100倍も濃いコミックの専門店が、駅の南口から徒歩3分の場所にあるから、やっぱり無理には行かないだろーな。可能性があるとしたら、代々木あたりの予備校生や専門学校生が来てくれるかどーかってところで、その当たりを吸収できるよーな品揃えとかイベントとかを定期的に打っていく必要があるんじゃないだろーか。新宿伊勢丹でも紀伊国屋書店からだったら、実際JR代々木駅の方が近いしね。

 新聞で昨日の「JOMO CUP」の記事を読む。一般紙はおおむねというかほとんどすべて、外国人チームと日本チームの技術力の圧倒的な差を取り上げていて、MVPをとったドゥンガや寝ぼけ眼で素晴らしいセンタリングを上げたストイコビッチを褒め称えていた。しかし日刊スポーツは前園のシュートを写真入りで紹介して「よくやった」ってな具合でヒーローに仕立て上げている。たしかにシュート自体は素晴らしかったし勢いもあったけど、それまでほとんど活躍していなかったことを考えると、ちょっと持ち上げすぎなんじゃないかと思う。こーゆー報道って依怙贔屓なんじゃないかって思う。どーしてストイコビッチをもっともっと取り上げないんじゃい、ってこれもやっぱり依怙贔屓的な意見なんだけど、支持者は絶対に多いぞ。

 時間の合間を縫ってセゾン美術館で「ル・コルビュジュ展」を見る。建築家で画家で彫刻家でデザイナーとゆー、マルチアーティストのル・コルビュジュの業績全般を振り返る大型展。会場内には絵画あり建築模型あり彫刻作品あり寝椅子ありと、種々雑多なコルビュジュ作品が並べられていた。目立ったのはやっぱり「ロンシャン礼拝堂」に関連した展示コーナー。壁にロンシャン礼拝堂の内部と同じよーなステンドガラス付きの小窓を配置して、向こうから蛍光灯を当てて礼拝堂の中から見た光の雰囲気を出そーとしてた。たぶん現実の雰囲気の1%も醸し出してはいないんだろーけど、それをやろーと思ったアイディアは買う。しかし図録が4017円(税込み)ってのはちょっと高すぎる。それに重すぎる。出版社が刊行する図録だったら著作権とかが絡んでもっともっと高くなってことは知ってはいても、4000円を超えるってのはなー。


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