縮刷版96年2月号


【2月29日】 フジサンケイグループでは3月1日から、展覧会を1つ、有楽町マリオン・ミュージアムで開催する。米シアトル在住の女流画家、イレーヌ・メイヤーの絵を並べて、それに音楽やCGなんかを付けて、多角的に見せようっていう、過去にあまり類を見ない展覧会で、今日、その内覧会があった。
 4時に行ったら人、人、人の列で、さすがフジテレビ、あちこちに声をかけて人を集めたもんだとまず感心。皇室から高円宮殿下も出席されていて、ほかにも高島忠夫とか、俵万智だとか芸能人、文化人もたくさん来ていたようだけど、仕事で行ったんで、ゆっくり見ている暇がなかった。アイドルはいなかった。
 メイヤーさんには去年の12にインタビューして、記事も書いた。インタビューでは、絵だけを見せるのが普通の展覧会に、音楽やCGを付けるのは邪道じゃない、って聞いたんだけど、失礼な質問だったのにも関わらず(通訳がうまく翻訳してくれたのかな)、「今までの展覧会は、絵を壁にぶら下げるくらいのことしかしていません。これだけテクノロジーが進んだのだから、いい加減、新しいことに挑戦してみてもいいのでは。私は平面の絵を描いている時でも、いつも三次元を考えながら描いています。テクノロジーを使えば、描いている時に頭の中にある物に近い表現ができます」と、にこやかに答えてくれた。いい人だ。
 夜はニフティの勉強会。岡田社長以下、お歴々が出席してマスコミ関係者の意見を伺いたいって内容だけど、出席者の中で一番マイナーな新聞社は、目立たず控えめに時間を過ごす。授業中に質問が当てられないように、先生から目をそらして、かといってうつ伏せにならない、ぎりぎりの線を狙うって感じ。久しぶりだなあ、こういうのって。

【2月28日】 水曜日の朝はムーミンで始まる、ってのは東京近郊に住んでいる人だけに解るネタ。テレビ東京は水曜朝から、アニメづくしのプログラムを組んでいるのだ。ホントはムーミンの前に、赤ずきんチャチャも再放送されてんだけど、半分寝ぼけて見てるんで、よく覚えていない。
 でムーミン。かつてフジテレビで放映されてたバージョンじゃなくって、何年か前にテレビ東京で放映されたバージョン。ノンノンもスノーク(ゆーなれば!)もひれ足の署長さんもいなくて、代わりにフローレンスって名前の女ムーミンが出てる。ストーリーは全体にほんわかした雰囲気で、日常的なシチュエーションが繰り広げられる、ほかには余りない種類のアニメーション。でも何度か繰り返して見ていると、その雰囲気に取り込まれてしまって、毎週見るようになってしまうのです。
 仕事はいつも通りに大過なく無事是名馬の平穏な日々。あっと、水曜日は「新世紀エヴァンゲリオン」の放映日だった。でも仕事中で見られず、終わりの部分だけをラジオで聞いたら、なんだかミューの精神攻撃ってな雰囲気のドラマが展開されていた。バックの音楽も格調高くて、いったいどんな絵なんだと気になって仕方なかった。ビデオが欲しい。でも買えない。私は悲しい

【2月27日】 ネットスケープ2・0を導入して、自分のホームページを見たら、全然リンクがうまくいかない。調べて見たら、htmlが少し足りていなかった。そう、「"」がたった1コ、入っていなかっただけで、リンクは無茶苦茶、書いた文章も重なってしまって、全然読み出せない。仕方がないので、これまでにアップしたページをすべて書き換えて、いちいちアップしなおす。かかった時間はおよそ1時間。参ったなあ。
 会社ではもっぱら、木曜日付けに掲載する記事の原稿書き。たった100行の記事を書くのに、3時間もかかってしまった。頭が冴えない、目がすわらない。お腹の具合は良くなったのだけど、コーヒーはあまりゴブゴブとは飲めず、頭の煙がなかなか取れない。
 「新世紀エヴァンゲリオン」菌は、いよいよ脳まで回って来た。秋葉原に行って、評判の「コレクターズ・ディスク・VOL1」を探すと、ヤマギワのソフトショップに山のように積んであった。なんだい、売り切れだっていってたじゃないか。で、家に帰ってマックにかけると、画像が山のように出るわ出るわ。でもメモリーが足りず開かない。メモリー買い足す金はなし。持ち腐れた宝がまた1枚増えた。

【2月26日】 あれだけ土砂降りの中を走り回ったのに、風邪ひとつひかないなんて、何と頑健な体なんだろう。文学青年(中年)ならそれらしく、肋骨の浮かぶ胸を浴衣の襟元から覗かせながら、日差しが差し込むサナトリウムのベッドの上で、芥川か太宰でも読んでいたいのだけれど、これでは当分かないそうもない。持病がストレスから来る胃炎に腸炎、姿勢の悪さから来る背痛なんて、やっぱカッコわりーよな。
 仕事をしてると編集局長の呼び声。局長の脇に、人の良さそうなおじさんがいて、名刺をもらうと、産経新聞発行のオピニオン誌「正論」の編集長、大島信三さんだった。いや驚いた驚いた。名刺といっしょに、取材して欲しいといって、資料をもらい、その日のうちに五反田のソニーまで出向く。時間が少しあったので、大崎駅のO美術館によって「ひとがた・カラクリ・ロボット展」を駆け足で見る。人間そっくりのマネキンがたくさん並んでいたけれど、あまり欲しいのはなかった。もらったからって置場所なんてないんだけど。
 本を買った。2冊。松尾由美さんの「ピピネラ」は、結婚未経験者の自分には理解の難しい小説だけど、欲望を抑圧して繰らす人間としての生活の息苦しさ、そこから抜け出たくて抜け出すことのできない、苛立ちのような物を感じた。もう1冊は「澁澤龍彦を語る」。種村季弘氏や出口裕弘氏らによる鼎談集で、これを読んでから澁澤龍彦全集を読むと、1読した時とは違った発見を、得られるかもしれない。

【2月25日】 サッカーだサッカーだサッカーだ。サッカーの試合ができるので、喜びいさんで会場の葛西までいくが誰もいない。集まりが悪いのは相変わらずだけど、何だか天気まで悪くなって来て、このまま流れ解散かと思いきや、相手が若手で乗り気でやる気満々。仕方がないので雨の中、25分ハーフの試合を2試合やった。
 寒い寒い寒い。雨だけならまだしも途中から風が吹いて来た。長袖を下に着ていたからよかったけど、着てない人は腕が氷の棒になってしまったようだった。2試合やって最初の試合は1点差負け、後の試合は1点差勝ち。グラウンドコンディションが悪すぎて、パスは回らずキックは飛ばず、パスが主体の相手にはいささか分が悪かったみたい。こっちはほんと、タテパスにサイド展開にセンタリングといった、長いボールで相手陣に深く攻め入って、こぼれたところをシュートでゲットという、恥ずかしいけど理にかなった攻めが効いた。
 でも風邪ひいたみたい。胸が苦しい頭が痛い。休みたいけど休めないのが新聞記者の性なので、多分明日は会社に行く。でも行って何しよう。

【2月24日】 表の日本工業新聞が主催しているMac World Expo/Tokyoは今日が最終日。様子を見に行かんと欲し、朝から幕張まで出向くことにする。船橋に住んでるから、幕張なんてものの30分もあれば着いてしまうのが嬉しい。事務局のバッジがあれば、天下御免で入れるので楽しい。
 会場は凄い人、人、人の波。CD−ROM会社6社が合同で出展したブース「パブリッシャーズ・フロント」も、CD−ROM売場から人があふれて、万引き予防の警報機がビービー鳴っていた。ボイジャーの萩野社長、デジタローグの江並CEO、インフォシティの岩浪社長ら蒼々たるメンバーが、店頭で法被やジャンパーやジーパン姿で呼び込みをやっている姿に、CD−ROM業界の発展には、知力のみならず体力も要するものなのだと教えられる。
 インターネット上の日記「ハイパーダイアリー」界のアイドル、キノトロープの河合あみこさんの姿を見掛ける。先だっての「不連続日記」で予告されていたとおりに、セーラームーンのほたるちゃんの格好で立っていた。髪型もそっくり。よくぞここまでと感嘆する。ゲリラ的に行った同人誌の販売は成功したのだろうか。何せこちらは、主催者で事務局のバッジを付けてたから、迂闊に近寄れば、敵だと思われて撃退されてしまう恐れがある。遠巻きに様子を見ていたら、どんどんと人が集まって来て、結構繁盛している様子だった。
 土曜日は「イサミ」見て「セーラームーン」見て「スラムダンク」見てアルゼンチン・サッカー見て寝るのが日課。日課どおりに1日は暮れた。明日は夜から葛西でサッカーの練習試合。人数が集まりそうもなく、誰かいないものかと思案する。

【2月23日】 唐突に「新世紀エヴァンゲリオン」に目覚め、本屋に「フィルムブック」を買いに行く。水曜日午後6時半という、勤め人にはおよそ視聴が不可能な時間帯に放映されているアニメが、SFやミステリーやファンタジーの人達を巻き込んで、猛烈な勢いでファンを増やしていると聞いてはいたのだが、信じられないことに今時ビデオがなく、かつ流行り物に背を向ける天の邪鬼の性格が災いして、今まで無関心を決め込んでいた。
 しかしもう我慢が出来ない。先だって放映された回を見て、設定のあまりの濃さに頭をやられた。感染した。ビデオは買えない。LDも買えない。かくてフィルムブックを買う羽目となった。感染の度合いが高まった今、ビデオをかうべきかフィルムブックのリリースを待つべきか、毛が抜けるほどの深い悩みに捕らわれている。(毛は放っておいても抜けていくんだけどね)。
 金曜日は理不尽にも、朝8時半に会社に行かなくてはならない。若手の研修があるからだ。30超えて若手もないもんだけれど、何せ人の少ない会社なので、今でも下から数えた方が早い暗いの若手なのだ。金曜日朝8時半といえば、テレビ東京で「バレエ誕生」が放映されていて、オープニングだけを会社で見て、いつも雅やかな気持ちに浸っている。バレエをいえばプリマドンナの草刈民代さんが、映画監督の周防正行さんに取られてしまった。何ということだ。映画の発表会見では、かけらもそんな素振りはなかったのに。アイドルや美人がどんどん結婚していってしまふ。

【2月22日】 荒木経惟写真全集の第3巻が出ているときいて、本屋に立ち寄る。あった。紫色の装幀で、亡くなられた陽子さんが黒い服を来て立っている。題名は「陽子」。シリーズ全20巻の中にあって、もっとも私的な写真集だろう。ページをめくる度に、哀しくて切なくて、寂しい気持ちにさせられる。けれども、陽子さんの死後から、今に至るアラーキーの精力的な活動が、頭に思い浮かぶに至って、寂しい気持ちに写真集によって蓋ができる、アラーキーの強さに感嘆させられる。
 「WIRED」4月号も発売中。表紙の太ったロック・ミュージシャンを見て、誰だろうと思い、編集後記を読んで唖然とした。ミスター・インターネットの世を忍ぶ仮の姿であったとは。まったくよーやるぜ。でも今、こうしてインターネットで遊べるのも、彼あっての物種だからなあ。まったくよーやってくれたぜ。
 会社に行くと「赤字をなくそう」の貼り紙。そりゃあ無理だよ、景気がよくなんなくちゃ、と思って貼り紙を良く見ると、新聞の文字の間違いをなくしましょう、の意味だった。知らない人が見たら、間違えるよね。これじゃあ。
 お腹の調子は依然よくなく、昼はパン、夜はうどんの食事。久しぶりに米も食べたが、まだまだ本調子じゃない。まあ、これを機会にダイエットして、昔のスリムな体躯を取り戻すんだ。後は髪が戻れば、言うことないんだけど・・・。

【2月21日】 Mac World Expo/Tokyo開幕!っていっても、主催しているのは事業局だから、編集局で担当外の人間には、とりたてて影響はない。去年と一昨年は、テープカットの場面を取材して、会場便りも書いたけど、今年は別の人間が担当しているから、朝早くから行かずにすんだ。
 とはいえ担当者が同じ部にいて、その人間がずーっと会場に行きっぱなしだから、残された人間は忙しい。リリースの処理に電話の取り次ぎで、てんやわんやの午前・午後を過ごす。夜は夜で、CD−ROM会社が集まってのパーティーが、会場そばのホテルで開催されるため、夕刻に大手町の本社を出て、幕張へと向かう。
 デジタローグ、F2、オラシオン、インフォシティ、シナジー幾何学、ボイジャーという、蒼々たる顔ぶれがそろった「パブリッシャーズ・フロント」のパーティーだけに、来場者の数も、数百人に及んでいて、会場は熱気に満ちていた。去年は小さいホテルのラウンジで、こぢんまりと開かれたパーティーだったけど、1年でここまで大規模になるとは。マルチメディアブームの勢いに、ただただ驚くばかり。あるいは水面下で必死に水を掻いていて、それを表に出していないだけなのかもしれない。
 数年前からバブルを危惧し続けているハイパークラフトの安斎社長を見かける。同じくCD−ROMショップを展開するキャンバスの大友社長も会場に来ていて、安斎社長と話をしていた。ユーザーの現場に近い人達だけに、シビアな話題も出たのだろう。大友さんによると、ガイナックスのアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のCD−ROMが大人気で、売り切れ続出だとか。あるいは「濃縮CD−ROM大図鑑トップをねらえ!」のことだったかもしれない。どちらも売れて不思議はない。どんなメディアに展開しても、やっぱアニメは強いなあ。

【2月20日】 スープとかうどんとか、とにかく消化の良いものばかりを選んで食べているので、なんか下腹に力が入らない。肉を食いたい、ハンバーグでもいい、山盛りのカレーや特盛りの牛丼の夢を見る。けども、やっぱり食べられない。悲しい。
 でも今日は嬉しい。東武百貨店船橋店の地下食品売場で、寿がきやの味噌煮込みうどんを見つけた。実家で良く食べていたような、乾麺タイプじゃなくって、生タイプの麺に天麩羅が付いているタイプ。名古屋にいたときも見たことないぞ。こんなの。
 味噌煮込みうどんの醍醐味は、ゴムのような麺にマグマのような味噌スープなのだけれども、それじゃあお腹に良くないので、麺は柔らかめに、スープはぬるめにして食べる。懐かしい。でもおいしくない。これは味噌煮込みうどんじゃない。味噌汁うどんだー。でも仕方がない。
 八重洲の地下に本場物の味噌煮込みうどんを食べさせる店があると聞く。行ったことないけどいつか行く。手羽先の店はないのか。棊子麺の店なら銀座にあるぞ。スパゲッティーはヨコイよりそーれだ。サヴァランも捨てがたい。
 仕事の話がないのは、仕事をしてないから。火曜日にしてはや中だるみ。明日からマックワールドだけど、直接の担当じゃないので今回は楽。でも夜はシナジー幾何学とかオラシオンとかデジタローグとかのパーティーがあるので出かける予定。雪降るかな。

【2月19日】 相変わらず体調が悪い。胃が痛い、腸が痛い、背中が痛い、腰が痛い。痛いとこばっかでおまけに花水まで出てきたから、これはもう確実に風邪ではないかと思うのだが、だからとって会社は休めない。休むといぢめられる。席がなくなる。机に花が飾られる。
 じゃあなくて、約束があったから会社に行く。ココアを飲むと少し調子がよくなって、頭がよくなるココアはお腹もよくなるのかと、アンデスの神に感謝する。でも昼御飯は抜き。つらいなあ。コーヒーも飲めない。悲しいなあ。
 久しぶりにジャンプを買ったら、スラムダンクはまだ試合中だしアバンが復活しているしジョジョはイタリアで訳が解らなくなっている。両さんだけは相変わらず両さんで、これでは早晩ジャンプも落ちると確信する。もう落ちているとの話もある。チャンピオンは人気があっても部数が伸びないそうで、最近はマガジンが1人勝ちの様相とか。盛者必衰栄枯盛衰。
 エイガアルの伊藤淳子さんからメール。オフ会へのお誘いだが当日は都合が悪く辞退申し上げる。大日本>印刷からも記事御礼のメール。今日付けで記事にした白泉社のホームページは大にぎわいらしい。男共が多いのは仕方がないけど。
 週刊将棋は羽生の大特集。でもスポーツ紙ほどではなかった。羽生の過去全局を掲載したサンスポは凄かったが、週刊新聞ではそのスペースがもったいないと見える。でもいつか掲載するだろう。特別号くらい刷ってもいいかも。アルバムが出るかもしれない。婚約者がけっ飛ばされたのは何故だ。サッカーはポーランドに圧勝した。
 調子が悪くて書いている内容も訳が解らなくなっているが、そうでなくても解らない奴といわれているので、気にしない。

  【2月18日】 今日も朝から雪で、お出かけは中止。ってもどうせ、1人で東京をフラフラしようかと思ってただけだから、大して残念ではない。
 相変わらず胃腸の調子が芳しくなく、好きなコーヒーを断って紅茶と牛乳とトマトジュースばかり飲んでいる。夕食もキャンベル・スープを1缶、フライパンにあけてコトコトと煮て、どんぶりでかき込むだけのわびしいもの。これだけ寒いと、このまま死んでも腐らなくていいかも、などと物騒なことを考え、気が滅入る。
 「半陰陽者」との対談が面白そうで、伏見憲明さんの「クィア・パラダイス」(翔永社)を買う。体の調子がおかしいのは、竈神を疎かにしたせいだと考え、台所を掃除して1日が暮れる。ああ、有意義だナー。シクシク。

【2月17日】 雪でサッカーは中止。会社のチーム「FC・コラッチョ」じゃなくって、今日は電機メーカーのチームの助っ人として、南多摩にまで行く予定だったので、1日することがなくなったから、ひたすら寝ることにする。
 次に起きたのが午後4時で、ちょっと寝過ぎたって感じ。着替えて西武百貨店にいって、晩御飯を買ってついでに本屋にいって、巽孝之のアンソロジーと、チャールズ・デ・リントの新刊と、笠井潔の豪華本と、北村薫の再刊本を買って返る。約1万円がすっ飛ぶ。枕元に積み上げると、これまでの読み残し本と合わせて、高さが50センチくらいになって、昨日みたいな地震があったら、確実に頭が潰されてしまうと思いながらも、本棚にはもはや入るスペースがなく、仕方なくそのままにしておく。
 イサミはくのいちさんが見れて嬉しい。セーラームーンはもうすぐクライマックス。次のシリーズの予定はあるのか。いつまで続くのか。土曜日はほかに、テレビ千葉で「アルゼンチンサッカー」を見るのが日課みたいなもん。今日はマラドーナのいるボカ・ジュニオルスと、リーグ3位のラシン・クラブとの試合。ボカはバックスが笊で、ラシンにたちまち3点も取られて大苦戦。前半の終わりにがけにやや持ち直したものの、後半またボンボンと点を取られて、結局6対4でラシンの勝ち。マラドーナはスルーパスに冴えを見せているけれど、昔のようにドリブルで交わしてシュートに持っていくような、鋭い動きはない。
 プロの試合を見ていて、頭の中では自分もこれくらいのプレーは出来るぞって思っても、実際にフィールドに立つと、足が全然付いていかなくなっていて、改めてプロのすごさに気付く。自分の歳は棚に上げる。

  【2月16日】 午前中、会社はひっそりと静まり返っていて、とても新聞社とは思えない。みいーんな社長のお葬式に行ってるらしくて、残っているのは記者が数人とデスクが数人とアルバイトが数人ってとこ。電話だけがプルプルとなっていて、やかましい。
 午後に入って、残っている人たちがぞろぞろ連れだってのお焼香。青山斎場って、青山1丁目で降りるより、乃木坂の方が近いって知ってた?僕は知らなかった。だって、行ったことなかったんだもん。東京で誰かの葬式に出るなんて、これが多分初めてで、ましてや社長ともなると、会葬者の数は祖父や祖母の比ではない。寒い中を1時間ばかり立っていて、それでも後ろに何百人も続いていたから、多分1000人は超えていただろう。
 夜、テレビで羽生善治七冠王の対談番組がやっていて、25歳とは思えぬその落ちつきぶりに、しばし見入っていた。羽生はもう、デビューしたころからのファンで、10年ばかりじっと見続けて来たのだけれども、それはもう強かったから、ひょっとしたら七冠王になるのでは、との予感はあった。あったけど、スポーツ紙全紙のトップを、将棋が飾る事態までは、とても想像できなかった。隔世の感あり。もっとも虚ろいやすい世情だけに、来年再来年も、将棋人気が続くのか、ちょっと心配だなあ。

【2月15日】 ブンヤやって8年にもなれば、社長会長の訃報には、数限りなく接して来たけれど、よもや自分の会社の社長の訃報を、自分の会社の新聞の紙面で見ることになろうとは、思いもよらなかった。
 社長が没しても日本が没しても、新聞だけは出し続けるのがブンヤのタマシイ、ってカッコつけるつもりは毛頭なくても新聞作んなきゃご飯が食べられないから、ワープロにむかってカツカツとキーボードを叩き、鞄を抱えて取材に行く。代わりばえのしない日常が繰り返される。
 で、午後は新潮社を訪問して、何故か大ヒットしてしまった「CD−ROM版新潮文庫の100冊」の話を聞いて来る。15000円という値段に、文章が中心の地味な内容という、巷に流行るCD−ROMの逆を張った作品にも関わらず、初版1000枚が瞬く間にはけ、たちどころに増刷がかかったのは、驚くべきことではないだろうか。年度内には7000枚に達し、早ければ発売半年で、1万枚の大台に乗りかねない勢いだという。
 2番煎じ2匹目の泥鰌は当たり前の業界だから、新潮社のみならず他の出版社も似たような企画を立ち上げるかもしれないが、聞けば制作には相当のノウハウが必要らしく、おいそれとは追随できないらしい。個人的には佐藤春夫全集とか、早川のSF全集とかをCD−ROMにしてもらいたいけれど、労多くして実入りの少ない仕事なので、本格的にやるとすると、二の足を踏む出版社が多いだろう。

【2月14日】 今日も朝から幕張メッセ。ホテル・オークラ幕張で開かれたジム・クラークの記者会見は、テレビカメラが入り立ち見も出るほどの盛況だった。ジム・クラークってのは、誰もがお世話になっている「ネットスケープ」を作ってる、米ネットスケープ・コミュニケーションズ社の会長さん。話題の人物って訳で、ビル・ゲイツって程ではないにしても、業界の注目は極めて高い。
 インターネット上でのわいせつな表現の配布・伝送を規制する条項を盛り込んだ、電気通信法改革法の成立で、米国ではホームページをまっ黒に塗り潰す、なんて抗議行動が起こっているけど、クラーク会長もこの改革法を「部分的には非合憲」と言い切った。じゃあどうすれば、わいせつな表現を子供なんかに見せなくて済むようにするかというと、コンテンツをレーティングして、あらかじめ指定しておいたレーティングのコンテンツしか、見られないようにする機能を、ナビゲーターに付けるんだと。
 ただし、貴方と私とか仲間内とかの、パーソナルなコミュニティーでは、何を話し合ったりしようと、見せあったりしようと自由だとも言ってた。でも、その範囲がどこまでなのかって考えると、これがなかなか難しく、これからもいろいろと問題が起こりそうな気がする。
 午後は、毎日新聞社がニフティ、シャープ、NTTと組んで、ザウルスで毎日新聞の内容を見られるようにする電子新聞サービスの発表会。サンケイなんかがやろうとしている、TV電波のすきまを使ってデータを流し、専用端末に読み込む「電子新聞」とは方向性が違うけど、今ある資源を使って手っ取り早く始めるには、これが精いっぱいってところだろう。
 それにしても、即時性、速報性が肝心のネットワークサービスにあって、休日の夕方や休刊日の朝は、新聞と同じように情報を配信しないってのは、どこかずれてるように思う。休刊日は、配達員にお休みをあげる日ってのが、業界の統一した見解だけれど、配達する人のいらない電子新聞も一緒に休む理由は、どう説明するのかな。

【2月13日】 連休明けは会社がつらい。夕べは結局、明け方の2時くらいまでホームページの工事をしていて、リンクのおかしいところや、レイアウトの醜いところなんかを、しこしこと直していた。朝も7時には起き出して、司馬遼太郎の訃報を伝える「やじウマワイド」を見ながら、せっせとコンテンツ作りと、ディレクトリへのアップロードをやっていた。
 会社はとりたてて何事もなく、平素のようなリリースの処理と、木曜日付けに掲載する連載企画の原稿書きで1日を潰してた。珍しい新聞だから、一般の人が目にする機会はなかなかないだろうから、企画の内容だけを話しておくと、ようするに流行りの「コンテンツ」ってキーワードをもとに、企業のコンテンツ作りの秘訣やら心構えやらを聞いて行くもの。元来ひねくれ者の僕は、まともに「ウィンドウズ」だとか「一太郎」だとかを取り上げることはせず、「週刊TVガイド」の「超番組表」とか、円谷プロダクションの「ウルトラマン」やらの記事を書いて来た。
 んでもって今度は、知る人ぞ知るCD−ROM会社の「愛があれば大丈夫」を取り上げる。広瀬香美の歌とは関係ないよ。
 夜は「何でも鑑定団」が火曜日の定番。それからニュースステーション見てニュースジャパン見て、あとは寝るだけ。ああ、一日って早いなあ。

【2月12日】 せっかくの休みなんで、懸案だったホームページの建設工事に取りかかることにした。新聞紙面では、よそ様の会社のホームページを、やれ中身が薄いだの、やれ誰に見せたいのか解らんだのと、散々にこき下ろしてきたのだけれども、いざ自分のホームページを作ってみると、全然カッコよくならない。
 まあとりあえず、書評と日記のコーナーに、手持ちの雑文やら他愛のない身辺雑記やらを書き込んで、日本工業新聞の記者としては初めての、マイ・ホームページを立ち上げることにする。
 ああ、ホームページ作りに半日もかかっちまった。明日出さなきゃいけない記事を、これから徹夜して書こっと。木曜日付けに載るからお楽しみに(って誰も楽しみになんかしねてえって)。

【2月11日】 幕張メッセで8日に開幕した「東京国際ブックフェア」も11日が最終日。初日にはあまりゆっくりと見て回れなかったので、休みの暇つぶしもかねて、メッセまで出かけることにした。プレスルームで手続きすれば、腕章をもらえるので入場券は買わなくていい。得したといえば得したのだが、逆に休みを潰して取材に行ったと思えば、損した気分になる。まあどのみち、なーんにもすることがなかったのだから、いいのだけれど。
 「爆れつハンター」のあかほりさとるサイン会が開かれるとかで、会場内は朝からもうそれっぽい人がたくさん来ていて、ディープな香りがした。整理券は10時の配布開始で即完パケ。後はうろうろ時間を潰す、それっぽい人々で小学館やら講談社やら角川書店のブースは賑わっていた。
 最終日には何故か、出展している出版社が展示本2割引きの大バーゲン大会を行っていて、お金を持っていかなかった僕は、みすず書房やサイマル出版会のブースの前で、地団駄を踏んでいた。おまけに写真機も持っていなかったので、学研のイマジン学園のデモしてた、黒タイツのおねえさんの写真も撮れなかった。悔しいなあ。
この日は、洋書バーゲンで古屋誠一の写真集を1000円(定価6000円)で買っておしまい。まあこれでも、十分に得したことになるのだが。

【2月10日】 朝っぱらからドアチャイムをならす人がいる。ぞろぞろの髪を束ねもせずに、ドアを開けると若い人と中年の人の二人が、手に黒表紙の手帳を持って立っていた。
 「警察の者ですが」とお定まりのセリフ。埋めた死体が発見されたか、盗んだ金塊が押収されたか、などとビクビクすることは全然なくて、半年くらい前に、近所のパチンコ景品交換所で起こった、殺人放火事件の捜査をしていて、当日の過ごし方や妖しい人を見なかったかを、聞かれただけだった。
 まあ、似合わない長髪をして、朝は遅いと10時くらいに家を出る不規則な生活に、怪しんだ近所の人が通報して、殺人放火事件にかこつけて、身辺調査に来たのかもしれないが、こちとら警察官や刑事とは、生まれて24年も毎朝毎晩顔をつき合わせて生活して来た(親が警官)のだから、刑事が来たからといってビビりはしない。おまけに、高校と大学を卒業する年に、それぞれ警察官の採用試験を受験して(させられて)、どちらも合格かつ採用の通知を戴いていたのだから、ひょっとしたらお仲間になっていたのかもしれず、「頑張っとるかい」などと激励してみたくもなる。しなかったけど。
 事件はこのまま迷宮入りの可能性が強いだろう。探偵さっそうと現れて、瞬く間に事件を解決、なんて現実にはほとんどありはしない。地道な捜査だけが私たちの暮らしを守るのであーる、ってほとんど回し者だね。だから駐禁と速度違反、大目に見てね。

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