新世紀エヴァンゲリオン

新世紀エヴァンゲリオン

 「フィルムブック」という形態が、いつ頃発明されたのかは定かでないが、少なくとも1980年代前半には、こうした種類の本が、書店に並んでいた筈である。というのも、高校生の時分に、双葉社から出た「ルパン3世 カリオストロの城」のフィルムブック全4巻を買って、むさぼり読んでいた経験があるからだ。

 アニメのセルやフィルムを再編集し、マンガのようにコマ割りしてページに張り付け、セリフを吹き出しに入れる手法は、マンガ大国日本ならではのものだろう。ルパンの場合は、声が頭に刷り込まれていたので、実際のアニメを見ていなくても、なんとなくアニメを見たような気になった。クローズアップが大ゴマになったり、物が動く線や擬音が書き加えられていて、フィルムブックならではの味わいもあった。

 「フィルムブック」と銘打たれた「新世紀エヴァンゲリオン」(角川書店、既刊1ー3巻)も、だからアニメをマンガ化した、従来の「フィルムブック」と同じ手法で、編集されたものだと思っていた。しかし実際は、コマは並んでいるものの、セリフはコマの外にサイレントの字幕のように入っていて、擬音も一切入っておらず、アニメ雑誌のストーリー紹介に近い手法のものだった。従来のフィルムブックが、結構な分量を1話分の紹介に要するのと違って、「エヴァンゲリオン」の手法だと、多ければ1冊に、4話分ものストーリーが入っていて驚いた。

 はしょってあるかというと、そうでもなくて、ある程度の前知識があれば、ちゃんとストーリーや設定を理解できる。各ページの欄外に書かれた、裏設定めいた文章も、作品世界の広がりを理解するのに役立っている。何より590円という価格が、学生にはありがたいに違いない。従来のフィルムブックは、30分のアニメで1冊に2話がやっと、値段も1000円近くしていた。

 もっとも私がこの本を買わずにいられなかったのは、今時珍しく、家にビデオがないからで、学生のように本放映を見られる人や、なくてもビデオで見られる人には、こうしたフィルムブックが、いかなる意味を持つのか想像できない。

 本放映を飛ばし飛ばしで数話見て、今回フィルムブックでストーリーや設定を理解した上で、「エヴァンゲリオン」は噂に違わず、傑作の部類に入るTVアニメだと思った。美女にメカといった、オタク心を誘う設定もさることながら、ストーリー自体にSF心を誘う魅力がある。1話1話を最初から見ていたとしたら、少年が闘いながら成長していくという、何ともありがちな設定だと決めつけていただろう。しかし、ある程度アニメの世界観が明らかにされた段階で踏み込むと、少年のみならず人類全体の成長(滅亡?)という、壮大な設定が秘められていたことが解って来た。

 いったいどんなラストを迎えるのか、楽しみでもあるし残念でもあるが、おそらくは全世界のファンの期待を裏切らない、鮮やかな最終回を見せてくれるだろう。もっとも僕がそのラストを知るのは、放映後しばらく経って、フィルムブックが発売されてからになるのだが。

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