縮刷版2004年1月下旬号


【1月31日】 「アニメーション制作進行くろみちゃんスペシャル 日本のアニメが杉並で作られる」、なんてアニメーションがあるいはそのうち作られるんじゃないかってくらいに東京都杉並区が、日本のアニメの発信地としてつとに有名になった理由のひとつに、杉並区役所が先頭に立って”地場産業”であるところのアニメを盛り上げようって張り切って「アニメーションフェスティバルin杉並」を開催して来たことがあって当初は、アニメに区が関わるって物珍しさからの報道も多かったけど「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞を取ったこともあってか政財界がアニメを日本にとって重要な産業だなんて認知し始めたこともあるからか、最近では杉並で開催されて当たり前って捉え方がされるよーになって”石の上にも3年”じゃないけど信念を持って続ける大切さがちょっと分かった。とか言いつつ大新聞で取材に来ているところは見あたらなかったけど。

 とは言えそこはサブカル左翼てきなマインドが尾を引いてお上がアニメを仕掛けようたってそこには”下心”めいたものがあってイベントもどこか”開いてやる”的な見下す感覚があってイベントを堅苦しいものにしてるんじゃないのって先入観があったけど、朝からはるばると東高円寺の「セシオン杉並」へとかけつけ見物した「3rdアニメーションフェスティバル2004in杉並」は、待ち受けていた”アニメ課長”さんをはじめスタッフの人が皆さんとってもフレンドリーで来た人たちに楽しんでもらおう、アニメのことを知ってもらおうって気持ちに溢れてて、会場にいて押しつけがましさもなければ殺気だった感じも受けずに柔らかめから堅めまで、バラエティーに富んだ出し物を楽しむことができた。

 冒頭では「ドラゴンボールZ」の大きく描かれたシャツに身を包んだショッカーO野さんがまだ朝なのに元気いっぱいの声で盛り上げ子供たちを乗せようと大はりきり。まだ早い時間なのに流石テンション高いです。続いて上映された「サヨナラ、みどりが池 飛べ! 凧グライダー!!」は杉並にあるアニメ制作会社23社が自主制作した作品で、こんなものまで作ってしまうくらいに産業側も杉並をアニメの里として盛り上げていこうって意欲に溢れていることが伺える。作品自体は絵柄は古いし住んでる池を奪われそーになったカエルたちが離れた場所にあるお寺の池へと冒険するストーリーも割に単純だし、外国かぶれのカエルの目やカエルたちの口の中の色のピンクで紫な色の凄さに目を奪われるけれど別離を経ながら勇気と頑張りによって栄光をつかむ展開は万人に共通の感動のツボ。ジンと来てしまったし回りの子供たちからも鼻をすする音が聞こえて来た。風邪か? だから感動ですってば。

 まあ子供たちの大半はこの後に上映に「アンパンマン」が目当てだったみたいで、続々と集まって来る親子連れに「アンパンマン」が持つ人気の凄さを改めて実感。別の部屋でセルシスのソフトを使ってアニメにパソコン上で色を塗る体験会も行われていたけどそこでサンプルに用意されていたのは「しまじろう」で、「アンパンマン」の用意ともども来場してくれるだろー層にちゃんと合わせたプログラムづくりを行おうって行政のサービス精神を見て取る。とか言いつつ一方ではAT−Xあたりの仕切りでアニメ版「北へ。」のイベントを実施して、午前10時前にはすでに多数の行列を作らせ午後3時の開演を待たせて大きいお友達を会場へと誘っていて、行列が付きもののアニメ関連イベントらしさを出していた。頑張るよなあアニメファンって奴らは。その昔に「DAICON FILM」を見るため名古屋市植田で4時間ばかり並んだことを思い出したよ。今時のイベント徹夜待ちに比べれば温いけど。

 地下で「代々木アニメーション学園」や「東放学園」や「阿佐ヶ谷美術専門学校」なんかの入校案内ブースで話を聞いたり代アニの学院長ってアニメーター上がりの人が目の前でさらさらと描く次元大介の似てるっぽさ(当たり前だよ)に感心したりして時間を過ごしてから午後に開かれたこっちは堅めのシンポジウム「デジタル時代のアニメ人材育成」を聴講。プロダクション・アイジーで技術系のチーフを務めている安芸淳一郎さんとテレコムアニメーションフィルム社長の竹内孝次さんと日本工学院専門学校の佐藤充さんが登壇して話したのはデジタルがアニメ制作にいっぱい入ってきている時代にいったい養成学校は何を教えれば良く、アニメ制作会社はどーゆー人材を必要としているのかってことで、やっぱりパソコンとか良く知っててソフトもフィルターを含めて駆使できるバリバリなデジタルエリートが求められているかってゆーとまるで逆。安芸さんによればソフトなんてすぐにバージョンが変わってしまうものを覚えるよりも先に基本となる絵を描く力がなければアニメ業界では使えないし付いてもこれないってことらしー。当たり前っちゃー当たり前だけど、アニメは絵なんだし。

 テレコムアニメーションフィルムの竹内さんもアニメーターに必要なのは「知識と技量とスピード」で、あと他人とコミュニケーションをとったり、絵がどーゆー状況で動かされているのかを考えたり、体だったら体がどーゆー仕組みでもって動くのかを論理的に理解する「読み書き算盤」も不可欠で、デジタルがどーのこーの言う前にまずはいろいろ学ぶべきことがあるってくどいほど訴えていてなるほどアニメって絵なんだって基本に立ち返る。「何を使うかじゃなく何を作るかに固執せよ」とはまさしく至言。けどその「何を作るか」が分からず何とはなしに絵を描いてみたいアニメに関わってみたいって人の多くで増えているっぽい状況が、年輩者たちをして10年一日どころか悪化している懸念をアニメ業界に覚えさせているのかもしれない。

 シンポジウムでは日本工学院専門学校の佐藤さんが入学して来た生徒にまずパソコンの前とかに座らせるんじゃなく、劇団四季へと連れて行ってミュージカルを見せ写生に行かせデッサンをさせることで、ずっと好みに応じて選んで作品を見てきたファン心理とは一線を画した、大勢に見てもらおうって意識で作品を作るために必要な観察眼と経験を、養わせよーとした話が出てきてそーゆー学校だったら通ってみたいって思ったけれど、流石にこの歳では講師より上になる可能性もあるんで謹んでパスさせてもらう。ちなみに竹内さんによればカナダの学校なんかでも1カ月は自分の描きたいものを考えさせて次の1カ月はそれを描くために必要な観察眼を養わせるため動物を描きたいんだったら動物園へと行かせるカリキュラムを組んでいるとか。気持ちにゆとりと信念ががなくっちゃ良い仕事はできないってことで。おい聞いてるか(誰に言ってるんだ)?

 一方で何千枚動画を描いて来たか、デッサンは何百回やったのかって実地の技量も業界では大事にしているらしくって、本格的なアニメーターになるためにはまず人生経験を積み且つ技量も高めなくっちゃいけないんだってことを強く思い知らされる。とっても為になって20年若ければ師匠と読んで飛び込んで行ってしまったかもしれないくらいに業界への感心を抱かせてくれた高密度なシンポジウムが無料で聞けてしまえる僥倖。それが地元・杉並で開催されてるってのに哲学者はアシアナ航空で海外行きってんだから勿体ないとゆーか。「新・超人計画」とやらを実践中の青年はちゃんと「北へ。」の公開録音に来て跳んだんだろーな。来てなかったんだったら明日こそは夕方午後6時からの大地丙太郎監督作品「アニメーション制作進行くろみちゃん 日本のアニメは私が作る!2」の関連イベントに行くよーに。偉大なる安原麗子さんに市川三恵子さんとあと1人がおそらくは入って「ニセ少女隊」が結成されては何か唄ってくれるそーだから涙して聞け。「少女隊」が何か知らない? 「セイントフォー」のルーツ(違う)で「スターボウ」のお姉さんだ(もっと違う)。

 ちなみに午後5時からは作品そのものの上映もあるんでDVD買ったばかりだけど行って大きなスクリーンで「ノー作監」版「ルイモンド三世」を見よう。さらに午後3時からは「ルイモンド三世」の原典とも言える「ルパン三世 カリオストロの城」の上映もあるんで大きなスクリーンで超久々に見たいんで行ければ行こう。さらにその前の正午からは「サイボーグ009」の1966年版が上映されて赤いマフラーがなびくんで散々っぱらテレビで見たけど起きられれば行こう。別の「5・1chルーム」では「マクロス・ゼロ」とか「アミテージ」とか「新世紀エヴァンゲリオン」とかの上映もあって、これだけ詰まって無料だなんてやっぱり素晴らしいイベントだと感謝感激雨霰。朝からあっち行きこっち行きで奮闘していたアニメ課長さんに世のアニメ好きたちは心からのエールを贈れ。東京都は金を出せ。


【1月30日】 それにしてもベンキョーになる「アニメーション制作進行くろみちゃん 日本のアニメは私が作る!2」。過去幾多の修羅場から数多のトンデモ作画なアニメーションが作られ放映されたり上映されたことがあったけど、仮にもプロの絵描きさんたちの手を経てどーしてあーなるんだろう? って常にあった疑問に対する答えが赤裸々なまでに描かれていてなるほどこれならあんな得体の知れないオブジェが画面を浮遊していたり、アニメーターの癖とゆーには無茶過ぎる、それまでまるで見たこともないキャラクターが前回まで出ていたキャラと同じ役柄同じ声優で登場したりするのも分かる気がする、って納得した訳じゃないけれど。

 鍵はつまりは「永久保存版アニメ用語基礎知識」にある「ノー作監」って奴らしくってこれが飛び出した作品は、なるほど納期には間に合って放映はされて商売としては一段落を得ることができるけど、キャラはぐちゃぐちゃ動きはめちゃめちゃ、ただ絵が出て流れてるってだけのものになるらしー。それがどんなものかは「くろみちゃん2」でも実証。話の中で流れる「ルイモンド3世」。前作にも出てきた”真っ当版”を見たあとで、大地丙太郎さんが渾身の力でもって描いた”ノー作監版”を見るとそれがどんなに面白い、じゃない恐ろしいことかがよく分かる。けど過去数多のノー作監風アニメに比べると「ルイモンド3世」、ちょっぴり顔の形が違う程度と言えば言えないこともなく、その辺りに下手にやろーとしても出来ない作り手の良心なんかもちょっぴり見え隠れ。ともあれ前回がアニメーター魂の奮起で今回が制作魂の惹起と来た「くろみちゃん」が次に描くアニメ制作現場の修羅場は何だろー。下を信用しない大御所への諫言かそれとも画一的な企画への警句か。恐いけど楽しみ。

 ハーイルイルパラッツォーっ。って言ってもちょっと大げさ過ぎやしないかと「ヤングキングアワーズ」2004年3月号の「エクセルサーガ」に仰天。ここまで90話、たしか一切他人の前に出たことのなかったアクロス総帥オイルパラッツォが「腐った世界を正す為」と言ってビッグに超巨大化して市民の前に現れて、「この市街をアクロスが支配する事を宣言」してしまって単なる思わせぶりな部分を見せながらも基本は貧乏少女の苦労物語だった「エクセルサーガ」がいよいよ、本格的な人ならざる者どもの次元を超えたバトルへと、発展していくよーな気もしないでもないけどこはやっぱり「エクセルサーガ」、ただのドッキリ番組か新しい広告と思われすぐに忘れられ、変わらず爛れた日常の繰り返しへと戻って行ってしまうのかも。とりあえず来月の展開に注目だ。蒲腐博士の巨大化は無しにして。

 親会社より気鋭の社長を送り込まれ精鋭の編集局長を放り込まれた挙げ句にタイトルを変えられ、中身も50歳代の古き良き新聞時代を知る伝統的新聞人たちの思い入れが存分に反映される形で改変されたのと並行して、現場では一段の少数精鋭化が進められてそれこそ日本経済新聞だったら全国で合わせて1000人に近い数百人くらいで見ている産業界を、1日に2ページから3ページを作ってるだけの一般紙の経済部にすらはるかに及ばない10数人とゆー人員で、他だったら政治部に社会部も動員してカバーしている役所も含めてフルウオッチしつつ、連日10ページ弱を作るとゆー前代未聞の大冒険へと果敢に挑戦しはじめた某経済専門紙とは長くライバル関係にあった日刊工業新聞の1面に、山本“切込隊長”一郎さんが堂々の登場となって意外に日刊工業新聞、これでなかなかトレンドに聡いと感心する。どーゆー風に編集局の偉い人たちを説得したんだろー。それとも経営母体が変わって偉い人も勘性豊かな人たちに変わったのかな。だとしたら侮れないぞ日刊工業新聞。上っ面じゃない内蔵からの変化がありそーで。

   そんなこんなで食品メーカーまでもが範疇に回ってきたんで早速、味の素の偉い人の会見へと出て「味の素スタジアム」のネーミングライツ契約がもたらした効果が相当にあったって話を聞く。スタジアムの看板だけならたいしたことはないのかもしれないけれど試合がある度に京王線の飛田給を挟んで前後で放送される「味の素スタジアム」降車駅って案内や、近隣の信号機なんかに掲げられた「味の素スタジアム」の看板、「SMAP」とかいろいろなコンサートが開かれる時に会場として紹介される文言の総体は、何億円ってゆー契約料をそれこそ1年で取り戻してしまったかもしれない。それより「ほんだし」とかで主婦には浸透していても若い人には今ひとつだった知名度が、サッカーってスポーツを通して高まりイメージを変えるのに大きく役立ったって方が、数年間限定の看板料以上の効果となって長い期間にわたって味の素に貢献しそー。野球じゃこーゆー効果はちょっとなさそーだから流行になりかかって来たってことで各地の施設が導入を検討し始めたネーミングライツでも、場所や施設の目的に応じていろいろな格差が生まれそー。


【1月29日】 「デジタルコンテンツグランプリ」でグランプリを取った「東京ゴッドファーザーズ」の今敏監督に受賞の感想なんかを伺いに行った時にアニメーション業界が日本の誇るコンテンツだってことで政府に財界の関心が高まって来た最近の風潮の中で何か変わりましたか、って尋ねて何も変わってないって答えをもらってうーむと唸ったけど、現実を想像するなら週に70本とか作られるよーになってる状況ではむしろ悪くなってるかも、って感じられないこともなかったりして、それだからこそ不健全でもアカデミー賞を是非に取ってもらって、世間の関心を集めて資金面とかでプラスアルファになって欲しかったと、もう2日経った今もしつこいけれど思ってる。

 とはいえノミネートされなかったとゆー現実を前にした時に、次善の策を考える必要があって例えば押井守さん大友克洋さん宮崎駿さんの3大メジャーな監督の相次ぐ新作の投入に期待したくなるけれど、まだちょっと先になるこれらの作品よりも先に「アニメーション制作進行くろみちゃん 日本のアニメは私が作る!2」を世の中の人たちに見てもらって、アニメーション業界がどれだけ厳しい状況にあるかってことを分かってもらいつつ、アニメがどれほど素晴らしいエンターテインメントなのかってことを感じてもらいたいってちょっと本気に考えている。

 新人の制作として入っていきなり制作デスクに祭り上げられた大黒みき子こと「くろみ」ちゃんがアニメーターの御し方仕事のさせ方を学びつつも本質的なところでは共に良いアニメを作ろうって”夢”の共有でもって難局を乗り切った第1巻に続く第2巻は、ある程度仕事には慣れたものの今度は社長が1度に3本なんてシリーズを受けてしまってやっぱりてんてこ舞いの状況に、さてどーしたものかと悩んでいた所にやって来たのが高島平礼ってゆー名の制作のプロフェッショナル。状況を見るなり無理だと判断しては放送を間に合わせることを第一義に作画は適当で作画監督もふっ飛ばして動画に回そうなんって”夢”とは対極の制作ぶりを見せてスタジオを混乱させる。

 なるほど前にも増して厳しくなっている状況を乗り切り、且つ商売としてのアニメ制作を成り立たせるためにはそーゆーやり方も合理的ではあるんだろーけど、”夢”のために誰もが前を向いて頑張ることで”夢”が現実になる物語を見るにつけ、合理性が幅をきかせなければ成り立たないよーな状況はやっぱり間違っているんじゃなかろーか、って気にさせられだからこそこーした”良いアニメ代表”の作品が売れに売れて、スタジオが潤いアニメに関わっている人たちが潤ってもらいたいって思えて来る。けどやっぱり現実は厳しいんだろーな、大地丙太郎監督も次から次へと仕事をしてるし。せめてこの第2巻も売れて第3巻が作られるよーになって欲しいなー。

 その大地監督の「十兵衛ちゃん2」は見ずギャグっぽさが増す「マリア様がみてる」をちょっとだけ舐めつつ先に「R.O.D. The TV」の第11話を録画でチェック。香港に帰ることになったアニータちゃんが学校で友達と最後のお別れをするストーリーが淡々とした描写と音楽でつづられていて見ていて気持ちがしんみりとして来る。夜の図書館で大騒ぎしたエピソードの時といっしょで静かだけど深い演出に感銘したのもつかの間、最後の最後で心に突き刺さるよーな描写があって監督の人の厳しさに立ちすくむ。

 読子・リードマンに去られたショックから立ち直りつつあった菫川ねねねに起こる衝撃たるや一体どれ程のものになるんだろーか。いったいどーなってしまうのやらと、来週以降の展開がとてつもなく気にかかる。ちょーどここでDVDの第4巻も終わってしまっているんだよなー。個人的にはそれよりアニータちゃんが唯一スカート姿を見せてくれた学校の描写がなくなるのが残念なことこの上ない。普段はボーイッシュな癖に制服になると”少女”っぽかったんだよなー。ジュニアに代わりを努めてもらうかな、秘密ありそーだし。

 映画会社が作ってる日本映画製作者連盟の会見に行って2003年の映画概況の発表を聞く。興行収入が過去最高になったって言われてちょっと意外。初めて2000億円を超えた2001年だったら「千と千尋の神隠し」ってお化けがあったから実感として過去最高だったって分かるけど、2003年については実写の邦画で最高だった「踊る大捜査戦 THE MOVIE2」があったとは言えそれだけで「千と千尋」を上回れるとは思えっていなかった。「ハリー・ポッター」に「ロード・オブ・ザ・リング」に「マトリックス」って洋画の御三家プラス「パイレーツ・オブ・カリビアン」の妙なヒットといった感じに、満遍なく底上げされてたんだろー。あとアニメも。2004年は「ハリポタ」「指輪」とあるけど邦画に果たしてお化けが出るか。「ハウル」が完成すればあるいは、だけど。

 徳間ラッパ亡き後の見だしコメントへの期待を背負っている角川大映の角川歴彦社長は去年の「妖怪大戦争」企画進行中に続いて「妖怪大戦争」企画ますます進行中のコメント。来年には公開できるらしー。あと「ガメラ」も進行中ってことだけど一体どんなガメラなんだろー、金子ガメラの第4部ってことはないんだろーけど。その角川さんに「『週刊わたしのおにいちゃん』の記事を書いたのはあなたか?」と言われてどんな顔をしよーかと迷ったのは内緒だ。堂々と「そーです」って答えてそーゆー奴って思われては流石に社会人としてマズいし……ってことはなくってすでに時遅し、そーゆーのを書くのは新聞業界では1人くらいと思われてるんで胸を張って「その通りです」と答えました。人間開き直ると強いです。

 とか角川さんの顔を見た直後に、「電撃ファミ通」いよいよ創刊、にはなりそーもないけれどグループ内に「電撃」とゆーゲーム情報誌の一大ブランドを抱えながらも、さらにトップブランドと言える「週刊ファミ通」までをも傘下に入れてしまうってニュースを見て、角川書店グループ、それ程までに業容の拡大を狙っていたのかと驚きに唖然とする。むしろ狙いは角川グループにはないパソコン関連情報誌のトップブランド「アスキー」の方なのかもしれないけれど、角川ホールディングスがアスキーにエンターブレインを傘下に持つ会社の株の公開買い付けを発表したリリースを読むと、「レタスクラブ」だけ取って「キネマ旬報」は手放したよーには「ファミ通」をどこかに渡すってことはなくって、「電撃」ともシナジーを取りながらやっていくって書いてあるんで同じグループにあってしのぎを削る「電撃文庫」に「角川スニーカー文庫」に「富士見ファンタジア文庫」と同様、同じゲーム情報誌としてしのぎを削りあうことになるんだろー。おお「ファミ通文庫」も加わったってことになるのか。ヤングアダルト文庫のレビューがオール角川系で埋まる可能性がさらに増したなあ、参ったなあ。


【1月28日】 開けて渡辺謙さんが「ラスト・サメラーイ」で助演男優賞にノミネートされて「たそがれ静兵衛」が外国映画賞にノミネートされている報に接して「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」の今敏監督作品の長編アニメ賞ノミネート共倒れへの残念さがさらに増す。沸きに沸いているメディアのこの賑わいに今監督の名前がもしも並んでいたら、たとえ取れなくたって新聞テレビに雑誌を通して大勢の人にその名前を知ってもらえて、次へとつながったんじゃなかろーか。

 昨日の「デジタルコンテンツグランプリ」の交流会でマッドハウスの丸山正雄さんが「今監督と約束したことがあって、最初の『パーフェクトブルー』が1億5000万円なら次作はその倍、その次はさらに倍の制作費にする、といったことだけどまるで果たせていない。集まっている人には是非に応援をお願いしたい」と言っていたけどもしもノミネートされていたら、あまつさえ受賞までしていたらそれこそ希望の20億円だって集まったんじゃなかろーか。20億円の資金と豊富な人材によって練り上げられた今監督作品なんて、想像するだけで凄みに震えが来るけれどそれもすべておじゃん。かくなる上は商売優先でノミネートから外した罪悪感から来る米国の映画人の良心が、資金を今監督へと回してくれることを願いたいけど、商売優先の国だけにやっぱり無理なんだろーなー。欧州に期待するか。

 こっちは日本サッカー協会の思惑が大成功に終わったハロプロメンバーによるアテネ五輪の女子サッカー予選組分け抽選会。取り上げたメディアは数知れずあって世間に女子サッカーとゆースポーツの存在、そのアテネ五輪に女子サッカーが出られるかもしれないとゆー期待があることを、とてつもない大勢の人に知らしめることができたのは喜ばしい。悩みがあるとしたら頭に乗り過ぎたサッカー協会が、五輪予選の会場でハロプロメンバーによるフットサル大会なんかを前座として企画して、その影響で本来だったら余裕で取れた観戦チケットが取りづらくなること。「東京ドーム」に日本の女の子の音楽と体育を見物に来た人の数から想像するに相当な状況になりそーで、どーやってチケットを確保しよーかと今から頭を悩ませている。普段からLリーグを見ている人なら優先的に見られるよーにしてくれれば有り難いんだけど、何せ普段は無料のLリーグなんで本当に見たか見なかったかを証明する術がないんだよね。困ったなあ。

 「本朝」が付く「聊斎志異」ってことは「雨月・春雨物語」みたいなものかと思って読んだ小林恭二さん「本朝聊斎志異」(集英社、2500円)はなるほどちょっぴり不可思議な逸話をたくさん並べた形が上田秋成「雨月・春雨物語」に似ている部分もあったけど、収録されている物語の時代が平安鎌倉から現代までと幅広い上に多くの物語が警句とか風刺といった読んで気持ちに刺さるものではなく、読んですっきりとした気持ちになれるよーになっている所に作者の小林さんのちょっとした配慮を感じる。結末としては悲劇でもそこにいたる展開にどろどろしたものがなく毅然とした気持ちになれるよーになっているし。

 適当に面白そーなのを選んで読んでいるだけなんであるいは、未読の物語に読んで後味の悪いものも混じっているかもしれないけれど、結構な数読んでそーした内容のものにあんまり当たらないってことは確立として少ないと思って良いのかな。囓って面白かった話は閻魔大王と飲み明かす男が良い人生を送る「閻王」とか、多指の野暮な官僚がその真面目さから美人の妻を娶って幸せな人生を送る「宝」あたり。何事も嘘をつかず大げさにせず、ただ真面目にこつこつとやっていると良いことがあるんだって期待を抱かせてくれる。

 悪いことをすると罰があたるとかいった警句に満ちた話でそーしたことを止めさせようと働きかけるより、頑張れば良いことがあるんだってゆー話を読ませて頑張らせる方が、世の中にとって良いことだと思うんで「本朝聊斎志異」、ポジティブシンキングに世間を前向きに生きるためのテキストとして若い人をはじめに大勢の人に手に取ってもらいたい。って言っていると案外に物語に仕掛けをしてくる小林さんの、並な読者には分からないタクラミにひっかかってしまうのかな。どーなのかな。疑わずに素直に素晴らしい物語を受け止め真面目に生きることが尊いってここは、前向きに受け止めることにしよー。


【1月27日】 梅津泰臣劇場「MEZZO」。まあ前よりは動くしお話にも起伏があって30分、見られたことは見られたけれどところどころの不思議な演出不思議な美術に、いったい今が本当に21世紀なんだろーか1980年代なんだろーかと脳内タイムバッドトリップに悩む。原田(つんつん頭)智久と黒川(太一郎声)健一が入ったあそこは一体クラブなのかディスコなのか。お立ち台みたいなのがあったからディスコなのかもしれないけれど、そのお立ち台が昔良く(今もあるけど)校庭に置いてあった校長先生が朝礼に上がる台よりもショボい形をしていたよーに見えたのにはひっくり返った。

 ディスコ行ったことがないからもしかしたら本当にあーゆー形をしているのかお立ち台。あと浮気な奥さん(偽)の鼻息。爆発寸前を表現したにしても表情はつけちゃマズいでしょー。無表情で顔から煙りだったらツクリモノっぽい不気味さも感じられたのに。けどまあこーした所々の抜けがスタイリッシュにオサレな美術キャラクターから来る妙な気取りを廃してお気楽極楽な雰囲気にしてくれちゃったりしてるんで気にしない。冒頭の海空来ちゃんのサービスシーンは嫌いじゃないけどぱっつんぱっつんなスーツに包まれてこその弾力感だったりするんで個人的には微妙。白でもボディでも見えてりゃ良いってもんじゃないってことで。嗚呼ストイシズムフェティシズム。

 快調に未視聴の番組が溜まる「RD−X4」からよーやく先週放映の「Jam Films」を見る、もちろん「JUSTICE」からだ。ポツダム宣言を読んでくれちゃっている英語教師ロバートの目を盗んで校庭で繰り広げられている女子体育のハードル跳びを観察する妻夫木聡がとった行動。それは飛んでくる女子のブルマーの色を「正」の字でカウントすることだった、ってゆーある意味とっても正しい青春の1シーンを描いた物語。同じ体育のクラスで赤青緑と3色のブルマーがあるのは奇妙だし、だいたいが英語の授業でポツダム宣言を教師が朗読すること自体が妙だけど、「ブルマー=正の字=JUSTICEvsポツダム宣言」の可笑しさのためにはどんな無理も許されるのである。ってかブルマーでのハードル飛び映像のためには、だけど。

 迅速がモットーなのか「週刊サッカーマガジン」2004年2月10日号は一昨日開催の「全国女子サッカー選手権」決勝の「田崎ペルーレFC対日テレ・ベレーザ」をモノクロページながらもきっちり1ページ使って報じてくれていて感謝感激雨霰。対する「週刊サッカーマガジン」2004年2月10日号は次週回しかまるで掲載されておらずちょっとガッカリしたけれど、今日あったアテネ五輪代表決定に向けた予選の組分け抽選会の模様とあわせて大々的に報道してくれれば、ハロプロな面々も揃った華やかなグラビアと一緒に緑とピンクのくんずほぐれつが見られるんでそれはそれで喜びたい。ハロプロと比べられたら堪らない? アスリートにはアスリートの相対美があるのです。あややにはあややの絶対美があるんだけれど。

 デジタルコンテンツ協会の「デジタルコンテンツグランプリ」受賞者が集う交流会をうろうろ。アニメーションとハリウッドに詳しい浜野保樹先生がいたんで今敏監督ははたしてアカデミー賞を取れるのか、ってすでにノミネートされることを前提に尋ねて「アカデミー賞はハリウッドの映画業界の賞だから興行成績でトップの『ファインディング・ニモ』が取るのでは」ってロジカルに返されて納得。もちろん浜野先生も作品の素晴らしさで選ばれるんだったら「東京ゴッドファーザーズ」なり「千年女優」が選ばれて不思議はないって考えだったけど、それだけで取れるほど”業界”の壁は低くはない、コストをかけてビデオを配りプレゼンを重ねてよーやく取れるものだってことらしー。

 それでもせめてノミネートくらいされれば世間もちょっとは関心を向けてくれたんだろーけれど、夜半に発表になった長編アニメ部門には「千年」も「東京ゴッド」も名前がなく、魚と熊とよく分からない婆さんだかのアニメが並んで気が抜ける。ノミネートされるのにもやっぱり相当なプレゼンが必要だったってことなのか。「千年女優」の向こうでの扱われ方なんかを見るとドリームワークス、最初っから本気でアカデミーどころか興行としてすら成功させようって雰囲気なかったし。やっぱり我が子ならぬ兄弟熊が可愛いってことなのか。期待していた凱旋上映もこれでなくなり「千年女優」を音響のばりばりにきいたシネコンだかで迫力たっぷりの平沢サウンドに包まれながら見るとか「東京ゴッドファーザーズ」を大勢の笑いに包まれながら見るって夢も先送り。あとは他の”真っ当”な映画祭に期待したいところだけど……芥川賞直木賞といっしょで興行につながるのはアカデミー、だからなあ。残念。


【1月26日】 愚直に裸体の美貌を温湿布する話。な訳ない「超重神グラヴィオン ツヴァイ」の第3話「熱闘! 愚裸美温泉!!」で1週間を戦う勇気が湧く。お手軽。でもねえ、美女美少女美幼女勢揃いの御一行様が勢揃いするってだけでも垂涎なのに、タオル付きとは言っても内から盛り上がる肉に脂肪と、それらに動きを与える重力のお陰で目にも楽しい画面が出来上がってて30分を隅々までハッピーな気分で過ごすことができた。ありがとう大張正己さま。感謝しますエブリスタッフ。

 あくまでも非アスリートによるパッと見の印象だって断った上で感じたことを言うと、昨日の「全国女子サッカー選手権大会」で決勝の舞台に上った田崎ペルーレFCと、日テレ・ベレーザを比べてユニフォームの下にみなぎる肉体にどこか差があるよーな気がしてそれは、ペルーレの両サイドで試合を引っ張った土橋優貴選手と柳田美幸選手のすっくと背筋の立った姿勢を最後まで保ってプレーし続けた強さとか、隙あらばトップへと飛び込もうと虎視眈々としている鈴木智子選手の弾力感あるプレーぶりなんかに見てとれたことで、同じチームにいる日本代表の山本絵美選手に川上直子選手の2人だけじゃない、チームトータルとしてのフィジカルの底上がりぶりが感じられる。

 対するにベレーザは、全員が均一にフィジカルアップされてる、って印象がいつ見てもなくって例えば「全日本女子サッカー選手権」ではスターティングでトップに入った山口麻美選手は、まだ若いってこともあるのかスラリっとした感じがあったし、やっぱり新鋭で今期めきめきと頭角を現した近賀ゆかり選手もやっぱり細い印象。ペルーレ選手に見えた頑丈さとは極論すれば対極にいる。中盤を固める酒井與恵選手もがっしりってよりは細身で逆に小林弥生選手はちょっぴりがっしりを上回っている。ディフェンス陣も似たりよったり。”女秋田”とかいった感じを受ける選手は見られない。いかにもアスリート、って雰囲気を持った人が少ないってことでもある。

 それでいて近賀選手なんかは、走ればすごいスピードとテクニックで囲む2人を抜いてセンタリングをあげたりクロスを放り込むし、小林選手は前線から中から最後尾へと駆け回っては守備に攻撃に顔を出す。酒井選手は中盤の底をがっしり守って前線をケアし後方をケアする視野の広さでベレーザを支えていたりするし、最前線の大野忍選手もやっぱり瞬間の動きだしに冴えを見せるといった具合に、全員が全員とてつもないテクニックとスピードを持っているよーに見える。もし仮に、そんなベレーザの選手たちに系統立てられたフィジカルトレーニングが施されて全員が、YKK女子サッカー部フラッパーズの大部由美選手みたいながっちりとした脚とか持つよーになったらあるいは、無敵の軍団になるかもって素人目に見えて仕方がない。

 まあ人は見かけじゃないし今だってリーグでも選手権でも2位に入るチームだからしっかり鍛えられているのかもしれないし、今シーズンに限って言えば10代の若手が多かったことも華奢な印象をさせる方向に働いた可能性もあるんで、これからしばらく様子なんかを見て本当のところを考えてみよー。もちろんドイツ他の海外にはペルーレでもYKKでも追いついていないことは自明なんでその辺りは、JOCのオフィシャルスポンサーになったコナミスポーツさんに是非に手を挙げていただいて、まだ出場は決まってないけど出場を決める大事な試合に備えてこの冬から春にかけて、代表候補を鍛えてあげて欲しいもの。筋骨隆々の酒井選手、ちょっと見てみたいかな。

 「えふーま、りーのす」「どどんどどんどん」。とゆー音が聞こえてきたかどーかは人によりそーだけど遂にいよいよ発表となったサッカー日本代表の新ユニフォームを東急百貨店屋上の「アディダスフットサルパーク」のお披露目会で見た印象はまず「格好良い」で、それから縦にほのかに縞の入ったツートンのパターンがちょっぴりマリノスに似てるかもって思えただけで胸に「NISSAN」とか入っている横浜F・マリノスのユニフォームと無印の日本代表ユニフォームが、並べば間違えることはなさそー。いつかのフランス代表とは……色が違うから大丈夫かな。

 とは言え今回のユニフォームは縦縞ながらもグラデーションがかかっている程度で遠目にはベースになってる薄いブルーが目にはいってフランス風。説明によると濃いストライプの部分は2002年のワールドカップで日本代表が着たジャージの色をそのまま受け継ぎ「経験の象徴」として残したもの、基調となってる薄いブルーは澄んだ空からの連想で更なるステップアップすなわち「挑戦の象徴」として採用したものらしー。ある意味日本代表に必要なことを端的に言い表している気がするんだけどこれを着る現日本代表がトルシェ前監督の作った規律や戦術といった「経験」をまるで捨てているのが皮肉とゆーか。あるいはこれを着せることでジーコ監督に「経験」を思い出させようって腹なのかも。出るかいきなりの「フラット3」。

 エンターブレインの「第4回ファミ通えんため大賞」から「東放学園特別賞」受賞作とゆー豊倉真幸さんの「永久駆動パペットショウ」(エンターブレイン、640円)を読む。タイトルからの印象は洋風の傀儡(くぐつ)回しが「からくりサーカス」的にバトルする話って感じだったけど内容はどちらかと言えば退魔師寄り。異界だかで魔物を狩る役目を与えられる人たちのうちの戦う人形を作る型師の少年が一般的な世界へと送り出した「木偶」たちが、めいめいに戦いを繰り広げるって展開だけどそこに型師の少年が追った原罪めいたものを巡るあれこれと、そんな少年を見守る呪文だか言霊でパワーを繰り出す言師の青年の交流なんかが絡んで話を膨らませる。

 差詰め悩みながら戦う悲劇のヒーローって感じで理由なんてさしてなしに戦う虚無的なヒーローとか逆に熱血一直線で戦うヒーローってのが多勢なジャンルにあってその暗さはちょっと異色かも。ただ親の因果が子をも蝕むって基本設定は例えそれを否定する内容であってもちょっぴり気になるところで、これからの展開の中でも注意し注力して正義の有り様を追求していって欲しいもの。あと妙にかけた情けがもたらしたかけがえのない”死”を単に”道具の破壊”と流さず、かといって心の傷として引きずらせないで消化し昇華する物語を紡いでいって欲しい。ノワールとか、ダークはこのレーベルじゃーあんまり読みたくないし。


【1月25日】 明け方にむくむくと起きて書評系の仕事。こーゆー仕事が日中を埋め尽くすくらいにあれば会議会議また会議の日々に明け暮れなくっても済むよーになるんだけど未だ世間に知られていない我が身の哀しさ、スケジュールの埋まらない隙間をながめつつ、今はまだまだ修行の日々だと読書に精だしネットでの感想文書きに全力を注ことにしよー。最近ちょっとサボり気味だし。

 そうこうしながら「ファミ通えんため大賞」受賞の田口仙年堂さん「吉永さん家のガーゴイル」(ファミ通文庫、640円)なんかをペラペラ。シャイニングウイザードってゆーしゃがんだ相手の膝に乗ってこちらの膝を顔面にぶち込む、ある意味卑怯極まりない技を得意とする少女の吉永双葉が福引きの懸賞で充てたのは、完全無欠の門番型自動石像、通称「ガーゴイル」。その強さを誇らずけれども謙遜もせずに語る口調は自分こそナンバーワンと思いたがってる微妙な年頃の少女の感に障ったのか、叩き足蹴にして遂にはチェーンソーを持ち出しガーゴイルの首へと斬りつけるもののやっぱり傷一つつけられない。

 そんな騒がしい日々もある事件をきっかけに一変。ガーゴイルはどーにか吉永家の門番の地位を獲得し、近隣に起こる泥棒事件を解決したり近所に暮らす動物や狛犬や「考える人」のブロンズ像の相談にのって信頼を得る。ところがここに新たな問題。ガーゴイルを狙う謎の人物が現れ吉永家を襲ったものだからもう大変。ガーゴイルを作ったらしー骨董商の黒づくめ美女(年齢不詳)の秘密もこれありで、錬金術やら魔法やら、バックドロップやらパワーボムが飛び交うドタバタコメディが繰り広げられる。

 超悪人とかおらず悲劇とか起こらずハラハラさせられても最後にはホンワカさせられる、楽しくって面白いストーリーに好感。キャラ立てにも語り口にも冴えを見せる新人の登場は、これからの活躍にも大いに期待が持てそー。とりあえずは高原イヨちゃん(16歳、ではなく年齢不詳の骨董商)のホンワカとしつつも得体の知れない言動に注目。あと寝ている娘の双葉に多分パワーボムを軽々と見舞うママさんにも。日向悠二さんのイラストも可愛くって楽しくって最高です。

 防寒の支度を整えてから「国立霞ヶ丘競技場」で開催された「全日本女子サッカー選手権」の決勝戦、去年と同じカードとなった「田崎ペルーレFC対日テレ・ベレーザ」の試合を見物に出向く。すでに開場時間を過ぎて5万人の来場者に座れる席もないだろー、なんて心配をしたかったけどそこはまだまだマイナースポーツ、メインスタンドの真ん中あたりを埋めた程度の来場者数で去年から今年と次第に知名度を上げてはいても、やっぱりまだまだ厳しい状況に女子サッカーがおかれていることを痛感させられる。

 とは言え去年に引き続いて川淵三郎・日本サッカー協会会長が来場しては選手を激励し、試合を最後まで観ては勝利したペルーレ(そうですペルーレが2連覇なのです)にトロフィーを手渡す熱の入れぶり。選手権の公式プログラムにも川淵キャプテンは登場して、大住良之さんのインタビューに応えて「日本の女子サッカーを多くの人に認めさせ、メジャーにしたいという使命感がある。それは、僕らが東京オリンピックの前に持っていた使命感と通じるものがある」とまで言って、女子サッカーの普及と盛り上げをミッションとして推進していく考えを明らかにしている。これがあるからいくらジーコ監督がポン酢でも、キャプテンに責任をとらせたくないんだよなー。取る必要もないんだけど。

ポストにはねられたボールに追い越され、センターサークルへと肩を落として戻る小林弥生選手。残酷  戻って試合の方は前半こそペルーレの柳田美幸選手と土橋優貴選手の両サイドによる突破とクロスが炸裂し、ベレーザのスターティングに名を連ねたディフェンスの須藤安紀子選手のどこか痛めているのか走れず蹴れないプレーもあってにペルーレが優位に試合を進行。フリーキックからのヘッドと直接フリーキックで2点を取ったものの、ベレーザもコーナーキックからのヘッドとあとは後半にクロスが相手にあたってオウンゴール気味に入って同点へと追いつきそのまま延長へ。10分ハーフのVゴール方式で行われた延長は、本番の後半から調子を上げて攻めまくってたベレーザが勢いをそのまま引き継いでペルーレゴールへと迫るもののラインを割ることはできず、そのまま引き分け、PK戦へと進んでしまう。

 どんなに強いチームでも、ってゆーか強いチームだからこそかかるプレッシャーも増して勝てなくなってしまうのが、高校サッカーの市立船橋高等学校を見ていても分かるPK戦。男子にも優るコントロールで丁寧にコーナーをつきペルーレ、ベレーザとも次々に成功させていったなかでおそらくは10人中でもっとも名を知られ、実力もトップクラスにあるベレーザの小林弥生選手が、94年のアメリカW杯決勝、ブラジルを前に涙をのんだイタリア代表のロベルト・バッジョ選手よろしく緊張感からかゴールポストに充ててしまって失敗。これが唯一の罰点となってベレーザが返り咲きの栄冠を逃し、ペルーレがLリーグに続く今期2冠、全日本女子サッカー選手権では2連覇の栄冠を手にした。

沈黙と、笑顔と。小林酒井の主力2人は毎年が勝負だけに厳しい表情。五輪予選は笑顔を見せてくれー!  失敗した小林選手の胸中におとずれる哀しみたるや想像を絶するものがあったようで、PK戦中はそれでもしっかりと立ってゴールを見つめていたものの、決着がついたと同時にセンターサークル付近に崩れ落ちて顔面を覆って泣きじゃくる。そのまま数分間は立ち上がれない状態が続いて、1人に責任を押しつけてしまうPK戦の残酷さを目の当たりにさせられもらい泣きをしてしまう。準優勝と言えば立派過ぎる成績だけど、リーグを無冠に終わったこと、同点に追いつき最後まで勢いを意地したことが気持ちを苛んだのかメダルを受け取りに上がったテラスでも小林選手や中盤の要、酒井與恵選手の顔は沈んでおめでとうって言葉をかけられない。

 一方で今期から参加の若手選手は晴れの舞台で存分に実力を発揮し、あるいは春から始まるアテネ五輪の予選を戦う日本代表への参加も可能性として浮かんて来ただけに、神妙な顔ではなく笑顔を見せてくれていたのが見ていて印象に残った。どっちが正しい、ってことではなくどっちが間違い、ってことでもなく、それぞれの立場において感じた心境ってことなんだろー。つまりはそれだけ小林選手は重要ってことで、今回のPK失敗を引きずらずに気持ちを切り替えLリーグでの女王返り咲きとそして、アテネ五輪予選の突破に持てる才能のすべてを披露し復活の笑顔を見せてもらいたい応援してます小林選手、酒井選手。ペルーレ所属の日本代表m、川上直子選手と山本絵美選手には2冠2連覇の歓喜を五輪予選でも是非に見せて欲しいもの。応援に行きますどこで開催されたって。仕事なんてほっぽりだして。


【1月24日】 まったく休みだってのに会議会議と会議漬けな日々に会議で手当が支給億万長者になっちゃうぜってクウルな反応を内心で返しつつ会議を追えて本蓮沼の西ヶ丘サッカー場へ。いよいよたけなわの「全日本女子サッカー選手権大会」は準決勝の2試合のうちの「田崎ペルーレFC対さいたまレイナスFC」が後半の半ばに差し掛かっていて、1対0でリードするペルーレをレイナスが必死においかけるものの及ばず逆に反撃をくらっては、日本代表ゴールキーパーのレイナス山郷のぞみ選手の好セーブでしのぐ展開が続く。

 レイナスは田口禎則監督が相変わらずの激しい怒声で選手に奮起を促したものの1歩及ばず結局、そのままペルーレが逃げ切り去年に続いての国立霞ヶ丘競技場での決勝へ。とはいえ川上直子選手に山本絵美選に大谷未央選手と日本代表のアタッカー陣を揃えたペルーレ相手に1対0でしのぎきる底力を見せてくれたレイナスだけに、今年も超えられなかった壁を突破するだけの何かが見つかれば来年は、ペルーレやLリーグでも上位リーグ最終戦では勝利を奪った日テレ・ベレーザといった強豪たちを相手に、互角の戦いを見せてくれそーな予感。鍵は小ダヌキ的な愛くるしさと圧巻のテクニックを持つ伊藤知沙選手17歳の華麗なる成長か。3位だからとは言え負けた試合の直後でもらう銅メダルの苦さからしみ出た涙を拭いて少女たちよ、成長せよ。

負けた後でメダルを渡したって喜んで受け取らないと思うんだけど。写真だって泣き顔だし。考えて欲しいよなあ  続く準決勝2試合目は我らが酒井與恵選手を軸に小林弥生選手ら日本代表選手たちに加えて、Lリーグ新人王の近賀ゆかり選手に日テレ・メニーナ上がりの17歳、山口麻美選手や豊田奈夕葉選手石清水梓選手井関夏子選手といったピチピチの若手を揃えて尻上がりに調子を上げてきているベレーザと、遠く三重県からかけつけた伊賀フットボールクラブくノ一の戦い。日も下がって寒さが増す中で始まった試合はベレーザが攻め気味に進めたものの前半は得点が入らず、Lリーグでも優勝と準優勝を最終的に分けた得点力不足が続いているのかって心配したけど、後半に入って正面からのフリーキックを近賀選手が決めてからとゆーもの、怒濤の攻めでキーパーすらかわして大野忍選手が追加点を奪いさらに、入ったばかりの井関選手がクロスをあわせてゴールを奪って3対0でベレーザが勝利して、これまた去年に続いての決勝へと駒を進めた。

 後の2得点はゴールの真裏で見ていてなかなかのスピードとテクニックが間近に見られて、流石や”女王”だけのことはあるって感心したけどさてはて明日の決勝でも、同じ怒濤の攻めを見せては去年、悔し涙をのんだ国立の舞台で再び”冬の女王”の座へとベレーザは返り咲けるのか、それともLリーグ優勝の余勢をかって去年に引き続いての優勝の栄冠をペルーレが獲得するのか。純粋にカードだけでも楽しみがつきない上に、春から始まるアテネ五輪に向けた予選に出場する選手も少なくないだけに、明日の国立には5万人とはいかないけれどせめて1万人くらいの大観衆が訪れ大声援を贈って、出場する選手たちに自分たちはこんなに気にしてもらえてるだって思わせ五輪予選での奮闘につなげてもらいたいもの。寒くたって雪が降ってたって行くぞ国立、待ってろキャプテン川淵三郎・日本サッカー協会会長。

 合間に読書。海原零さん「銀盤カレイドスコープ VOL.3」(集英社、各590円)は前作で華麗なスターダムへと躍り出た高慢にして天才にして美少女のフィギュアスケーター、桜野タズサがひょんなことからペアに挑むことになったって展開で、相変わらずの悪口雑言罵詈雑言を吐き世界を敵に回しながらも、やっぱり持ち前の才能とそれから前作とは形を変えた気持ちの支えを持って努力し勝利していく様に感動させられる。気になるのは例の”アイツ”の処理だけどそこは非日常のループに陥ることなく、新たな出会いを用意し更なる成長を促していて、前向きな感じを与えてくれている。

 やられキャラと化しつつある犬猿の仲のドミニク・ミラーはさておいて、シングルに戻っても超天才のリア・ガーネット・ジュイティエフを超えていくのは今のタズサにはしんどそう。かといってペアはやってしまって次とかちょっと、どーゆー話になるのか考えつかないけれど他にもアイスダンスがあったりするフィギュアの世界、あるいは同じスケートってことならスピードがありショートトラックがありホッケーだってあるんで、桜野タズサにはそーした競技の枠組みをぶち壊す勢いでどんどんと新しい分野にチャレンジしていってもらいたいもの。いっそ同じウインターってことでスキージャンプなんかどーだ。それもペアで。リアと2人ならなおグッド。白銀に百合の花散る。

 さらに草上仁さん「凶眼リューク 黒真珠の瞳」(エニックスEXノベルズ、940円)。何でも見通す”凶眼”を持った探し屋を営むリュークのところに持ち込まれたのが、夫を殺した犯人を見つけて欲しいとゆー妻の依頼。遺留品を手がかりにして探し始めたリュークとその助手でホビットのフィボだったが、予想どーりに一筋縄ではいかない事件だったよーで官憲の邪魔が入り殺し屋たちも立ちふさがってリュークの仕事を妨害する。

 やがて浮かび上がってくる公国の失踪した世継をめぐる恐るべき陰謀。ゴブリンにエルフにホビットにヒトとファンタジーの住人たちがリアルな街の暮らしを営む舞台ならではの、種族間にある思考や行動様式の差異もからめながらのミステリー的謎解きはなかなかに奥深く、ラストに来る大逆転のカタルシスも加わって世界観から物語からキャラクターまでのすべてを楽しませてくれる。どこか謎の多いリュークの正体、間抜けなよーでいて抜け目のなさそーなフィボの秘密と興味の持ち所も多々あって、これからの続刊も楽しめそー。っても出る保証なんてないからなー、「EXノベルズ」。せめてリュークが何者か、くらいは明かして欲しいもの。小林智美さん描くショートヘアのエルフの少女(といってもエルフなんで良い歳)のサイプレスがなかなか。


【1月23日】 平日金曜の午後5時からなんて時間に設定されたゴルフに駆け付けるために、バスであれは名古屋の八事から本山へと抜ける起伏に富んだ路を向かっている最中に、さてどのバス停で降りたら良いのか分からず経路図を見て思い出そーとしたものの、2つ3つ当たりはつけられても正解には至らず、さらにあろーことか肝心のゴルフバッグをどこかに置き忘れてきたことに気付き、家へととって返して身繕いをし直し、時計を見上げると待ち合わせの時間まであと20分くらいしかなく、もう絶対に間に合わないと焦りまくるとゆー、こんな内容の明け方に見た夢が意味するものは何だろー。ゴルフも謎ならバスも謎。気持ちに焦りが生まれているのか。何にそんなに焦っているのか。未来、だな。

 「芥川賞受賞作」って帯がついた2刷が出始めた金原ひとみさん「蛇にピアス」(集英社、1200円)のまだ初刷が出回っている頃に買っってあった奴を掘り返して読む。奇妙なタイトルだって思ったけれど読んで納得、なるほど本当に蛇にピアスをする話だった。もちろん蛇といってもそのへんをはいずり回っている大蛇毒蛇の類ではなくって「スプリットタン」って蛇の舌状に先が2つに割れた舌にピアスをするのかそんな舌を作るためにピアスをするってことで、タイトルから金属に貫かれた蛇がびちびちとはね回る猟期なシーンを想像して敬遠していた人でも、そーゆーシーンはないから安心して読んでもらって構わないとここでは言っておこー。舌に穴をあけてピアスを通すシーンはあるけれど。どっちが気色悪いかって? そりゃやっぱ蛇でしょー。

 まあでも普通や舌にピアスの方が猟期で芥川賞受賞の話題作だから読んでみよっかって買ったおばさんおじさんは、1ページ目の冒頭からいきなり出てくるスプリットタンのエピソードに目を白黒させそーな気が。おまけにそんな舌を持つ男にいっぺんに引かれて舌にピアスを開けにいき、体にタトゥーを入れることにしてさらにスプリットタンの彼氏がいなくなってとんでもない姿で発見されて、それでも平気で生きていく女の子の姿が描かれているこの小説、最後まで読み通せるんだろーかどーなんだろーかって買っていくおじさんおばさんに聞いてみたくなる。わずか124ページなのに「日蝕」以上に読み通されない小説になったりするのかな。読み通されたらされたで世界がこーゆー生き方を平気で受け入れるよーになったってことで別の心配も起こって来るけど。2刷以降の売れ行きに注目。

 「蛇とピアス」と同じ日に同じ書店でついふらふらと、サイン入りだからってこともあって買った藤谷治さん「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」(小学館、1365円)もついでに一気読み。こっちもページ数こそ190ページを短いものの字がびっちりとしている上に、登場人物からシチュエーションから細かくそれも比喩なんかを混ぜながら徹底して描写していく濃密な筆遣いにページを繰る手が止まってしまって、読み通すのに「蛇にピアス」の倍くらいの時間がかかってしまう。もちろんここで繰る手が止まるってのは難解だからってことじゃなく、濃密過ぎる描写が読んでて面白すぎた関係で、一字一句を逃さず読まなきゃって気分にさせられたってことなんで「何だ難解なんだ」なんて思わないで頂きたい。実際はまるで逆、ギャグ満載。読めば笑えること請け負い。

 だいたいが「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」ってタイトル自体がギャグ。どーしてそれがギャグ? って分からない人も読むこと必須。キャラクターの紹介から始まりそんな彼らがどーゆーいきさつでひとつ会社に集うよーになってさらに、彼らが同じベンツのミニバンで世田谷から浅草の会社へと通うよーになってそこで、かくも不思議な「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」って言葉がささやかれ出したかが分かった時、そのくだらなさ間抜けさに笑えて浮き世の憂さも吹き飛ぶから。それでもまだダメって人にもさらに強力な言葉が繰り出されるからご安心。「蛇から血が出てヘービーチーデー」「蛇から血が出てへービーチーデー」。もー言ってるそばから笑えて来る。真面目に深刻に世の中のことを考えるのがとてもつまらないことのよーに思えて気持ちがすっきりする。心身のリフレッシュに役立つ小説、憂き世に苛立つサラリーマンにOLの人は買って読んで一緒に唱えよー。「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」「蛇から血が出てヘービーチーデー」「芥川賞を取った作品は」「蛇から血が出てヘービーチーデー」。なるほど確かにそーゆー小説でもあったけど、「蛇にピアス」って。

 「週刊わたしのおにいちゃん」の2号を確保(当然2つ)してから赤坂プリンスホテルで開催された「第2回アニメ企画大賞」の授賞式へと向かい「月刊アニメージュ」の編集長の人とか「劇画村塾」のとてつもない偉い人とか「マカラガ」の人とかを見る。もちろん受賞した人じゃなくって審査にあたった人たちで、ほかに押井守さんも選考委員になっていたんだけど「イノセンス」の追い込みが佳境って時期が時期だけに今回は欠席してしまい、いつかイベントでサインをもらった時以来のご尊顔拝見とはいかなかった。ちょっと残念。けど佳境っていいながらも「イノセンス」にびっちりって訳ではないよーで、授賞式といっしょに前回大賞を受賞した企画をアニメ化する際の観衆を引き受けたとか。「攻殻機動隊」から「アヴァロン」「ミニパト」そして「イノセンス」と仕事を選んだか絞った状態が続いていた人が立て続けに仕事をするとは何か心境あるいは生活に変化でもあったのかな。

 おまけに押井さんが監修を担当するこの「風人物語」って話は会見に登壇したプロダクション・アイジーの石川光久代表取締役によれば「戦車も銃も犬も出てこない」って昨今の押井さんにあるまじき企画で、何から何まで犬出まくりの「イノセンス」からいったいどー心境の変化だって訝りたい気も浮かぶけど、この作品を引き受けた理由として押井さん、日常が描けてるってことがあったよーで、「うる星やつら」は基本的には宇宙人やら雪女やらがわんさと来てはドタバタを繰り広げる非日常の話ではあったけど、時々差し挟まれる日常をしっとりと描いた作品があったことが全体の人気の押し上げと長期化に寄与してた、って思っている押井さんの食指が伸びた模様。絵が動き作品として見られるまでにはまだしばらく時間がかかりそーだけど、「うる星」で知った押井さんの才気が今一度、見られる作品になる可能性を思ってその時を待とう。

 戻って「第2回アニメ企画大賞」の方は大賞に何でもカプコンの「デイル・メイ・クライ」とかを手がけたクリエーターのじんのひろあきさんが応募した、「ドリトル先生」を半ばモチーフにして動物の言葉が分かる男を主役に据えた作品が受賞。登壇して挨拶するなり「アニメよりは先にゲームにしたい」って言ってのけてだったらどーして「アニメ企画大賞」に応募したんだろー、って不思議に思ったけれどここで賞を取ることで企画として認知されれば、目的へと近づくことができる。おまけに(ってゆーかメインだけど)アニメ化されればその認知度も一気に増大するってことで、手段としてはありだったって言えそー。こーゆー認識でこれから企画を出してくるプロの人とか増えるのかな。素人が雄飛を目指して応募し大賞なり佳作をゲットすることが難しくなって、新人の発掘って当初の趣旨とは乖離が出る可能性もあるけれど、企画を商業的なプロジェクトとして転がしていけて、応募者自身もクリエーターとしてプロジェクトに噛めるんだったらこれはこれでありなのかも。見る側もプロだろーが誰だろーが面白い作品が作られ見られれば万々歳な訳だし。でも未来を考えるんならリアル新人が賞を取り次へと足を進める賞ってのも必要だし……。今後どーなるかを注視。1回目の大賞受賞者なのにアニメ版「風人物語」では原案となっている人の活躍ぶりも含めて。


【1月22日】 エルダー向け、ってのが果たしてどの位の年代を差しているのかあんまり判然とはしないけれど、カルチュア・コンビニエンス・クラブが日本相撲協会と組んで出すことになった「相撲ビデオ」のラインアップで、取り上げられているのが”若貴”と並び称された兄弟ではなく、「栃若時代(ってあったっけ?)」を作った栃錦に若乃花の対戦を取り上げた「大相撲伝説1 栃錦対若乃花 栄光と涙」って辺りから想像するに、60歳を過ぎて彼らの全盛時代を知るご老人たちを相手にしたビジネス、ってことになるんだろー。

 もっとも同時に栃錦、若乃花のフィギュアを発売するのがなかなかに微妙。雰囲気だけ似せた陶製の人形だったら年輩の人でもすんなり受け入れられるだろーけど、今時の妙にリアルに造形されたフィギュアを果たして得々と、喜び1つ2500円も出して買っていってくれるのかがちょっと分からない。模型ショップとかで売れば模型マニアも薄い相撲ファンでも目にして買う可能性はありそー。にも関わらず今回売るのは両国国技館の売店ってことで、よっぽどのファンじゃなければいかない場所だけに果たして来てくれた年輩のファンにアピールできるのかが心配になって来る。

 まあそこは逆にこれまで見たこともないかったリアルなフィギュアを目にして「買わなきゃ」と思うご老人達だっていそーなんで、案外に国技館でも人気のアイテムになったりするのかも。画像を見ると化粧回しを付け綱を張った立ち姿で、今時のあんこぶくぶくな横綱たちとは違ってそれなりにスリムな体型で、でもがっしりとした体格で背筋もしゃんとしているだけに、ケースに入れて飾ればその凛然とした雰囲気でもって、部屋に漂う悪鬼の類を払えるかも。双葉山とか柏戸大鵬とか輪島北の海とか出ないかな。曙ボブサップ……いらない。

 トルシェが憎くて嫌いで仕方がない反動でジーコを徹底擁護し彼への批判はすなわちトルシェを称揚することなんで絶対認めないって姿勢は分からないでもないけれど、その意がちょっぴり強すぎるんだろー永井洋一さん、「ナンバー」2004年2月5日号でジーコ監督には約束事がないって批判する人たちに向けて約束事なんて必要か、約束事がなければ守備もできないし攻撃もできないのか、って吠えて逆批判を展開している。なるほど「約束事」って語句を悪く解釈すれば規則でぎりぎりに縛ってその通りに動かなければ勝てないんだってことになって、それは良くないと異議を唱えたい気になるけれど、これを例えば「共通イメージ」なり「コミュニケーション」と置き換えれば、それがないと勝てないって認識から「約束事」がないって言う意見は分かる。実際不足しているし、だからそれほど圧倒的には勝てないし。

 ジーコ監督を批判する人が想定する「約束事」ってのもたぶん、そーしたニュアンスのもので、教えてもらえないとできない、聞いていないことはしないといった「現代の青少年の中に巣くう感覚と同様の傾向」ではないってと思うんだけど、そのことに気づいていないのか気づいていないふりをしているのか、永井さんはどこまでも「約束事」を上が押しつける不可侵の法律みたくとらえてそれを求めるジーコ批判者を逆批判するだけ。共通イメージの醸成をさせずコミュニケーション促進の手がかりを持たせない現代表の課題から目をそらしている。

 「習っていない」「聞いていない」「教えてもらっていない」からできない、といった子供が増えていることへの懸念は確かに当たっている。けどそれと「約束事」、すなわち勝つために全員が等しく抱く共通イメージが持てずにいることは別。だったらいったいどんな共通イメージが必要なんだ? 「いったいどのような『約束事』を塗布していくべきなのか、具体的に示すべきだろう」? って言われても評論家じゃないから「一つひとつのプレーに何m、あるいは何秒といった、数値的な制限を加えるものなのか。また、その『約束事』がもくろみ通り実行できなかった時に、選手はどのように行動すべきとするものなのか」は答えられないけれど、評論家だけじゃなく百戦錬磨の選手たちがコミュニケーションの不足を訴えている事実は厳然としてある訳で、それすらも子供のわがままと斬って捨てる気があるんだったら良いけれど、そうじゃないなら逆批判の言いっぱなしに終始しないで誰もが安心できる言葉を紡いでいただきたいもの。「勝つにはボールをゴールに運ぶ」って認識は与えられているんだって言われればそれまでだけど。

 落語ってゆー芸がとてつもない面白さを持ったものだって感じてはいてもだからといってさあ見に行こうとならないのは、ひとつには今さらこの歳になって落語を見に行っても、ずっと見続けていた人のよーにはその面白さの奥深さまでを感じられないだろうって半ば悔しく半ば妬ましい気持ちがあったりするからで、そんなの当然だよって言われて当然だとは言え、そこは面白さがあるんだったら骨の髄までしゃぶりつくしていないと納得できないスノッブでオタクなマニュアル野郎、全部が理解できなんだったらいいやと格好をつけて引いてしまって結果、毎日どこかで必ず落語が開かれている東京って環境に身を置きながらも、今に至るまでホールにしても寄席にしても落語を見に行く気力が沸かない。

 吉川潮さんが落語家をはじめ出会って贔屓になった芸人たちの実に40余人について取り上げた文章が、ぎっしり収録された「わが愛しの芸人たち」(河出書房新社、1600円)を読むとなおのこと、長い経験がないと落語の隅々までを楽しみ尽くすことはできないんだって辛い気分にさせられるけど、一方でそこに綴られた落語の隅々までをしゃぶり尽くす素晴らしさが分かって、やっぱり落語を見てみたいって強く激しく思わされる。まだ小錦と名乗っていた頃にお旦となって世話して「毛唐を見たか!」と絶賛した快楽亭ブラックさんの今の活躍ぶりは、若いけど凄い芸人を見つけて見守る楽しさを感じさせてくれるし、ずっと苦々しく思っていた桂三木助さんが大病を経て良い芸を見せるようになった姿に感じ入ったことを書いた文章も、先代を知り当人をずっと見続けたからこそ分かるその良さがあるんだってことを教えてくれる。

 その三木助さんが自殺したことを前後の細かな当人の言動なんかも紹介しつつ詳細に書いた文章に、こめられた哀惜と慟哭の意の重さといったら。そんな気持ちになれるくらいのドラマを落語と落語家たちが持っているんだと知れば、これを見ないでおく手はないって思うんだけどでもやっぱり、今さら自分なんかがって自虐の念が浮かんで身を縛る。心にこびりついた下らないこだわりをとっとと捨てて、還暦から喜寿米寿を進む数十年をかければあるいは吉川さんの足先くらいには落語を、芸能を楽しめるようになるのかな。読めば読むほど立川談志さんの高座を拝んでおきたい気になるなあ。あと丸山おさむさんって声帯模写の人も。


【1月21日】 思い出さなくってもよく覚えている1996年10月18日、今は無き佐賀町の「食料ビル」にあった「佐賀町bis」で開かれていた展覧会を見て、「この展覧会にもロリコン漫画のキャラクターだけを抜き出したよーな『1年A組エミリちゃん』とゆー作品があって、得体の知れないパワーを出していた」って、そのアーティストに会ったこ感想を書いたけど、パワーの得体の知れなさが衰えるどころかますますスケールアップして世界を席巻していくとは、当時は流石に思い抱きはしなかった。

 けれども約8カ月後の1997年6月6日に西日暮里のアートスペースで巨大なキューブ状の蒟蒻に頭を突っ込む姿も壮絶なら匂いも凄絶なパフォーマンスや、「相変わらずひたすらにロリロリな少女を紙片に描き継いでいくスタイルで、会場にはそんな作品がおよそ数百枚、床すれすれの壁に虫ピンで止められてい」た様を見た時に、この偏執的なスタイルを貫き通せばあるいはとんでもない存在になるのかも、ってことを嘘じゃなく感じた。あれから7年。

 今は「ミスター」って名乗っているこのアーティストは佐賀町でも、西日暮里でも見せてくれたスタイルを変えずむしろより徹底させて来ているよーで、発売されてた作品集「Mr. by Mr.」(カイカイキキ、2500円)を読んでみて、載ってる作品が最初に佐賀町で、それから西日暮里で見た「ハイジ」的アニメ絵美少女を土台に持ちながらも、シチュエーションが変わったりパースが付いたり小道具やファッションが違ったりしていて、この間に描き手に起こった”進化”みたいなものを感じさせられた。

 巧さ、って意味でも随分と上がっているよーで昔はモチーフとしてのハイジ的美少女を伺わせる部分がややあったのが、今は文脈を抜きにして見てもそれなりの可愛さが放たれていて、買って貼って眺めてみたいって気にさせられる。もっとも師匠に当たる村上隆さんが帯に寄せてる言葉の下にある文句だと「海外で完売伝説を作り続ける男」だそーで、きっと価値も右肩上がりの滝登り、上がって僕の下がり続ける給料ではもー買えない値段になってしまっているんだろーなー。やっぱりあの時に買っておけばと後悔。見る目はあっても金を出す甲斐性のなさが僕を未だに貧者にしてしまってるんだろー。

 起きてTV版「攻殻機動隊」はメカばかりがよく動いてた前週から還ってキャラクターもしっかりと描かれそれなりに動くよーになってて善哉。けどそーした見かけよりも物語方でしっかりとした物を見せてくれてロボットの魂の有るや無しやってな深淵なテーマにあれこれ考えさせられた。けどあれや本当や裏で誰かが操って諦めさせたのかな。時間が重なっていた関係で「エコエコアザラク −眼−」は撮れず。これも佐伯日菜子さんの黒いミサに立てたエコエコロジストの誓いの影響か。やっぱり偉大な人だったんだなあ、横浜F・マリノスを完全優勝させてしまったくらいだし。

 東西線経由で国分寺へと出向いて「攻殻機動隊」にも関わる取材。朝なのに高いテンションで語る偉い人の凄さにあてられ浮ついた気分を引き締める。もー大昔に訪ねた時もゲームソフトを作ることでデジタル機材を揃えそれをデジタルアニメを本格的に作り出して業界で1歩2歩と抜け出す土台にしたんだって、戦略の立て方に感心した記憶があるけど今も変わらず1年先、3年先を踏まえてあれこれ戦略を立てて活動しているって話をされて、こーゆー人がいてこその今の「日本のアニメは世界いちぃぃぃぃ」であってそれを、政治とか行政とかが著作権とか何かで保護しよーとしたって、保護すべき肝心の作品は出て来ないよって思えて来る。追い風結構。それを受けて何をすべきかってのを誰もが考える必要があるんだろー。

 そうそう思い出したよ「攻殻機動隊」の前の劇場版が米国で人気になって日本に凱旋した時に、宣伝プロデューサーみたいな役だったっけ、ポスターとかのデザインを担当したのが今をときめく村上隆さんだったっけ。お尻のぷりぷりとした士郎正宗さん描くところの草薙素子が配されたキラキラしたポスターだったって記憶しているけど部屋のいったいどこにあるんだろー。1997年3月20日の日記によると限定2000枚のそれをちゃんと買っているんだけど。価値とかやっぱり出ているのかな。まさか捨てたってことはないよなあ。捨てたかなあ。


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