半藤末利子著作のページ


1935年、作家の松岡譲と夏目漱石の長女・筆子の四女として生まれる。早稲田大学芸術科、上智大学比較文化科卒。夫君は半藤一利氏。

 


 

●「夏目家の糠みそ」● ★☆




2000年5月
PHP研究所刊
(1400円+税)

 

2000/06/06

本エッセイは、二つの部分をもっています。ひとつは孫として漱石に関わること、ひとつは子供が独立して夫婦2人きりという気楽な生活の周辺事です。
言うまでもなく、本書を読んだ動機が漱石への興味にあることは、当然のこと。ただし、漱石は末利子さん誕生以前に死去していることから、漱石自身については実母筆子(漱石長女)さんから聞いていたことが主体。その一方、鏡子(漱石夫人)さんは長寿で末利子さん自身も接していたため、筆子さんから聞いたことも加えて、鏡子夫人が生き生きと感じられました。
鏡子さんについては、末利子さん実父の松岡譲筆録・鏡子述の漱石の思い出から悪妻といわれることが多いのですが、私が同書を読んだ限りでは漱石に似合いの夫人だったと思います。本書読了後、鏡子夫人というのは些細なことを気にしない、さっぱりした気性の人だったように感じ、私の印象が誤りでなかったと思いました。
本書で一番興味を惹くのは、表題のとおり、夏目家の“糠みそ”。夏目家というより、鏡子夫人の実家から→鏡子→筆子→末利子さんへと継承されたものだそうです。漱石も食したであろう糠みその味は、今でも知人の間ですこぶる好評とのこと。
漱石が身近に感じられて、楽しい一冊です。

夏目家の糠みそ/餌箱のある庭/五十二年前の中学生/わが町

 


 

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