大島真寿美作品のページ No.1


1962年愛知県名古屋市生、南山短期大学卒。92年「春の手品師」にて第74回文学界新人賞を受賞して作家デビュー。2019年「渦−妹背山婦女庭訓 魂結び−
」にて 第161回直木賞、20年第7回高校生直木賞を受賞。


1.虹色天気雨

2.青いリボン

3.すりばちの底にあるというボタン

4.三人姉妹

5.戦友の恋

6.ビターシュガー(虹色天気雨2)

7.それでも彼女は歩きつづける

8.三月

9.ワンナイト

10.あなたの本当の人生は


モモコとうさぎ、渦、結、たとえば葡萄

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1.

●「虹色天気雨 ★★


虹色天気雨画像


2006年11月
小学館刊

(1300円+税)

2009年01月
小学館文庫化



2007/01/03



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結婚、離婚、未婚、各々の状況は違いながらもずっと続いている女同士の友情を描いた好作。

主人公の市子は離婚した後ずっと独り暮らし。近所に住む奈津は結婚して美月という10歳位の女の子に恵まれているが、突如として夫が出奔して行方知れず。まりには旭というカメラマンの恋人がいるものの、最近どうも関係がしっくりいっていない、というのがこの3人の状況。

夫が出奔したから行方を捜すという奈津に、市子は娘の美月の面倒を押し付けられ、何だかんだと市子もまりも奈津のことを気遣う。運動会に父親がいなくて美月が寂しがると言われれば、市子やまりを初め、共通の知人がわんさかと運動会に押しかけ異様な雰囲気で盛り上がるといった具合。
要は、お互いに経てきた年月の裏表も知り、各々の恋愛〜結婚〜離婚経緯まですべて腹蔵なく語り合ってきたからこその結びつきだなぁと感じられるストーリィ。ですから、本書の主人公はこの中心となる3人やその周辺にいる人物らとの友情にある、といって間違いないのです。

こんな関係はどうかと問われれば、羨ましいなァと思うところは多分にあります。ただ同時に、男同士だとこんなに内々の状況までばらし合えないようなぁという気がするし、3人の友情関係も各々の状況が違うからこそ続いてこれたのでは、と思います。
夫が出奔したからといってドラマティックな要素は本作品に殆どありません。日常のありふれた生活を書き綴った日記を読むような雰囲気があります。

それでも本書を読んでいるのはとても楽しい。お互いにどんな変遷があろうと、ずっと続いてきた友情関係は傍から見ても気分の良いものです。
また、美月というインパクトの強い現代的な女の子や、三宅というゲイの友人、その他諸々の友人たちの人物造形も本書の魅力のひとつ。
ごくフツーの女性たちが小説の主人公に躍り出てきた、本作品にはそんな意義も感じます。

兎にも角にも読んでいて女性同士の友情ぶりが楽しく味わえる作品。30代以降のフツーの女性にお薦めです。

       

2.

●「青いリボン ★★


青いリボン画像


2006年11月
理論社刊

(1500円+税)

2011年12月
小学館文庫化



2011/12/28



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柳瀬依子の両親は、小学生の頃から家庭内別居状態。
そして依子が高校生になった時に父親は福岡へ転勤となり、それを機に両親の離婚調停がスタート。とりあえず母親とマンションで2人暮らしとなったものの、母親が上海へ4ヵ月間長期出張をすることになったことから、さて依子はどうなるのか。
そんな時、同級生の
がうちに来たらと誘ってくれ、依子は梢の家の居候となることに。
その梢の家は、家族3人がバラバラでロクに会話もない依子の家と対照的に、両親、祖父母、兄、妹に犬のサブと大家族、いつも誰かの存在が感じられる賑やかな一家だった。
必然的に依子は、それまで考えもしなかった、自分の家を含め家族について実体験的に考えることになります。

家族とはいったい何なのか、自分の家族の有り様はどうだったのか。家族について初めて考えることを通じての、高校2年女子の成長物語、と言ってしまえば簡単ですが、もうひとつ特徴的な面が本作品にはあります。
それは、子供の頃は親の有り様によって生活は左右されるが、それはずっと続くものではなく、成長すれば親から離れてもちゃんと生きていけるもんだ、ということを語ったストーリィである、ということです。
親の借金苦のために祖母のいる台湾へ渡った同級生の
沖田君、家庭内別居中の親の元で成長した依子は前者の具体例ですし、梢の家に居候している依子、浪人中に一大決心を表明した梢の兄=拓巳は後者の具体例と言えます。
その意味での、依子の青春成長物語。清新な印象あり。

        

3.

●「すりばちの底にあるというボタン ★★


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2009年02月
講談社刊

(1300円+税)



2009/04/11



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児童小説です。
風変わりな長い題名ですけれど、「すりばち団地の底にあるボタンを押すと夢がかなう」、あるいは「・・・・・・」、という言い伝えに由来する題名。

主人公は小学生の薫子、雪乃、それに転校生の深沢晴人。その3人+雪乃の2歳年上の兄で中学生の邦彦
言い伝えを知った4人はそれぞれの思いからボタンを探そうとするのですが、晴人の聞いた言い伝えと、薫子と雪乃が知っている言い伝えはまるで正反対。どうなっているのか、どちらが本当なのかと3人は首を捻りつつ、真相を突き止めようとします。

ファンタジーっぽいストーリィに曳かれてついボタン伝説の真相にばかり気をとられてしまったのですが、読み終わった後にゆっくり考えてみると、夢がかなうボタンを探すよりまず夢を持つこと、その夢を叶えるために努力すること、が一番大切なことではないかと気づきます。
3人の周囲にいる大人たち、薫子の母親、すりばち団地に“アトリエそらみね”を開いたそらさんとみねさん、さらに晴人の祖母や薫子の祖父は文字通りそのことを実践している人たち。

すりばち団地はすりばちのような形の土地の上にできた団地。そのため歩き出すといつしか自然に、たかたかたかたか、と駆け出してしまうのですが、そのリズミカルな音がとても楽しい。
夢は語るよりまず実践、気持ち良い児童小説です。

  

4.

●「三人姉妹 ★☆


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2009年04月
新潮社刊

(1500円+税)

2012年03月
新潮文庫化



2009/05/10



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福池家の三姉妹は、亜矢・真矢・水絵
当然というべきなのかどうか、各々性格も違えば行動パターンも異なり、三者三様。
亜矢は失恋したかと思えば急転して見合いをしまくり、見事に結婚して今や専業主婦、男の子の母親。一方、真矢はキャリア・ウーマン指向で、不倫恋愛の過去があった様子。
3女の水絵は大学を卒業したとは言うものの、単館系映画館でバイトしつつ大学時代の映研仲間と自主製作映画作りに励んでいるという状況。
そんな三姉妹各々の、夫婦におけるゴタゴタ、一人でのゴタゴタ、恋人とのスレ違いによるドタバタを、水絵が語り手となって描き出すというストーリィ。

亜矢と真矢が1学年違いで双子のようであるのに対し、少し年の離れた水絵はやんちゃ坊主的。
こんな3人を眺めていると、家族における役割を見事に分担し合っていると見えないこともない。ことに水絵を見る2人の姉の視線は、自らの経験を踏まえて保護者的です。
要は同じ女性同士、まして姉妹ともなれば、表も裏もお互いにすべてお見通し、ということらしい。

それぞれにゴタゴタ、バタバタのストーリィ展開があり、いささか処世訓を含んでいるものの、あくまでこれは3人の姉妹だからこそのストーリィです。
自分も3人姉妹、少なくとも2人姉妹だという読者ならかなり入り込んでしまうのではないかと思いますが、如何せん私は長男で兄弟は妹一人。もうひとつピンと来ないところがあります。
ただし、私の従姉妹に3人姉妹がいて、上2人に対して3番目の年が少し離れているので、まさしく本書の三姉妹と同じ構成。
たぶんこうだったんだろうなぁ、という納得感はあります。
そんな思い入れがないと、面白味を余り感じられない作品だろうと思います。

三人姉妹/ジ・エンド/恋の奇跡/調和の幻想/セカンド・チャンス/ゴーストシネマ/天国は待ってくれる

   

5.

●「戦友の恋 ★★


戦友の恋画像


2009年11月
角川書店刊

(1500円+税)

2012年01月
角川文庫化



2010/01/11



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漫画家志望だった山本あかねを、絵の才能はないが原作者としての才能ならあると断言した、新人編集者の石堂玖美子
偶然にも同い年。その時から2人でタッグを組んだように、仕事に私生活にと、頑張って生きてきた。
“親友”なんていう言葉は相応しくない。そう、彼女は“戦友”だった。しかし、その玖美子は突然倒れ、帰らぬ人となった。

玖美子と知り合った当時、そして玖美子がいなくなり今一人で頑張っていかなければならない、筆名=山本佐紀の日々を、連作形式で描いた長篇小説。

自分の仕事に全力投球する、2人の若い女性の姿。賑やかで、活力に満ちていて、気持ち良い。
戦友だと思っている相手がいるからこそ、頑張れた、なのでしょう。そんな相手を失う寂しさ、如何ほどかと思うのですが、それでも残された人間は、一人になっても生きていかなければならない。
時に迷い、時に気力を失いながら、やがて再び立ち向かう気持ちに至る。そんな佐紀の姿には、玖美子の面影がしっかりと窺えます。
相手が亡くなってしまえば、親友関係は過去のものになります。
でも“戦友”とは、自分が戦い続けている限りその遺志を継いでいて、いつまでもその関係が失われることはないのでしょうか。

玖美子がいたからこそ、佐紀の今の日々がある。そんな日々を一人ヨロヨロと、それでも懸命に生きている佐紀の姿が、今は亡き石堂玖美子の面影を語り、実に素敵です。
短篇小説集であるかのように、どの篇もあっさりとした展開。
それでもこの関係、その姿、味わい、いいなぁ。
人と人の繋がりとは(玖美子とだけに限らず)こんな素敵なものか、と思わせてくれる、清新な魅力ある一冊。

戦友の恋/夜中の焼き肉/かわいい娘/レイン/すこやかな日々/遥か

  

6.

●「ビターシュガー Bittersugar ★☆


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2010年07月
小学館刊

(1400円+税)

2011年10月
小学館文庫



2010/07/26



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バツイチ、別居、恋人と別れた独身と、お互いの境遇は異なりながら、十代からの友人関係をずっと続けている女3人の友情関係を描いた虹色天気雨の続編。
登場人物はそのまま変わらず、主人公の市子をはじめとして、奈津、まり、そして奈津の娘=美月。
周辺人物として、ゲイの友人である三宅、まりの元恋人=、奈津の夫=憲吾という面々。

前作からは3年位が経ち、美月は中学生、市子たちはアラフォー世代。
最近、とかくアラフォー女性を主人公にした小説が多い。
理由のひとつは今話題、ということもあるのでしょうけど、女性にとってはこれから後の人生をどう生きるか選ぶ、岐路の年代ということが大きいのでしょう。
本書の市子、奈津、まりの3人を見ていても、そんな感じです。

市子、三宅から女ストーカーに恐怖を抱いている旭を居候として押しつけられる一方、美月は市子の家に押し掛け勝手に別居状態の父親とメール交換している。
旭と別れたとはいえ友人のまり、夫の憲吾と絶縁状態の奈津にどう向き合えばいいのかと頭を抱えている。もっとも、簡単に見破られてしまうのですが。

いずれにせよ、自分の悩みも弱みもさらけ出して相談し合える、この3人の友情関係、傍で見ていても楽しい限り。いつまでもこの友情が続くことを祈るばかりです。
さて、小説自体はどうなのでしょう、まだまだ続くのやら?

                  

7.

●「それでも彼女は歩きつづける ★★


それでも彼女は歩きつづける画像


2011年10月
小学館刊

(1500円+税)

2014年08月
小学館文庫



2011/10/28



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海外の映画祭で何かの賞を受賞した映画監督、柚木真喜子
かつて彼女に振り回され、あるいは現在彼女に関わっている6人の女性が各々柚木真喜子について語る、という趣向の連作風ストーリィ。
6人の女性の目から一人の女性を描くという点で、実験的な小説なのだそうです。

ただし、こうした作品が過去になかったかと言えば、そんなことはありません。
昔読んだ
有吉佐和子「悪女について」。様々な人が一人の女性について語るという構成の長篇小説なのですが、彼女を善人として語る人がいるかと思えば、極めつけの悪女として語る人もいるといった構成で、一体彼女は善人だったのか悪女だったのかと問いかけるようなストーリィ展開にスリリングさがある傑作でした。TVドラマにもなり、高視聴率を獲得していたと思います。
また、
朝倉かすみ「田村はまだか。中々登場しない田村という人物について語るというストーリィでは必ずしもありませんが、これもまた楽しい作品。

単に柚木真喜子について語るだけなら特筆する程の作品ではありませんが、彼女のおかげで自分たちにどんなプラスが有ったのか、生じたのかについて思い当たった時、俄然、本作品は光彩を放ち始めます。
それとはっきり気づかされるのは、
「伸びやかな芽」「流れる風」の篇。
あんなに夢中になった時期があったんだ、と思い返せる過去があるだけで、人生は豊かになるように感じさせられます。
そして同時に本ストーリィは、かつての戦友たちが今なお一人頑張り続ける柚木に対して贈るエールなのかもしれません。
最後の
「リフレクション」は、高校生の時に柚木の映画に出演した八木沢十和が描いたシナリオ、という体裁のエピローグ。
この一篇も、本書に更なる楽しさを加えてくれています。

転がる石/トウベエ/チューリップ・ガーデン/光/伸びやかな芽/流れる風/リフレクション

               

8.

「三 月」 ★★☆


三月画像


2013年09月
光文社刊

(1500円+税)

2017年02月
ポプラ文庫化



2013/10/06



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短大を卒業してから20年経った今、本書に登場する女性6人は各々に屈託を抱えて暮している。
そんなところに同窓会案内が届き、それを口実に
則江から領子の元に、学生時代に死んだ男友達=森川雄士のことを最近よく夢に見るという電話がかかります。それから次々と彼女たちの間に電話リレーが始まり、ついに東北の海辺町に住んでいる則子の元へ皆で会いに行こうと再会旅行の約束がまとまります。
本書は、そんな彼女たちの卒業〜今を一人一人描き、最後に一同が再会+αするまでを描いた連作短篇集。

領子は長年勤めた雑誌社が倒産して失業したばかり。は神戸で両親各々の介護に追われるだけの生活。明子は子連れの男性と結婚したものの、中学生となった義理の娘の言葉にショックを受けている。穂乃香は学生時代の仲間の一人と結婚して広島に住むがずっと胸に疑心を抱えてきた。則江は夫の浮気に呆然としているところ。そしてもう一人は・・・・。

学校を卒業して20年もの間には、大小様々、いろいろな屈託があるものでしょう。でも大事なことは、今も、生きているという事実。これからもまだまだ走り続けていかなければならない、こんなところでぼんやり立ち止まっている訳にはいかないのだ、というのも今を生きているから。そこが死んだ森川と自分たちとの大きな違い。ちょうど
重松清「ゼツメツ少年を読んだ直後なので殊更に強く感じるのかもしれません。
こうした点、男性よりも女性たちの方が逞しい、とつい思ってしまいます。いや、女性たちの方が立ち止まって振り返る機会が一般的に男性より多いのではないか。男性の場合、仕事仕事で定年近くまで同じペースで走り続けてしまうことが多いからかも。そう思うこと自体、男女均等法違反でしょうか(苦笑)。

短大を卒業して20年、久しぶりに友人たちと再会して若い頃の元気を取り戻すまでのストーリィ、爽快にしてとても楽しい。
私も体験していますが、良いものですよね、久々の同窓会って。


モモといっしょ/不惑の窓辺/花の影/結晶/三月/遠くの涙

      

9.

「ワンナイト」 ★★


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2014年03月
幻冬舎刊

(1400円+税)



2014/04/17



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ステーキハウスのオーナー夫妻が、まるで男っ気のない35歳の妹=を心配し、常連客の言葉に乗って開いた合コン。義姉が折角着飾らせたというのに肝心の歩、まるで乗り気のない様子。
ところが・・・たかが合コン、されど合コン。
たった一夜開かれた合コンから、いろいろな物語が始まるのですから面白い。

本作品、群像劇と言って良いでしょう。
参加した女性側に、バツイチだけど恋愛願望が全くないわけではない
住井瀬莉に、結婚願望がまるでない歩、結婚願望が人一倍強い宮本さなえという顔ぶれ。
一方の男性側といえば、結婚相手を見つけたい酒卸し問屋の二代目=
小野利也に、女性にまるで関心を示さない戸倉祐一郎、既婚者のくせにしゃあしゃあとデートを繰り返す米山正勝という顔ぶれ。
まるで振られたサイコロのように、思いがけず結婚も生じれば、失笑するような離婚も、さらには困惑する他ない同居生活も転がり出るといった風で、合コン一つとっても一様ではない、それはそのまま男女関係にも言えること。そういった声が聞こえてくるような気のするところが、本作品のユニークなところです。

騙し、騙される、それはもう合コンならずとも、男女の恋愛関係に共通して言えることではないかと思う次第です。
皆さんは本ストーリィ、どう受け留めるでしょうか。決して他人事ではなく、いつ自分が主人公になっても不思議ないと思えるストーリィであるところに面白さあり。

      

10.

「あなたの本当の人生は」 ★★


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2014年10月
文芸春秋刊

(1600円+税)

2017年10月
文春文庫化



2014/11/04



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新人作家の國崎真実は、担当編集者の鏡味に原稿をボツにされ続けた末に、かつての人気ファンタジー作家=森和木ホリーの内弟子にしてもらえと言われ、いきなりそのただっ広い邸宅に連れて行かれます。但し、実質は住み込みのお手伝い。
しかし、真実も敬愛するその
森和木ホリーは今や全く原稿を書けなくなっており、最近の短いエッセイ等はホリー承認の元、20余年秘書をしている宇城圭子が代筆していたと知ります。
真実はホリーから、そのベストセラー作品
「錦船」に登場してストーリィの導き手役ともなっている黒猫チャーチルの名前をもって呼ばれるようになりますが、そこに何の意味があるのか?

かつて人気物語を書いていた作家、物語は書けないけれどエッセイを代筆している秘書、書きたいとあがいている新人作家という3人の女性がひとつ家に暮すストーリィ。
本書はその3人が代わる代わる語り手となって進められます。
ホリーと宇城の固まったような生活に真実が加わったことで波紋が生じ、3人に新たな動きが生じます。そのきっかけが、自ら得意だという真実のコロッケ作りにあるところが面白い。

どうしたら物語を書けるのか?と思う2人の視点と、かつて書いていたホリーの視点は対照的です。
ホリー曰く、物語は書こうと思って書けるものではない、ということでしょう。
ではホリーがかつて宇城圭子にしたという
「あなたの本当の人生は?」という問い掛けの意味は?
何時しか“物語”と“人生”が同化して見えてきます。

物語とは? 人生とは? それをどう紐解くかは読者次第。
そこに本書を読む楽しみがあると思います。

  

大島真寿美作品のページ No.2

       


   

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