桂 望実作品のページ No.1


1965年東京都生、大妻女子大学卒。会社勤務、フリーライターを経て、2003年「死日記」にてエクスナレッジ社“作家への道!”優秀賞を受賞し作家デビュー。


1.ボーイズ・ビー

2.県庁の星

3.Lady, GO

4.Run! Run! Run!

5.明日この手を放しても

6.女たちの内戦

7.平等ゲーム

8.WE LOVE ジジイ

9.嫌な女

10.ハタラクオトメ


恋愛検定、週末は家族、頼むからほっといてくれ、手の中の天秤、我慢ならない女、エデンの果ての家、僕とおじさんの朝ごはん、ワクチンX、総選挙ホテル、諦めない女

 → 桂望実作品のページ No.2


僕は金になる、オーディションから逃げられない、たそがれダンサーズ、結婚させる家、終活の準備はお済みですか?

 → 桂望実作品のページ No.3

 


   

1.

●「ボーイズ・ビー」● ★★


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2004年04月
小学館刊

(1300円+税)

2007年10月
幻冬舎文庫化


2006/02/05


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母親を亡くしたばかりの小学生と偏屈な老靴職人との関わりを描いた、心温もるストーリィ。

主人公の隼人は小学6年生。先月母親を亡くしたばかりですが、消防士の父親に余計な心配をかけまいと、1年生の弟直也の面倒をしっかりみようとする。しかし、幼い直也は母親が死んだことをもうひとつ理解できていないようだ。
隼人自身、母親を失った衝撃や悲しみは大きい筈。それなのに父親の期待に応えようと頑張っている姿は健気ですけれど、痛々しい。
もう一方の主人公である靴職人の老人・栄造は、ガキが嫌いなうえに最近思うような靴が作れず機嫌が悪い。

栄造が隼人を受け入れて2人が心を通わせていく展開、頑迷に他人との関わりを拒絶していた栄造が隼人との関わりから他人に助けを求めざるを得なくなるという展開は、底辺にユーモアがきちんとあって楽しい。
隼人が、直人のことや女子全員にシカトされて途方に暮れたり、子供の心を理解しないでいる教師、息子たちの気持ちを察せられていない父親という重荷を背負ったりと、隼人の胸の内をしっかりと描いているところが、本作品の優れたところです。
暗い話になっても不思議ないストーリィを、隼人の健気な心を軸にしてユーモラスかつ爽快に描いているところが本書の魅力。お薦めです。

    

2.

●「県庁の星」● ★★


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2005年09月
小学館刊

(1300円+税)

2008年10月
幻冬舎文庫化



2006/01/21



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エリート意識ぷんぷんの県庁若手職員が、なんと地方の中堅スーパーで働く羽目に!
全ては知事の思いつきで、民間への人事交流研修が命じられたため。多数の中から選抜された“期待の星”だというのに、研修先では優秀な能力を発揮しようもないスーパーの現場。
戸惑い、怒り、憤懣・・・。さてその顛末は? というエンターテイメント小説。

ストーリィは、県庁のエリート職員であることを自負する野村聡と、野村の教育担当を任されたパート店員である二宮泰子、この2人を交互に主人公として第一人称で語られていきます。
とにかく面白い、楽しい。
その面白さは、鼻持ちならない「県庁さん」がスーパーの現場で役に立たないどころか、問題を起こしかねない振る舞いをするところにあるのは間違いありません。
誰しも(公務員でなければ)、民間と比べた公務員の頭の高さ、自己本位ぶりに憤懣を感じたことは一度や二度ではない筈。とくに、あのサンダル履きで人に応じるところが腹立たしい(^^;)。
だからこそ溜飲を下げる思いがするのです、というのが前半。
後半は、その野村が暴走し、その結果から漸く本当に頑張り出す姿が描かれます。
エリートを自負していた自分が、パートの中年おばさんに馬鹿にされ、こき使われる屈辱は、自分の身に置き換えればよく判ること。
単なるパート店員なのに実質店のすべてを取り仕切り、そのうえ鼻持ちならない野村の面倒まで押しつけられた、二宮泰子というもう一方の主人公像が秀逸。すこぶる楽しい。
優秀だと自慢している癖に女にコロッと騙されるところ、仕事の能力は高いものの息子と俳句には手を焼いている、そんなところも2人の良いアクセントになっています。
書評よりまず読書。最初から最後までたっぷり楽しめるエンターテイメントです。お薦め。

  ※映画化 → 「県庁の星

         

3.

●「Lady, GO」● ★★


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2006年07月
幻冬舎刊

(1500円+税)

2009年08月
幻冬舎文庫化



2006/08/02



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若いのに自己否定的な考え方ばかりする23歳、南玲奈が本書の主人公。
高校の頃両親がついに離婚し各々再婚、その頃から玲奈は一人暮らし。つい最近、暗くて面白くないと男に捨てられ、そのうえ派遣社員の仕事はなかなかゲットできないという深刻な状況。
地味系であることを自覚しひたすら真面目に働いているのに、何故仕事が貰えないのかと、ますます際限も無く自己否定的な心理状況に落ち込んでいく。
生活費にも不安が出てきた折りも折り、偶然再会した高校時代の友人の姉に勧められ、やむなくキャバクラ嬢として働き始めますが、どうせ客に気に入って貰えるはずがない、覚えて貰える筈がないとどこまでも自己否定的。
こんな調子が前半ずっと続くのでいい加減うんざりしてきそうなものですが、意外とそうはならない。このままで終わる筈がないという期待感がどこかにあるからでしょうか。

先輩や同僚にアドバイスされ、驚いたことに客に喜ばれ、次第に“みなみちゃん”(源氏名)は努力をするようになり、少しずつステップアップしていく。そしてキャバ嬢の仕事に遣り甲斐を感じるようになり、ついに自分の夢を見つけて新たな出発に足を踏み出すという成長ストーリィ。
前半はボーイズ・ビー」「県庁の星と異なる暗い感じのストーリィにやや戸惑いを感じたのですが、終わってみれば本当の自分探し、自分の夢探しというストーリィ。前2作と変わることない、桂望実さんらしい気持ち良い作品に仕上がっています。とても爽快。
主人公のみなみ以上に、周辺の人物造形が気持ち良いところも本作品の魅力。店のナンバーワンである美香のほか、店長の羽田、店のスタイリストである中年オカマのケイ、同僚のしほちゃん。そしてみなみちゃんを指名して通う店の客たち。彼ら善玉だけでなく、どちらかというと悪玉の側であるまいえみりというキャバ嬢、友人である我儘娘・詩音の人物造形も見ていて楽しませてもらえました。

本書を読む限り、主人公の働く六本木のキャバクラ“クリップ”は、至極健全そうな店である。努力の甲斐はちゃんと実り、しかもその結果は一般のサラリーマンより余っ程良い給料となれば、つい羨ましいという気分にもなります。でも、そんな簡単なものではありませんよね、たぶん。

自分を嫌いになりそうな日には・・・/勝ってこう…/Lady, GO・・・

 

4.

●「Run! Run! Run!」● 


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2006年11月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2009年07月
文春文庫化

2006/11/27

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題名から察せられるとおり、陸上競技を題材としたストーリィ。偶然かもしれませんけれど、風が強く吹いている」「一瞬の風になれからこうも陸上ものが続くと何でかなぁ、陸上競技が今流行だったかな?と思ってしまう。

上記2作がいかにも大学生、高校生らしい主人公であったのに対し、S大学陸上部の新入部員となった本書の主人公・岡崎優は、すこぶるイヤな奴である。父親から英才教育を受け、中学、高校を通じて抜きん出た実績を残してきたということもさりながら、自信家、自己中心的。そしてそれ以上に、他人を見下げ、仲間関係を徹底して拒否するその態度にそれは現れる。
その優がふとした事件から揺るぎ始め、本当に自分の力で走っているのか、何のために走っているのかという疑念に囚われるというストーリィ。

定例パターンのストーリィかと思える走り出しですが、ちょっと違うのは単に人間性の問題に留まらず、現代科学ならではの要素がつけ加えられているから。
とはいえ結局それは末節的なことに過ぎず、かえって本ストーリィを中途半端なものにしてしまったように思います。
ストーリィの結末に納得感を欠いた分、不満足。

  

5.

●「明日この手を放しても」● ★★


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2007年06月
新潮社刊

(1300円+税)

2010年05月
新潮文庫化



2007/07/01



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働き者で明るく一家の中心だった母親が事故で急死した後に残された家族は、無口な漫画家の父親、19歳で失明した潔癖症の妹、何でも人の所為にする文句ばっかりの兄という3人。
その残された3人はとても緊密な父子でなく、真司凛子の兄妹にしてもとても仲が良いとは言えない関係。
果たして崩壊せずに保つのやら?と思うような家族関係なのですが、ついに父親まで蒸発するに至っては何をかいわんや。
裁判官になる夢を失った凛子と、気配りを知らず仕事の不平ばかりの真司を交互に第一人称の主人公にしつつ、2人だけの家族関係を描いた物語です。

生活するために父親の仕事を一部引き受けた凛子、それに協力しない訳にはいかない真司。お互いに相手を見下すところのある兄妹という、ハラハラする関係。
家族であるが故にやむを得ず協力関係を結んだ2人でしたが、年月を経ていく中で、いつしか真司にも全盲の凛子を気遣う姿勢が生まれ、凛子にも兄の良い所を素直に評価する姿勢が生まれる。

投げ捨てられたような2人っきりの兄妹とはいえ、それなりに家族の姿を保ち、絆を深めていく2人の姿がとても味わい深い。
どんなに不器用であっても、少しずつ前進していれば、年月を重ねた相応分の成果は得られるのかもしれない。
そんな2人の姿から励ましを感じる不器用な人間は、きっと私だけではないでしょう。
これまでの桂望実作品に比べるとかなり地味なストーリィですけれど、味わい深さはこれまで以上と感じます。

1995年 凛子 21歳/1996年 真司 24歳/1997年 凛子 23歳/2001年 真司 29歳/2004年 凛子 30歳/2006年 真司 34歳

  

6.

●「女たちの内戦(セルフ ウォーズ) ★☆


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2007年11月
朝日新聞社刊

(1400円+税)



2007/11/24



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年齢も違えば置かれている状況も異なる4人の女性を描いた連作短篇集。
共通することといえば、4人ともが駅ビルにある足裏マッサージ店のオーナー兼店員の舞子36歳に、それとなく自分の思い、悩みを洩らしている、という点。
4人の女性が各々主人公ですが、この舞子という黒子役も自分なりの生き方を求めている女性たちの一人に加えて良いのではないかと思います。ただし、既婚、子供なしという舞子、既に悟っているらしい様子は、4人の先輩格という風ではありますが。

真樹は、男性を見ればすぐ“結婚?”と思いめぐらせる。美人なのに何故相手に恵まれないのか、というのが悩み。
・平凡な主婦の佳乃は、短大の同窓会で何もしていないのかと見下げられたような気分を味わう。何かしないといけないのか。
・結婚せず仕事に賭けたという訳ではないのだが、いつの間にかキャリアアップしていためぐみ。自分の望みは何なのか。
・離婚し子供を手放してまで自分の夢を追った治子ですが、今や自分の大切な店はギリギリの経営状態。どうしたら良いのか。

年頃の女性として真樹の気持ちは十分判るのですけれど、男性からするとちょっと恐い、いや多いに恐い。真樹のそんな目つきに気づいたら、きっと腰が引けると思う。現代社会、何もそこまで結婚に思い詰めなくてもと思うのですが、そう思うのはまだまだ男性の甘さでしょうか。
そんな真樹と対照的なのが、めぐみ。垣根涼介「君たちに明日はないの陽子を思い出します。自分を棚に上げてと言われるかもしれませんが、一人の方が気楽で良いというめぐみ、傍から見ると恰好いい!と思えるんだなァ。
最後の治子はいろいろな苦労を重ねてきて、曲がりなりにも現在一国一城の主。それでも悩みは尽きないというのが人生の難しさでしょう。この篇は本書を総括するような趣きを持っています。

本書は、男性読者より女性読者こそ共感を覚えるに違いない一冊でしょう。とはいえ、女性に限らず男性にだって焦り、悩み、迷いはあるのです。男性の一人として念のため。

真樹 二十九歳の戦い/佳乃 三十四歳の戦い/めぐみ 三十九歳の戦い/治子 四十五歳の戦い

    

7.

●「平等ゲーム ★☆


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2008年08月
幻冬舎刊

(1500円+税)

2012年04月
幻冬舎文庫化



2008/10/18



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瀬戸内海に浮かぶ小島。そこでは島民全員が平等であるという理想社会が実現されていた。
仕事は4年ごとに抽選で決定、島の事業収益は平等に分配。金銭は流通せず専用カードを使用、公共的なサービスの利用はすべて無料。そして大事な問題の決定は島民全員の投票による、といった具合。当然住民の数は制約が必要なので、本土へ出かけるのは自由だが、転入は制限されている。

主人公はその「鷹の島」で生まれ育った芦田耕太郎。その所為か30代の青年だというのに純粋無垢、島がユートピアだと信じて疑わない。
そんな彼に今回割り当てられた仕事は、島への移住を希望し選ばれた本土の人間に対し、移住の案内。フォローを行う普及班勧誘係。
必然的に彼は本土の人間と関わり合うことになるのですが、その過程で偶然にも絵の才能を見出され、彼に絵を描くことを促し、あるいは依頼してくる人たちに出会うことになります。ただ、彼の絵の欠点は人の感情、内面を描けてないことだという。
さて、理想郷は本当にあり得るのか、理想郷とはどんな社会なのか。そしてまた、絵を描き始めたことによって人間の内面を見ようとし出した耕太郎はその結果どんな道を歩むことになるのか、というのが本ストーリィの興味どころ。

ユートピアというと、私が連想するのはトマス・モア、そしてトルストイ「イワンの馬鹿」。後者民話はトルストイのユートピアを描いたものと私は思っていますが、それがユートピアとして成り立つのは全員が馬鹿であるという前提あってのこと。ですから、そこに住む人間の枠が広がれば広がる程ユートピアは成り立ちにくくなる筈。

本ストーリイは、耕太郎の信じる理想社会というものが現実に存在し得るのか?、そしてまた平等社会は本当に理想郷なのか?という問いかけを含んでいるものですが、それを耕太郎が絵を極めていくという過程と並行して描き出しているところに妙味があります。
挫折と同時に彼の人間としての成長(と言って良いのかどうか)が描かれている、その点において本作品もまたこれまでの桂望実作品と共通するところをきちんと備えています。
※なお、耕太郎と関わり合う登場人物の中で、客船クルーの柴田という人物がなかなか面白い。こうした成長ストーリィには導き役となるこうした人物の存在が欠かせない、と思った次第。

  

8.

●「WE LOVE ジジイ」● ★★


WE LOVE ジジイ画像

2009年01月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2011年12月
文春文庫化



2009/02/22



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後輩に自殺されたショックから逃げるように東京を離れ、過疎の元・川西村に移り住んだ元人気コピーライターが主人公。
何とか川西の活性化をと奔走する地域活性化職員に訊ねられるまま、適当に“ゲーム輪投げ大会”を口に出したら、何と本当に村おこしへと発展し・・・・、というストーリィ。
ユーモラスな村おこし小説といえば、荻原浩「オロロ畑でつかまえて。その二番煎じ的なストーリィかなと思っていたら、どんどん別な様相を見せていきます。
その辺り、荻原さんと桂さんとの作家としての持ち味の違いとも言えますし、また作品の書かれた時代・状況の違いもあるようです。

都会、田舎、どちらが良い・悪いと決められるものではなく、各々に長所短所がある筈。
悪いところを論うのではなく、良いところを見い出していこうというのが本ストーリィの持ち味。そしてその発見者という役割を担うのが、主人公の岸川信行という設定。
個性的なジジィ、ババァが沢山登場、川西におけるその独特なネットワーク、決してあなどるべからず。
そして人との関わりから逃げていた主人公も、地域活性化職員の池田、工場派遣スタッフの新山につきまとわれ、いつしかそのネットワークの中に取り込まれるという展開。
ジジィ、ババァ、肉体は衰えたといっても、唯一無二の親友関係あり、片想い関係ありと未だ未だ捨てたものじゃありません。
中でもしげジイ、亀ジイ、きよバアという3人の味わいが格別。

年老いてもこれくらい元気でいられたら楽しいだろうなぁと思いつつ、田舎だからこそ現役かつ元気でいられるのかも、と感じた次第。
過疎の村の現状を温かく、ユーモラスに描きつつ、滲み出てくるような味わいが何とも楽しく、嬉しい。
※なお、表題の「WE LOVE ジジイ」は、川西発・ゲーム輪投げ大会を盛り上げるために作られたホームページの名前。

        

9.

●「嫌な女」● ★★☆


嫌な女画像

2010年12月
光文社刊

(1700円+税)

2013年05月
光文社文庫化



2011/01/26



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小谷夏子石田徹子、お互いの祖母が姉妹という遠縁の関係にある同い年。しかし、性格は対照的。
自分勝手で詐欺のようなことを平然と行いながら、それでも男たちに好かれる夏子。一方、現役で司法試験に合格しトップの成績で司法修習を終えながら、人と折り合うことが下手で自分の存在価値に自信が持てないでいる徹子。
本書は、飽きずにトラブルを繰り返す夏子と、毎度その始末を押し付けられるという徹子という2人の女性を描くストーリィ。

表題の「嫌な女」とは、きっと小谷夏子のことでしょう。でも本書は、それを文字通り受け止めて済むような簡単なストーリィではありません。
また、夏子のトラブル解決を通じて徹子が成長を遂げていく、と簡単に言ってしまっていいストーリィでもありません。

本作品は何と言っても、そのストーリィ構成がお見事。
小谷夏子、彼女が直接読者の前に姿を現すことはありません。徹子が事情を聞いて回る相手から、夏子の人となりが良くも悪くも語られるのみです。
ストーリィは8章構成、各章の間にはいつも5〜9年という長い時が挟まります。すなわち、本書は半生といってもいい長い時間を背景としたストーリィなのです。
そうと判って初めて読み手は気づきます、夏子という女性は確かに面白いキャラクターですが、その一方で徹子という女性もまた味わい深いキャラクターであることに。
なお、夏子が毎度起こすトラブル解決部分に、ミステリの謎解きのような面白さがあることも、見過ごせません。

結局、人はどうしたら自分に満足できるのか、満足できる人生とは何なのかを、長い時間をかけて描き出したストーリィ。
各章毎の面白さもさることながら、長編としての読み応え、読み甲斐、素晴らしさがたっぷり。是非お薦めしたい快作です。

        

10.

●「ハタラクオトメ」● ★☆


ハタラクオトメ画像

2011年04月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2015年04月
幻冬舎文庫化



2011/04/29



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OL版お仕事小説。
身長157cm、体重100kg、自ら
“ごっつぁん”と呼んでくださいと、デブ・キャラを売り物にている北島真也子が、本書の主人公。
デブで結構、人を和ませる存在で良いと割り切り、上司・男性社員にはそつなく、OL仲間からは結構親しまれている。
仕事がこれといって楽しい訳でなく、男性社員らがあくせくしているのを馬鹿らしいと思いつつも、自分の社内での位置をしっかり確保しているキャラクター。
そんな真也子に、女性だけの商品開発プロジェクトチームを作る、ついてはそのリーダーをやれ、という命令が突然降ってきます。
革新的な試みではなく、単に他のメーカーがやって成功したらしいから我が社でも、というのが三流時計メーカーらしい発想。
ともあれ、真也子とチームメンバーたちの成果は如何?というストーリィ。

OLたちが主人公、女性社員だけのプロジェクトチーム、といっても、男性社員らがダメ、だから女性たちが奮起、という単純構図だけではないのが、本作品のミソです。
良いアイデアを思い付いただけでは物事は進まない。社内会議を通過しなければならないし、そのためにはそれなりの根回しも必要、と彼女たちは学ぶことになります。

「仕事の九割が・・・でも、・・・・・」という真也子の最後を締めくくる言葉に意味あり。
OLたちにエールを送る物語であると同時に、男性社員にも通じるお仕事小説になっています。
主人公の愛すべきキャラクターの所為か、お仕事小説ではあっても、どこか楽しく、ユーモラス。

それが働くってこと?/そうせまたポシャりますよ/企画を通すためなら・・・/根回しってなに?/六人の敵         

         

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