垣根涼介作品のページ


1966年長崎県諌早市生、筑波大学卒。2000年「午前三時のルースター」にてサントリーミステリー大賞および読者賞、04年「ワイルド・ソウル」にて大藪春彦賞・吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞、05年「君たちに明日はない」にて第18回山本周五郎賞を受賞。


1.
ワイルド・ソウル

2.君たちに明日はない

3.借金取りの王子−君たちに明日はない2−

4.張り込み姫−君たちに明日はない3−

5.月は怒らない

6.人生教習所

7.勝ち逃げの女王−君たちに明日はない4−(文庫改題:永遠のディーバ)

8.狛犬ジョンの軌跡

9.迷子の王様−君たちに明日はない5−

  


    

1.

●「ワイルド・ソウル」● ★★☆  吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞他


ワイルド・ソウル画像


2003年08月
幻冬舎刊

2006年04月
幻冬舎文庫
上下
(各686円+税)

2009年11月
新潮文庫化
(上下)



2009/11/13


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戦後の南米移民事業を背景にしたハード・サスペンス。

戦後、政府と外務省移民課が旗振りして行われた大規模なブラジルへの農業移民事業。
灌漑され住む家も手当てされた土地で、成長の早い南米気候の下に栽培者の少ない野菜を作れば、飛ぶように売れるというのが、その謳い文句。
しかし、現実は大きく異なり、移民者たちがアマゾンの奥地にある現地で目にしたのは、酸性が強く農業に適さない土地、それも雨季となれば洪水で流されてしまうような土地だった。
どんなに苦労しても実りのない土地。さらに悪質な病気が襲う。苦しみ喘ぐ移民者たちの救済を求める声を、現地の日本領事館、移民事業会社は握り潰し、多くの移民者たちは黄熱病等の病に倒れ死んでいく。たとえ生き延びても困窮し、街娼、乞食に堕ちるしかない。
大切な家族を失い、ただ一人そんな惨状から脱出して生き延びた男、両親とも死にあるいは殺された中で生き残った2人の子供の手によって、30年を経た今、日本国および外務省に対する復讐劇の幕が切って落とされる、というストーリィ。

戦前の南米移民の過酷さは、北杜夫「輝ける碧き空の下でで描かれていますが、戦後もそのようなことが繰り返されていたのでしょうか。
“移民”とは結局“棄民”に他ならないのでしょうか(棄民たちの戦場)。国民のために尽くすべき政府が棄民を行ったというのが事実なら、それは恥ずべき行動という以外の何ものでもないでしょう。
冒頭、移民たちの惨状が描かれますが、復讐劇の前提部分という前提ですから、そう多くは語られません。南米移民に関心をもたれた方には、是非、北杜夫「輝ける碧い空の下で」をお薦めします。
ケイ、松尾という共に30代という対照的な2人が主役となって繰り広げるハード・サスペンス劇。
その一人であるるケイに関わったばかりに、犯罪者側と真実を伝えるべき報道側との板挟みになって苦悶するTV記者=井上貴子を描く部分も読み応えがあります。

本書では、犯人、報道、警察という3つの立場が描かれますが、感情移入してしまうのが犯人側であることは否めません。
さらにいえば、颯爽たる復讐劇、その痛快さに思わず興奮してしまう、と言った方がいいでしょう。
まさに一気読み。
井上貴子というアナウンサー出身のTV記者を絡ませたことが、本ストーリィに奥行きを与え、面白さを盛り上げています。
何といっても、可憐な桔梗の花。能天気なブラジル気質の男と、現代版大和撫子の組み合わせが秀逸。

    

2.

●「君たちに明日はない」● ★★★      山本周五郎賞


君たちに明日はない画像

2005年03月
新潮社刊
(1500円+税)

2007年10月
新潮文庫化



2005/04/19



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主人公・村上真介の仕事は、クビ切り面接官。つまり、彼の勤める会社は、人員削減を計画している会社から委託を受け、予めリストアップされた社員と面接して希望退職に応じさせるということを業務としている会社なのです。
まさしく時宜に適った仕事ではないですか。・・・と喜んでばかりはいられない。自分の身に降りかかってきたら大変なことなのです。そしてその恐れ、無いでもない。

とそんな自分のことはさて置いて読むと、本書はこのうえなく愉快なエンターテイメント小説なのです。
若いくせに沈着冷静、それで弁舌爽やかに相手を追い込んでいく真介に対し、我を忘れて「絶対に辞めませんからっ!!」と叫ぶ面接者の気持ちがよく判るだけに、その対決(面接)場面は身を乗り出して読まずにいられません。
真介のアシスタント、可愛いだけの23歳、黙ったまま横にちょこんと座っているだけという美代ちゃん(川田美代子)の存在も絶妙です。
もちろんリストラ話ですから、5話各々リストラされる側の状況も、転職の是非も人によって様々。しかも、男女の区別もなし。それなりに被面接者の人生ドラマも展開され、その面白さは尽きません。
 
また、本書の面白さはそんなリストラ騒動だけでなく、一見クールでありながら、かなり滑稽なところのある主人公・真介の人物像にあります。
面接相手である8歳も年上の芹沢陽子41歳に惹かれ、強引にキスするばかりか、最初のデートで陽子の部屋にまで上がりこみ、セックスまでせしめる。自分の感覚にフィットすると感想を漏らす真介に可笑しさを覚えます。この8歳差ある真介と陽子という2人の、駆け引きを忘れぬ本音ベースの恋人関係が、何とも羨ましくなる楽しさなのです。ベストカップルと言いたい程。
この芹沢陽子という離婚歴ある課長代理自身がまた、真介に勝るとも劣らない魅力があるのです。

ストーリィの題材はサラリーマンにとって恐ろしいものですが、読者にとってこんなに痛快、爽快で楽しいエンターテイメント系サラリーマン小説は、きっとそうはないでしょう。
お薦めしたい一冊です。

怒り狂う女/オモチャの男/旧友/八方ふさがりの女/去り行く者

     

3.

●「借金取りの王子」● ★★★


借金取りの王子画像

2007年09月
新潮社刊
(1500円+税)

2009年11月
新潮文庫化



2007/10/05



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君たちに明日はないの続編。主人公の村上真介、アシスタントの川田美代子に、真介の8歳年上の恋人・芹沢陽子という主要メンバーは前作と変わりなし。
今回も真介は様々な会社に赴き、リストラ候補者との面接を繰り広げます。百貨店外商部、生命保険、消費者金融、観光ホテルと依頼先は様々。そして相手方となる社員も、リストラ候補者もいれば、是非引き留めておきたいと指示される社員もいる。一口に社員といっても真に様々です。
そして合間に挿入される、真介と陽子のやり取りが実に楽しい。

「二億円の女」「女難の相」とそれなりに面白かったものの、前作に比較すると物足りず。続編となるとパワーダウンも仕方ないかと思っていたところで見事に背負い投げを喰らわせられたのが、表題作「借金取りの王子」。これがもう絶品です!
“王子”とあだ名された三浦宏明。人柄良く美男子で、しかも有名私立大卒。なんで消費者金融会社になんか入社したのかと思う程。傍若無人にノルマ達成を強制してくるのが常で離職率も高いこの業界、それなのに何故宏明はここまで頑張ってきたのか。そこには、宏明が最初に配属された店舗の4歳年上の女性店長・池口の存在があった。
このドラマは凄い。この一篇だけでも充分独立した作品に値します。無我夢中で読ませられ、最後では泣かせるなぁ。
とにかく池口美佐子の人物造形が圧巻。真介の恋人・陽子に優るとも劣らず。すっかり魅せられ、その魅力に押し倒されたといって過言ではありません。

「山里の娘」は観光ホテルを舞台にした爽やかで軽やかな一篇。
そして最後の「人にやさしく」、これがまた良いんだなぁ。
真介の会社が人材派遣業にも乗り出し、真介がその統括チーフ。早速に業種団体の事務局長を務める陽子から、派遣の依頼を請け負う、という次第。この篇では陽子の揺れる気持ちを描くところが意表を突いていて、何とも心憎く、そしてユーモラス。
陽子は真介のことを「やっぱりロクデナシだ」としきりに評しますが、この真介、やはりなかなかの人物です。
登場人物にとびきりの魅力があってこそ、ストーリィも魅力あるものになり得るのです。

なお、リストラ、必ずしも悪いことばかりとは言えないと、穏やかに語りかけてくるようなところも本作品の魅力。
新卒で入社してその会社しか知らないと、そこで頑張ることだけが全てと思いがち。そんなことはないのです。自分の向き不向きを考えて方向転換するのも長い人生においては大事なこと。
「女難の相」のストーリィがそれを象徴的に告げています。

二億円の女/女難の相/借金取りの王子/山里の娘/人にやさしく

   

4.

●「張り込み姫−君たちに明日はない3−」● ★☆


張り込み姫画像

2010年01
新潮社刊

(1500円+税)

2012年04月
新潮文庫化



2010/02/06



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ちょうどNHKでドラマ放映が始まったところでの、君たちに明日はないシリーズ、第3弾。

前2作同様、リストラ請負会社の社員=村上真介が主人公。
とはいっても本書、前2作と違って、面接される側の方がむしろ主人公というべきで、村上自身は共通して登場する脇役、という感じです。
何故かというと、真介とその年上の恋人=芹沢陽子との関係がすっかり安定してしまったために、真介における新しいドラマはないためです。
その分、リストラされる側の仕事人生が前面に出てきた、という印象。
「ビューティフル・ドリーマー」は英会話学校、「やどかりの人生」は旅行会社、「みんなの力」は自動車ディーラー、「張り込み姫」は写真週刊誌の出版社が舞台です。
いずれもこの不景気等々で業績悪化に追い込まれていると思われる業界、現実感があります。
表題作となっている「張り込み姫」、読む前は意味が判らなかったのですが、主人公は20代の女性編集部員。スクープ写真を撮るために張り込み、チャンスを辛抱強く待ち構えるところからの異名、という訳。
各篇、リストラに応じるか拒絶するかをめぐって悩む、リストラされる側の仕事人生にはそれなりに読ませるものがありますが、真介と陽子という刺激的なスパイスの効きが弱い分、面白さは減少。

ビューティフル・ドリーマー/やどかりの人生/みんなの力/張り込み姫

       

5.

●「月は怒らない」● ★★


月は怒らない画像

2011年06月
集英社刊
(1600円+税)



2011/06/23



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年齢も性格も境遇も全く異なる3人の男。それなのに彼らが一様に惹き付けられたのは、市役所勤めの地味な女性だった。

男3人+女一人=4人をめぐる物語。
しかも、この4人に、特別参加といった観ある老人一人を加えただけの、極めて狭いシチュエーションの中でストーリィは展開します。
男3人+女1人という組み合わせに、「月は怒らない」という題名。どんなドラマが展開するのか、全く見当もつきません。
そもそもどうこう言う程のストーリィではないのかもしれませんが、この
三谷恭子という市役所職員の女性に、3人同様、妙に惹き付けられます。
服装は地味、一人暮らしのアパートにはTVさえもなく、外出したがらず、余計な口はききたがらず、男性の見せかけの言葉には全く惑わされず。
そのくせ何故か3人に鷹揚で、身体は開くけれど(ただし2人だけ)、自分を開こうとはしない、という風。
一方の主役である筈なのに、あたかも狂言回しの役割を兼ねているようなところが、実に面白い。

それなりの現代社会的ストーリィかと思い定めようとしていたところ、終盤、全く思いがけなかった局面へドラマは進んでいきます。
それまで厚い雲に閉ざされていた空が突然に開け、雲一つない青空が一気に広がった、という気分。
この気分の良さこそ、最後に至って判る本作品の魅力、と言うべきでしょう。
読み終える時には、風変わりな女性=三谷恭子の幸せを、素直に祈りたい気持ちになります。

          

6.

●「人生教習所」● ★★


人生教習所画像

2011年09月
中央公論新社
(1700円+税)

2013年06月
中公文庫化
(上下)



2011/11/07



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東京から遥か千キロも離れた太平洋上にある絶海の島、父島・母島を中心とする小笠原諸島
そんな南海の島を舞台に開催される
“人間再生セミナー”に参加した受講生たちの小・人間ドラマを描いた長篇小説です。

開催期間は平成19年06月の12日間、参加費用は船費・宿泊費を含む金五十万円也。セミナーの最終合格者には、希望すれば就職活動の支援付。主宰する小笠原塾運営事務の局長は元日本経団連会長というのですから、怪しいセミナーではありません。
その第三回セミナーに参加した者の内、ヒキコモリ中の東大生、組織から逐電した元ヤクザ、人間付き合いが苦手な女性フリーライター、参加理由不明な会社を定年退職した初老の男性、という4人が主要な登場人物。

第一次セミナーでの講義より、第二次セミナーでの小笠原諸島という土地柄、以前からの島民+新たに住みついた人たちという住民構成、戦後すぐの米国統治下から日本復帰という荒波を味わった人たちの体験とその思いを知ることの方が、主人公たちの再生にとっては重要であったようです。
それは読み手にとっても同様、小難しい講義より小笠原諸島そのものを知ることの方がずっと興味深いこと。

小笠原を知ることによって主人公たちの考え方に変革も生じ、再生もなる、といった風。
読み手にとっては小笠原諸島の疑似体験というところですが、いくら想像力を駆使しても、実際に見て、感じることには遠く及びません。
でも船で26時間、そう簡単に行ける場所ではないですよねぇ。

1.海を渡る船/2.一次セミナー・父島/3.二次セミナー・母島/4.カリフォルニア州・サンフランシスコ市・小笠原村大字/5.半年後

     

7.

●「勝ち逃げの女王−君たちに明日はない4−」● ★★
 (文庫改題:「永遠のディーバ」)


勝ち逃げの女王画像

2012年05
新潮社刊

(1500円+税)

2014年10月
新潮文庫化



2012/06/13



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君たちに明日はないシリーズ、第4弾。

リストラ請負人である村上真介が、業況低迷から社員のリストラを決断した会社から依頼を受け、対象者と面接して早期退職に応じさせるという本シリーズ、マンネリ化している面があるとはいえ、毎回読むのが楽しみです。
その理由のひとつは、いろいろな業界・会社の内情を知る面白さにあります。ちなみに本巻に登場する企業は、
航空会社、山一證券、楽器等メーカー、ファミレス
同じサラリーマンとして、企業の内情、リストラされる社員の心情には興味尽きません。
ただそれだけのストーリィなら、シングルヒット止まりの作品に過ぎないのですが、時々ホームランをかっ飛ばすことがあるのですから、本シリーズは侮れません。
表題作
「勝ち逃げの女王」は、航空会社のキャビンアテンダントを題材にした篇ですが、本書における圧巻はむしろ、楽器メーカーを題材にした「永遠のディーバ」にあります。
また、もうひとつ印象深い篇は、ファミレスを題材にした
「リヴ・フォー・トゥデイ」。そうなんですよ、接客業の本質はお客様にサービスを喜んでもらうことにあるのであって、サラリーマンであれば誰もが昇進を願っているとは限らないのです。本篇の主人公である森山透に共感を抱く方、結構多いのではないでしょうか。

このシリーズ、企業を題材にしているだけに小説の材料は無限にあると言って良く、まだまだ続きそうです。今後とも、乞うご期待!

勝ち逃げの女王/ノー・エクスキューズ/永遠のディーバ/リヴ・フォー・トゥデイ

              

8.

「狛犬ジョンの軌跡」 ★★


狛犬ジョンの軌跡画像

2012年12
光文社刊

(1400円+税)

2015年07月
光文社文庫化



2013/01/28



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人間に優るとも劣らない風格をもつ大型犬の物語としては、三浦明博「五郎丸の生涯という傑作を最近読んだばかりですが、同じ大型犬とはいえ実は狛犬の化身らしい存在なのですから、自ずと物語は全く別の展開を見せます。

主人公の太刀川要が深夜に房総をドライブしていたところ、大怪我をして倒れている大型の黒犬と遭遇します。
いずれにせよ放っては置けないと、車にどうにか乗せて都内まで突っ走り自宅近くの動物診療所へ。
しかし、その黒犬がいると近くにいる犬たちが警戒するのか、それとも怯えなのか、一斉に吠え出し、やむなく事務所兼自宅の借家に引き取ることになります。
そこから、犬らしからぬ気配を見せる巨躯の黒犬
ジョンと、33歳の独身男との共同生活が始まります。その結果は・・・。

本作品は、太刀川を主人公する各章ストーリィの後に、必ずや黒犬の独白が付きます。
黒犬の正体は何なのか、そして何故?というストーリィ部分も勿論面白いのですが、ストーリィの主眼はむしろ、黒犬による太刀川という人間の有り様、その生き方の観察というところにあるようです。
何の既存観念も先入観もない、狛犬の化身らしき黒犬だからこそ、というところに妙味があります。
自分に素直に、ありのままに生きている、そんな主人公の姿は清々しく感じられますし、それは太刀川の5歳年上の恋人である
知花麻子についても共通するところ。

何より、主人公に並べて謎の黒犬を配した趣向が格別。そしてまたストーリィ自体、主人公および黒犬のキャラクターがあって実に気持ち良く、面白い。垣根さんの着想に拍手です。(^^)

※人間が犬に化身して愛する人の側に寄り添うという作品があったのを思い出しました。松浦理英子「犬身。ご参考までに。

プロローグ・J/1.事故/2.命名/3.疑念/4.沈黙/J・エピローグ

       

9.

「迷子の王様−君たちに明日はない5− ★★


迷子の王様画像

2014年05
新潮社刊

(1400円+税)

2016年11月
新潮文庫化



2014/06/10



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君たちに明日はないシリーズ第5弾にして完結編。

第一作を読んだ時には、ここまで長く続くシリーズになるとは思いもしませんでした。
これまで様々な業種を取り上げ、その内幕を描いてきた本シリーズですが、今回の相手先は大手企業、大手企業社員であるという点に強いインパクトがあります。
日本企業もそこまで来たか、という印象なのですが、実際には現実の後追いでしかありません。
大手企業社員であるからには、これまでそれなりの実績、功績を残してきた筈なのだから自分のような人間が迂闊なことは言えない、というのが主人公である
村上真介の姿勢。
したがって本書では、これまで以上に各篇の主人公たちが自問自答する、余り真介が関わる余地がない、むしろ必要もないという傾向が窺えます。

第1章(大手化粧品会社)では戸惑いながらも前進、第2章(大手家電メーカー)ではすきっと気持ちを転換、第3章(大手書店)では自分の気持ちに忠実に、というのが各章主人公たちの選んだ結末。なにやらステップを踏んでストーリィが進められているというような気がします。
高度成長自体には、企業に貢献=社会に貢献=自分の満足・幸せと信じることができた訳ですが、今は企業に頼らず自分の幸せとは何か、を考えなければならない時代なのでしょう。
第1章の主人公はそれをこれから探ろうとし、第2章の主人公はそれを掴んだ、という風です。
大手企業の社員にとってその契機となるのは(望ましいことではありませんけど)、自社の経営破綻である、として過言ではないでしょう。

最終章ではえッ!と驚かされますが、必然的な結果と言うべきでしょう。
主人公=村上真介がどう選択するのか、それこそ本シリーズの総決算となる答えだと思います。
納得いく結末に、読後感はすっきりとした気分です。

トーキョー・イーストサイド/迷子の王様/さざなみの王国/オン・ザ・ビーチ

   


  

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