|
|
1.ハリネズミの願い 2.おじいさんに聞いた話 3.きげんのいいリス 4.キリギリスのしあわせ 5.いちばんの願い |
1. | |
「ハリネズミの願い」 ★★ |
|
|
ひとりぼっちのハリネズミは、誰も自分を訪れてくれないことを寂しく思っている。 今まで誰も家に招待したことがないことに気付き、動物たちへの紹介状を書き始めます。 「親愛なるどうぶつたちへ ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します」と。そして最後にこう書き足します、「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」と。 書き足した内容が良かったかどうか考えあぐねたハリネズミは、結局手紙を引きだしにしまい、出さないまま。 そして次の日から、こんな動物が訪ねてきたら、と想像を巡らせます。その結果は恐ろしいことばかり。ハリネズミの小さな家に合わない大きな動物たちもいれば、一方的で身勝手な動物たちもいるのですから。 全部で59章、ハリネズミの想像の中でいろいろな動物たちが登場し、いろいろな訪問劇を繰り広げます。 いくらなんでもそりゃ、ゾウやクジラは無理でしょう。それなのにハリネズミの想像の中では彼らも例外ではありません。 臆病で、何かと悲観的なハリネズミ、想像は悪い方へ悪い方へと進むばかり。心配ばかりして行動せずにいるより、とにかく一歩足を踏み出してみれば、と思うのは私だけではない筈。 最後、ハリネズミの元に思いがけない来客が。義理だけの多くの来客より、心から喜べるたった一人の訪問が何と嬉しいことか。 本ストーリィ、決してハリネズミ特有のことではなく、誰にも共通する事柄のように感じます。 なお、数多くの動物の中でユニークで愉快なのは、カメとカタツムリのコンビ。その迷コンビぶりを是非お楽しみあれ。 |
2. | |
「おじいさんに聞いた話」 ★★ |
|
|
著者の祖父は元々オランダの貿易商の一族で、ロシア革命が起きた翌年の1918年、40年以上暮らしたサンクトペテルブルクを後にして、妻・息子5人・娘1人(テレヘンの母)と共にオランダへ移住したのだそうです。 その祖父から、孫であるテレヘンが子供の頃に聞いたロシアの話あれこれをまとめたのが本書、という設定。 ただし、実際には祖父が語ったという話は全くなく、すべてテレヘンの創作なのだそうです。 要は、「自分が祖父から聞くことができたかもしれない話」とのこと。 如何にもロシアらしい話が詰まっています。 不思議な話だったり、ちょっとホラー的なものもあれば、社会の底辺にいる人々に降りかかった悲劇があったり、一方で皇帝が登場する話もある、と多彩。 ふとゴーゴリやツルゲーネフの短篇、トルストイの民話などの雰囲気を懐かしく思い出させられる処があります。その辺り、如何にもロシアならではといった印象の小話集。 祖父が孫の男の子に語るという前提ですから、悲劇的な話が混じっていても各々軽やかであり、時に可笑しみも感じさせられ、気軽に楽しめる短篇集になっています。 パブロフスクとオーストフォールネ行きの列車/ピロギ/詩人/年老いた男/散歩/ユダたち/神と皇帝/二人の修道士/おとなしい少年/罪/地図帳/なにかが祖父を思いとどまらせていた/日常/死ぬこと/悪魔/中心/「なんなんだ?!」/フェーデ/犬/医師たち/テルヘン/サイ/いとこ/織りまちがい/使用人の母/綱渡り師/涙の谷/小部屋付きの大広間/鳩墓地/ステフラー/ドヴィチェニー・サーカス団/馬/クマのお話/小さな魔女/裸の皇帝/手品/翼/葬儀/ステップ |
3. | |
「きげんのいいリス」 ★★ |
|
|
不器用だったり、悩みごとを抱えたりしている動物たちが数多く登場する、51話からなる掌篇集。 登場する動物はというと、リス、アリ、ゾウ、カメ、コオロギ、サイ等々と限りなし。 そして、各篇の中で彼らは互いに語り合ったり、相談ごとをしたりと、等々。 実のところ、本で読むより、一話ずつ子供に読み聞かせるという方がずっと動物たちの物語を楽しめるのではないか、と思わせられる掌篇集です。 題名からはリスが主役のように思えますが、決してそんなことはありません。でも、リスとアリ、とても仲が良いらしく、2匹の登場は目立って多いという印象です。 何故その2匹は仲が良いのか?というと、どうもハチミツが好きという共通点があるかららしい。 一方、困ったちゃんと思わせられるのは、ゾウ。幾度も木に登って落ちたりと、忙しいことしきり。 他の動物の家を壊したり、鼻を吹き飛ばされたりと、何かとトラブルに縁多し。 それでも、ハリネズミ宛の「くくく」だけからなる手紙、夢の中でちゃんと返事が聴こえてくるという展開はとてもファンタジーで楽しくなります。 動物たちを描いたトーン・テレヘン作品、これからも翻訳刊行されるのでしょうか。刊行されたら、また読みたいと思います。 |
4. | |
「キリギリスのしあわせ」 ★★ |
|
|
大人のための〈どうぶつたちの小説〉シリーズ、第3弾。 ※ちなみにテレヘン本来のシリーズでは4作目とのこと。 森のはずれで、「太陽と月と星以外」は何でも売っている店を営んでいるキリギリスが主人公。 その店にはあらゆる動物、生き物がやってきます。※支払いはどうも不要らしい。 キリギリス、客たちの要望に応えることにやり甲斐、喜びを感じているようですが、次第の客たちの注文が傍若無人のこともあれば、感情的あるいは抽象的なものが増えてきます。 そこまで応えることが必要なのだろうか。また、客にとって本当に必要なのか、かえって為にならないのでは、と思うような注文もしばしば。 それらに応え続けていくうち、キリギリスもストレスを抱えていくようで・・・。 簡単に望みが叶うとなると、欲求というのは我が儘にも、際限なくにもなっていくようです。ほどほどで我慢することを、自分で折り合うことも大切ではないか、と思うようになります。 しかしまぁ注文の数々、笑えるものも、楽しいものもあれば、そんなのあり?と思うものも幾多あり。 どんな注文が飛び出してくるのやら、味わっていくのも楽しい限り。 ※クジラからの、客に訪問客に喜んでもらうため背中に庭を作って欲しいという要望は、ついつい出来上がりを想像して楽しい限り。 一方、「恥知らず」とか絶望、もう一日、句読点・・・となってくると、作者の想像力の豊かさに脱帽です。 |
5. | |
「いちばんの願い」 ★★ |
|
|
大人のための〈どうぶつたちの小説〉シリーズ、第4弾。 どうぶつたち、それぞれの願いは? 計63篇。 ユニークなもの、笑えるもの、笑えないもの、多種多様。 よくもまぁ、これだけ多彩に考えつくものだと、呆れ・・・、いや感心します。 それぞれ、そのどうぶつならではの願いですが、時々相互に関わっていたり、表裏の関係にあったりするところが楽しい。 ふと思うのは、人間にしてもそれぞれ、民族や国、境遇によってその願いはいろいろであって当然、ということ。 多種多様であることを理解する、受け入れることの大切さを、本書から学べる気がします。 なお、一気に読むより少しずつ読んだ方が楽しめると思います。 ※ゴキブリの願いは、何とも・・・。シロアリの願いには絶句。 カメとカタツムリの願いに、ナマケモノの願いも笑えます。 ツチブタ/ミミズ/クマ/アブラムシ/ケナガイタチ/アナグマ/ヒトコブラクダ/ムカデ/リス/カゲロウ/ハリネズミ/イノシシ/キリン/ツチボタル/トカゲ/マルハナバチ/アブ/イカ/ゴキブリ/コガネムシ/カエル/ケープハイラックス/カラス/ザリガニ/コオロギ/クラゲ/ナマケモノ/マンモス/テン/アリ/ノウサギ/モグラ/マーモット/ムラサキガイ/ネズミ/スズメ/イッカク/サイ/カバ/ゾウ/ゾウリムシ/サギ/ヤマネ/ケムシ/カメ/ミズスマシ/ショキカンチョウ/カタツムリ/クモ/トガリネズミ/キリギリス/ヤマアラシ/ダチョウ/シロアリ/カブトムシ/フクロウ/ホタル/クジラ/アライグマ/イタチ/ハタネズミ/イボイノシシ/ハクチョウ |