写真道>写真表現の視点
<前 次>

役立つ解説を撮影で生かす方法

役立つ解説を知っても、生かせてない人が多い

 写真を上手に撮るための情報は、雑誌、単行本、インターネットなどで提供されています。上手になりたい人は、それを読んでいるでしょう。しかし、読んでは見たものの、そのとおりにできない人が、かなり多いのではないでしょうか。

 そういった状況から考えると、本サイトの内容を読んでも、同様に結果になると推測できます。せっかく読んだのにほとんど生かせない、という結果に。写真撮影に限らず、どの分野でも、こういった傾向があるものです。

 そこで、役に立つ解説を読んで知った後、どうすれば使えるようになるかを、まとめてみました。せっかくの知識やノウハウを生かせないでいる人は、ぜひ試してみてください。とくに基礎的な部分では、かなり効果がある方法ですから。

役立つ解説を読んだのに生かせない理由

 まず、どうして生かせないのか考えてみましょう。初心者は、撮影で注意しなければならないことの多くを、知らない状態でいます。だからこそ、本や雑誌を読んで、上手な方法を知ろうとします。

 では、読んで知った後、どうしているのでしょうか。多くの人は、それが頭の中に入っていると思い、とくに何もせずに撮影を始めます。するとなぜか、解説を読む前と同じように撮影してしまい、結果として読んだ効果が現れないのです。こうなる理由は、撮影時には被写体のこと考える必要があるため、他のことに意識が向かいにくいのです。

 もし撮影中に何も考えてなければ、新しく何かを考えることは容易です。しかし実際は、そうではありません。被写体のどこを撮影するとか、以前から何か考えています。そんな中に、新しく考えるべきことを入れるのは、強く意識しないとできないものなのです。

 新しく考えることとして入れる内容の側にも、難しい面があります。単行本1冊を読むと、かなりの注意点が書いてあるはずです。その全部を一気に身に付けるのは不可能です。まずどれを注意するのか事前に選んでおかないと、撮影の場面で注意することが、たいていはできません。つまり、注意すべき内容を、準備しておく必要があるわけです。

役立つ注意点を身に付けるために、普段から練習する

 では、撮影時に注意すべき点を事前に決め、撮影に望む方法が本当に良いのでしょうか。残念ながら、それほど良い方法ではありません。注意すべき点を決めていたとしても、すぐにできるとは限らないのです。結果として、貴重な撮影機会を無駄にすることとなります。

 おそらく最良の方法は、実際の撮影前に、注意すべき点を練習することです。撮影で使うカメラさえあれば、練習場所は自分の部屋で構いません。身の回りにある何かを被写体に選び、事前に選んだ注意点を意識して、実際と同じように撮影してみます(銀塩カメラの場合は、フィルムを入れないで)。練習する際には、注意点を1つだけ選ぶことが大切です。その注意点を忘れないように、何度も繰り返して撮影するのです。

 たいていの注意点は、何かを考えて決めるはずです。たとえば注意点が「すべてのショットで最適な絞りを選ぶ」なら、被写体ごとに最適な絞りを考えなければなりません。同じ被写体だと考える必要がなくなるので、ショットごとに被写体を変えながら繰り返します。部屋の中なら、何かをアップで写したり、部屋の片面を広く写した利など、次々に変えていきます。似てる被写体の連続を避け、異なるタイプの被写体を続ける感じで。部屋の中だけだと飽きるので、自宅の周囲でも練習するとよいでしょう。

 目指すゴールは、「特に意識しなくても、注意点を守って撮影できるようになる」ことです。そのためには、かなりの回数を繰り返さなければなりません。1日だけだと忘れやすいので、1日に30分とか1時間とか決め、何日も繰り返して続けます。

 このようにして練習すると、実際の撮影を無駄にしなくても、役立つ注意点が身に付けられます。撮影の際には、あまり意識しなくても、注意点が自然に行えるようになっているはずです。

役立つ注意点を段階分けして、計画的な練習を

 1つの注意点だけ続けると飽きるので、少し工夫します。2日目には別な注意点を選び、その注意点だけを練習します。3日目には両方の注意点を入れて、どちらも忘れずにできるように繰り返します。このようにして、新しい注意点を少しずつ追加し、習得した注意点を増やすわけです。

 撮影の腕を上げるためには、かなり多くの注意点を身に付ける必要があります。そうした注意点は、雑誌、本、ウェブサイトなどから探すと、かなりの数が集められるでしょう。試しに書き出してみてください。予想した以上の数が集まるはずです。その全部を効率的に身に付けるのにも、普段の練習が最適です。

 役立つ注意点の数が多いときは、身に付ける順序を考慮します。通常は、基礎的なものから始めて、だんだんと難しいものに移る流れが最適です。もし早目に身に付けたい注意点があれば、それを優先して構いません。自分の好きにした方が、身に付きやすいですから。

 大切なのは、身に付ける順番を決めながら、全体の計画を作ることです。一度に全部は無理なので、数段階のレベルに分けます。そして、一番低いレベルから練習していきます。確実に習得するために大切なのは、1つのレベルが完全に身に付いてから、次のレベルに移ることです。

 注意点が多くなってくると、本当に行っているのか確認するのが面倒です。頭の中で確認すると漏れやすいので、注意点の一覧を紙に書いておきます。そして、練習するたびに紙を参照して、本当に行ったのかを確かめましょう。このような方法で練習すると、注意点を忘れることがなくなります。全部の注意点を書くと多すぎるので、レベル分けした注意点を用いるのがベストです。

長く使ってないとできなくなる特徴があるみたい

 撮影の際に考慮すべき点は、非常に数多くあります。あまりにも多いためか、長い間使ってないと忘れてしまうようです。

 まさに、私の場合がそうでした。若い頃にできていたことが、本格的な撮影を20年近く行っていなくて、いざやろうとしたらできませんでした。大事な注意点をいくつか忘れて撮影してしまうのです。いつも何かを忘れるので、今度は忘れないように注意しようと思っていても、どれかを必ず忘れてしまいます。

 こうなったら、復帰のために練習するしかありません。実際に練習してみると、かなりの部分が戻ってきました。まだ完全には戻っていないため、万全ではありませんが、格段に良くなっています。今はこんな状況なので、リハビリにはもう少し時間が必要なようです。

 こうした経験から、分かったことがあります。いくら頭の中で理解していても、実際の撮影で使えるとは限りません。使えるようになるためには、無意識でもできるように訓練するしかないようです。何度も繰り返し練習することによって、身に付けるしかないのでしょう。別な表現をするなら、癖を付ける必要があるみたいです。頭だけでなく、体でも覚えなければならないのでしょう。きっと。

当然ながら、実行しなければ身に付かない

 役立つ注意点を身に付ける方法について、かなりしつこく書きました。これを読んで「なーるほど」などと感心しているだけでは、身に付きません。実際にやってみることが一番大事なのです。

 ここまで説明した内容を、強調する意味で整理してみました。身に付けることに関する基本的な特徴と、それを前提とした練習方法に分けて。

・基本的な特徴
  ・知識として知っているだけでは、撮影に生かせない
  ・強く意識した練習の繰り返しで、自然と出来るようになる
・練習の方法
  ・撮影で役立つ注意点を、調べて片っ端から挙げてみる
  ・挙げた注意点を、身に付ける順に整理し、レベル分けする
  ・一番下のレベルから順に、普段の練習で身に付ける

 もちろん、こうした練習しなくても、撮影のときに強く意識すれば、身に付けることが可能です。ただし、習得する速度には何倍もの差が出ます。できるだけ早く身に付けた方が上手な写真を撮れるので、もし腕を上げたいのなら、このような形で練習した方がよいでしょう。

撮影時に考えるべき主な点

 ここまで読んだ初心者がもっとも気になるのは、どのような注意点を体に覚え込ませるかではないでしょうか。そこで、撮影時に考えるべき主な点を、かなり基礎的なレベルから挙げてみました。次のページにまとめてありますから、そちらを参照してください。

(作成:2003年8月27日)
<前 次>