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写真が上達する練習内容の例

写真が上達するための、初心者向け練習内容を考えてみた

 初心者から抜け出すためには、いろいろなことを知る必要があります。2つに大きく分けると、撮影時に何を考えるのかと、レンズやフラッシュといった機材の特徴や使い方です。これらは毛色が異なり、両方を身に付ける必要があります。

・撮影時に考えるべき注意点
  ・注意点を体に覚え込ませるために練習する
・機材の特徴と使い方
  ・機材を正しく使ったときの写りを知る
  ・機材を間違って使ったときの写りを知る
  (目的:写りの特徴を知り、表現に生かす知識として蓄積)

 多くの人にとって気になるのは、具体的中身でしょう。そこで、含めるべき事柄を整理してみました。次のような分類に沿って。

・撮影時の注意点
  ・写真撮影の基礎段階
  ・表現を狙う基礎段階
  ・表現を狙うレベルアップ段階
・機材の特徴と使い方
  ・レンズを活用するための練習
  ・フラッシュを活用するための練習

 練習する順番としては「写真撮影の基礎の注意点、機材の特徴と使い方、表現に関する注意点」というのが最適でしょう。注意点と機材の使い方では、練習方法が異なります。一部を除くと、次のような形です。

・注意点:ファインダーを見ながら練習する
・機材の使い方:実際に撮影した写真を見て確認する

 機材の使い方では、実際に撮影する必要があるので、銀塩カメラの場合にはフィルムや現像の費用がかかります。この部分だけは、デジカメに切り替えて練習した方がよいでしょう。銀塩でもデジカメでも、基本的に変わりませんから。また、注意点の練習でも、面倒でなければ、実際に写真を撮影します。できあがった写真を見ながらの方が、記憶に残りやすいでしょうから。

 目的は初心者から抜け出すことですが、それよりも上の内容まで含めてあります。その結果、多くの人にとって役立つ練習内容に仕上がりました。ただし、これが絶対ではないため、あくまで参考にしながら、自分でアレンジする形で役立ててください。

写真撮影の基礎段階において考える主な点

 ずぶの素人に近い初心者が、撮影の際に何を考えるべきなのかという視点で、主な点を挙げてみました。相当に低いレベルも含めたので、すでに習得している点は読み飛ばしましょう。

< 写真撮影の基礎段階 >
・第1段階
  ・ピント位置が中央でない写真も撮れるようにフレーミング
  ・被写体の大きさを考慮して近付く
・第2段階
  ・シャッター速度を意識して選ぶ
  ・絞りを意識して選ぶ
・第3段階
  ・最適な画角(焦点距離)を選ぶ
  ・ピントを合わせるべき箇所(人間の目など)を選ぶ
・第4段階
  ・露出補正の必要性を見極め、補正量を求める

 一番最初は、素人の撮影方法から抜け出るための第一歩です。写真の素人が写すと、写したい被写体を真ん中に置いて、そのまま撮影します。そうならないように、フレーミングを必ず考えて写す癖を付けなければなりません。

 残りの事柄も同様で、すべてのショットで考えるようにします。それを意識しなくてもできるようにするのが、最終的な到達点です。中級者以上なら、自然に必ず行っていることですから、難しいことではありません。癖を付けるかどうかだけの問題です。

レンズを活用するために役立つ練習

 幅広い表現を目指すなら、いろいろな画角のレンズを使いこなすことが欠かせません。最低でも、広角、標準、望遠の3種類の特徴を理解し、それを生かした撮影方法を知る必要があります。特徴の中には欠点もあるので、それを弱めたり、逆に強調して生かす写し方も、活用の中に含まれます。こうした点を踏まえて用意したのが、以下のような練習内容です。

< レンズを活用するための練習 >
・第1段階
  ・広角レンズでゆがみ感を減らして撮る
  ・広角レンズでパンフォーカスにして撮る
  ・標準レンズの自然さを生かす
  ・標準レンズでピント範囲を調節して撮る
  ・望遠レンズで背景をぼかす
・第2段階
  ・広角レンズの広がり感を生かす
  ・広角レンズのゆがみ感を生かす
  ・広角レンズで何かを大きく写す
  ・標準レンズで広角気味に撮る
  ・標準レンズで望遠気味に撮る
  ・望遠レンズの圧縮感を生かす
・第3段階
  ・広角レンズ1本だけで、何でも撮影してみる
  ・標準レンズ1本だけで、何でも撮影してみる
  ・望遠レンズ1本だけで、何でも撮影してみる
・第4段階
  ・広角、標準、望遠の中から最適な1本を選ぶ
  ・選んだ以外のレンズで、何とか整えて撮る
・第5段階(必要だと思うものだけ)
  ・超広角レンズで凄い広がり感を生かす
  ・超広角レンズで凄いゆがみ感を生かす
  ・超望遠レンズで凄いぼけを生かす
  ・超望遠レンズで凄い圧縮感を生かす
  ・マクロレンズで拡大して撮る
・練習用として適している焦点距離(35mm版換算)
  ・超広角:20mm付近(18~21mm)
  ・広角:28mm
  ・標準:50mm
  ・望遠:135mm付近(100~150mm)
  ・超望遠:300mm(なければ200mm以上で代用)
  ・マクロ:50~100mm(マクロ機能付き)

 ここでの並べ方は、レンズの種類ではなく、習得が簡単な順にしてあります。もしレンズの種類ごとで完全に分けた方が練習しやすいなら、レンズの種類ごとで上から順に練習しても構いません。

 超広角、超望遠、マクロという特殊なレンズに関しては、自分が持っていて使いこなしたい場合に練習すればよいでしょう。

フラッシュを活用するために役立つ練習

 暗い場所での撮影では、フラッシュが役立ちます。ただし、その特性を知っていないと、期待した仕上りの写真は得られません。また、暗い場所で明るく撮る以外にも、フラッシュは使えます。主役を強調したり、主役を美しく写すためにです。こうした点を理解するための練習内容は、以下のようになります。

< フラッシュを活用するための練習 >
・第1段階
  ・真っ暗な場所で、いろいろな被写体を撮る
  ・暗い場所で、いろいろな被写体を撮る
  ・少し暗い場所で、いろいろな被写体を撮る
・第2段階
  ・暗い場所で、1つの被写体を撮る
  ・暗い場所で、前後に並んだ複数の被写体を撮る
・第3段階
  ・暗い場所で、バウンズさせて撮る
  ・暗い場所で、ディフューザーを使って撮る
  ・暗い場所で、複数のフラッシュを使って撮る
・第4段階
  ・逆光の人物を、フラッシュで照らして撮る
  ・花や植物のアップを、フラッシュで照らして撮る
  ・日中、いろいろな被写体をフラッシュありで撮る
・第5段階
  ・暗い場所で、フラッシュが暗すぎる設定で撮る
  ・暗い場所で、フラッシュが明るすぎる設定で撮る
  ・暗い場所で、フラッシュが遠すぎる被写体を撮る
  ・暗い場所で、フラッシュが近すぎる被写体を撮る

 撮影場所の明るさの違い、複数の被写体での距離の違い、バウンズなどの照明技術、日中シンクロを含めました。最後は、フラッシュの間違った使い方で、それがどのように写るかを知るための練習です。こうした写し方も特別な表現に利用できるので、知っておく価値はあります。

表現の基礎段階において考える主な点

 これから先は、表現を狙って撮影するときの注意点です。表現を重視するなら、主役、脇役、背景といった被写体の要素や、構図といった全体の構成に関係する点も、意識して撮影しなければなりません。

 本格的な撮影では、一番最初に表現意図を明確にするわけですが、慣れない段階でそれをやるのは難しいでしょう。そこで、表現意図に触れない形で、練習すべき注意点を挙げてみました。

< 表現を狙う基礎段階 >
・第1段階
  ・主役を明確に決める
  ・背景の入れ具合を整える
・第2段階
  ・主役の切り取り方(大きさや範囲)を決める
  ・主役の上下方向のアングルを決める
  ・主役の左右方向のアングルを決める
・第3段階
  ・背景で主役を目立たせる
  ・脇役を入れたり外したり
・第4段階
  ・何となく決まってる感じ(構図に相当)で撮る
  ・決まっている感じを、少し崩して撮る

 この段階になると、レンズの使いこなしのように、決まった内容を教えることができません。可能なのは、どういう風に考えるのか、考え方の流れや要点を抽象的に説明することです(具体的な説明は、本サイト内にあります)。

 こうした特徴なので、説明を何度も読みながら、繰り返し練習するしかありません。毛色の異なる様々な被写体に対して、ショットごとに深く考えてみてください。

表現のレベルアップ段階において考える主な点

 表現に関する注意点を、さらに続けます。今度は、もう少しレベルアップするための注意点です。露出、コントラスト、色合い、主役を写す大きさ、ピンぼけ、ぶれ、フラッシュ利用などを含めてみました。

< 表現を狙うレベルアップ段階 >
・第1段階
  ・何に露出を合わせるかを決めて撮る
  ・教科書的な露出よりも明るく撮る
  ・教科書的な露出よりも暗く撮る
  ・コントラストを高めて撮る
  ・コントラストを低めて撮る
・第2段階
  ・主役と背景の色合いを考えて撮る
  ・主役の脇役の色合いを考えて撮る
  ・写真全体での特定の色が強くなるように、切り取って撮る
・第3段階
  ・主役を相当に大きく写しながら、写真全体を整える
  ・主役を小さめに写しながら、写真全体を整える
・第5段階
  ・わざとピンぼけで撮る
  ・わざとぶれさせて撮る
・第2段階
  ・フラッシュで主役を目立たせる
  ・フラッシュで独特な雰囲気を作る

 以上のような注意点ですが、正直なところ、ごく一部の被写体にしか適用できません。だからこそ、どのような被写体に利用したら魅力的な写真になるのか、常に考える必要があるわけです。身に付く可能性を少しでも高めるために、練習に関しては、次のような手順で進めてください。

< 特殊な表現での練習手順 >
・いろいろな被写体で、とにかく試してみる
・試した結果を見て、どんな被写体なら利用できるか考える
・利用できそうな被写体を見付け、それを撮ってみる

 挙げた注意点を使えるようになると、ただ写したのとは異なる表現ができるように変わります。表現の幅を広げるためには、このような変わった注意点の練習も大切なのです。

挙げた点の詳しい内容は、本サイトや単行本などで調べる

 ここまで、かなり多くの事柄を挙げてみました。事柄を1行で表しただけでも、かなりの量になってしまいました。すべての事柄について細かく説明するのは、書くのが大変なので省略します。

 詳しい内容を知りたい人は、本サイトの別なページを読むか、写真関連の書籍やサイトで調べてください。きっと見付かるはずです。いや、もしかしたらダメかも知れません。ダメな場合は、写真関連の掲示板などで尋ねてください。親切な人がいれば教えてくれるでしょう。

 ここで挙げた事柄が、世の中の全部ではありません。あくまで、主なものだけです。本サイトの特徴といえる、写真表現に関わる部分を優先して選んであり、その方面に少し偏っています(より重要だから偏らせているわけですが)。

 他には、特定の被写体を上手に写すコツなど、まだまだ様々な注意点や使い方があります。それらも、写真関連の書籍やサイトで調べ、より多くの知識や技を習得しましょう。

(作成:2003年8月28日)
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