藤原言直 ふじわらのことなお 生没年未詳

藤原北家、右大臣内麻呂の曾孫。従五位下安縄の子。昌泰三年(900)、因幡権掾・内豎頭。古今集に1首のみ。

春のはじめによめる

春やとき花やおそきと聞きわかむ鶯だにも啼かずもあるかな(古今10)

【通釈】春が来るのが早いのか、花が咲くのが遅いのか、鳴き声で聞き分けようものを――その鶯さえも鳴いてくれないことだ。

【補記】初春なのだから梅が咲いても良いはずなのに咲かないのは、暦の上で春が早く来すぎたのか、それとも花の開花が例年より遅れているのか、と訝ったもの。

【他出】新撰和歌、古今和歌六帖、奥義抄、古来風躰抄、定家八代抄

【主な派生歌】
春やくる花や咲くとも知らざりき谷のそこなる埋木の身は(和泉式部[新勅撰])
春はとし霞かかれる梢より花ぞおそきと鶯のなく(慈円)
春やとき谷の鶯うち羽ぶき今日しら雪のふる巣いづなり(藤原定家)
春やときとばかり聞きし鶯の初音を我と今日やながめむ(〃)
鶯のはつねをもらせ春やとき花やおそきと思ひさだめん(後鳥羽院)
白雪のふる枝の梅を花とみて春やおそきときゐる鶯(藤原為家)
木々の雪花かと見えて花やとき春やおそきとあやまたれぬる(三条西実隆)


更新日:平成16年02月18日
最終更新日:平成22年12月29日