日本列島・全国郷土玩具の旅

----香川県篇・第2回----

----KAGAWA (2)----


嫁入人形
 ◇掲載の「嫁入人形」は、大崎豊五郎さんの練り物製です。大崎さんは長年の研究で「高松の嫁入人形」は本来は泥とおが屑を半分ずつ混ぜ合わせた練り物製で、天日で乾燥させ胡粉をかけて彩色したものとわかり、その技法にしたがって制作しています。

 ◇張り子の嫁入人形:前回に「ほうこうさん」を紹介しましたが、これと並んで「高松張り子」でもう一つ、有名なのが「嫁入人形」です。
 現在の嫁入人形はほとんど張り子製になりましたが、明治から昭和の初めまでは主に土人形製でした。
 粘土をかためただけであったため、もろくて割れやすいこの土人形に掛けて、割れること(夫婦の契り)を縁起よしとしたものです。
 婚礼の翌日に花嫁は「デコサンいた、人形いた」と囃しながら人形をもらいにくる子供たちに、土人形を紙に包んで与えました。与える人形の数が多いほど評判がいいので、4、500個も買い入れる人がいたという話しです。
 ちなみに、狆鯛は、狆(犬)が鯛を抱きかかえている面白い組み合わせで、「イヌ」とは方言で「帰る」の意味があり、犬が正面を向いているので「イヌまい、メデタイ」という(嫁に行ったら帰ることはない)の語呂合わせです。
 この土人形が、時代とともにいつのまにか「割れない人形」へと変わっていき、陶器製となり、張り子製となりました。
 この嫁入人形はたくさんの種類があり、「鯛えびす」そのほか、いわゆる「縁起物」といわれる人形類はすべて嫁入人形に使われます。また、これらの人形は、三月や五月の節供にも飾られます。

 --製作者は、前回紹介の方々と同じです。--



讃岐の獅子頭
 讃岐(さぬき)の獅子頭は、子供向きの玩具ではなく、祭礼に使う本格的な獅子頭のミニチュアで、製法も大型と同じ漆塗りで仕上げられています。
 制作している2軒はともに祭礼用の大型の獅子頭作りが本業で、余った時間でこの小型の獅子頭を作っています。ちなみに、宮武嘉吉商店の獅子頭では、1寸5分(約4.5cm)から1尺5寸(45cm)の本格的なものまで10種類が作られています。(獅子頭の大きさは、後部の口の開いている部分にさしわたされた横木の寸法で呼びます。)
制作者:宮武正友「宮武嘉吉商店・4代目」:高松市錦町2-8-15...TEL:0878-21-7813
制作者:丸岡光信「獅子屋・3代目」:三豊郡三野町大見丸尾...TEL:0875-72-4333

運動人形
 張り子や嫁入人形で前に紹介しました「大崎豊五郎(大崎文仙堂)」さんが、この珍しい人形を作っています。「ヘラヘラ踊り」「げんこつ飴売り」「ラッパ吹き兵隊」の3種類、いずれも明治時代の風俗人形で、明治20年頃、大阪の人形師・角新太郎が草案したものを、受け継いでいます。
 台の上の人形は下に付いている重りとでバランスをとっており、下の重りが揺れると 台の上の人形も揺れるという仕掛けです。

屋島近辺の諸玩具
◆祭り舟(廃絶):厚紙製。木田郡庵治(あじ)町の皇子神社の祭礼に神輿の渡御に用いられた祭り舟の玩具。(故、谷本祐一さん作)

◆滝宮の念仏踊り:高松市の南西、綾南町の滝宮天満宮で8月25日に行われる、雨ごいから端を発した民俗行事を模したものです。谷本としえさんが、ほそぼそと作っていられます。
第1回に記載してある「ひさ六」で売っています。
  --谷本としえ:高松琴平電鉄志度線、琴電屋島駅、駅前。--

◆八栗だるま:八栗五剣山に登るケーブル乗り場のそばの「十河神具店」で、張り子面とともに売られていましたが、現在は確認できていません。(制作者の漆原千代さんは明治38年生まれです。)

◆五人百姓(廃絶):金刀比羅宮参道の大門の内側に名物の五人百姓あめ売りが並んでいます。その、箱の上で飴をナタで割って売っている老婆を張り子にした玩具でした。(故、谷本祐一さん作)

 

 
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(1999.3.21掲載)