【民芸館】......全国郷土玩具の旅


山梨県篇ー2

----YAMANASHI----




奈良田のおぼこ・木槌・鉄砲
 奈良田は県の西部に連なる南アルプスの玄関口で、山峡のわずかな平地につくられた集落です。かっては陸の孤島といわれていました。この地域に正月の民俗行事に作られる木製の玩具があります。
おぼこ・木槌・鉄砲は家庭で作られ、どれも目出度い模様と「富貴長命」「目出度くかしく」など墨書きされています。
これらは、小正月の飾りものを作る1月14日に、一緒に作ります。そしてその夜、子供達が、前の年に男の子が生まれた家には鉄砲や木槌を、女の子が生まれた家にはおぼこを持って訪ね、そのお返しにみかんや菓子などを頂きます。
このような子供にとっては楽しい思いでの行事は、いくつかの地方にかろうじて伝えられています。
こうした子供達は、小正月に訪ねてくる客人神(まろうどかみ)であって、今もわずかながら残されている貴重な民俗行事なのです。




かなかんぶつ
「かなかんぶつ」という語源ははっきりとはしていません。「金兜」「金甲」などと書いてかなかんぶつと読んでいます。別名「オカブトサン」とも呼ばれていますから、甲兜、鎧兜のことでしょう。
「甲州府中にて毎年5月5日に是を飾る。かなかんぶつといふ」(うないの友第4巻)
男子の誕生を祝う端午の節句に親類、縁者がこれを贈り、座敷一杯に飾るという風習が明治末頃まで続いていたといわれます。
その後、廃絶していましたが、戦後、前ページの鳩笛で紹介した甲府市の佐藤さんが、復元、制作されています。
佐藤さんの作は、面は張り子、他はボール紙で作られた全長1メートル位の飾りもので、面は武田信玄と天狗の2種類があります。
昔は、面には武田信玄・楠正成・源義経・梅王丸・松王丸・桜丸などがあったそうです。

福龍(龍神招福)
昭和39年の年賀切手のモデルにもなった木製玩具で、昭和30年頃より甲府市の歯科医、早乙女勉さんが「信玄だるま」とともに制作していました。現在は作られていず、おしくも廃絶しました。



----山梨県篇・おわり----

(1997.9.15掲載)


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