Benchmark DAC3
DAコンバータ

CDでもハイレゾやアナログ並の精密な音像定位が可能

2022年9月13日 アップサンプリングによる高域特性の変化(実測)
CD再生時のDEQ設定を変更
Foober2000を使うための設定を追記(2022年3月15日)
 ハイレゾをDAC3 Bに接続するように変更後もuDSDを使う理由を追記
 (2022年1月4日)

上:DAC3 B 下:ADコンバータ ADC1

Benchmark Media Systems


デジタル出力ができないSACDもDEQ2496にデジタル入力するため、
CDプレーヤ DP-720 は、以下のような接続になっていました。

アナログ出力をADコンバータ Benchmark ADC-1 で96kHzのPCMに変換。
SACDをDEQ2496に入れる苦肉の策でしたが、結果、非常に良い音です。




その後、CDでも44.1kHzPCM出力を使うより、SACD同様、アナログ出力をADC-1で96kHzにする方が、ずっと音が良い(定位が良い)とわかりました。

これに気が付いたのは2021年夏頃。そうと分かれば、DP-750にしたらもっと良いのかも。しかし、2021年にDP-1000 /DC-1000が発売され、DP-750も2年以内には更新されそう。今からDP-750にしたものか・・・。

そんな瞑想にふけるうち、DACチップにES9028かES9038を使ったDAコンバータを買って、DP-750の次世代機を待つのはどうか、という妄想に到達しました。

DACの選択

 いろいろと考えた末、
ES9028を搭載するBenchmark Media Systems DAC3 B
にしました。

 
DAC3 B は、多機能なのに、私が必要とする機能のみで、操作もシンプル。

3段切替出力レベル、2つの光入力(私には意外と重要)、2つのCOAX入力、それらのダイレクト選択、デジタルパススルー出力可能、別売ながらリモコンあり。一方、デジタルフィルターの選択機能はなく、「一番高精度のフィルターを選びました」と、アキュフェーズと同じ発想。電気特性を科学的に追求する姿勢も、その計測データを全部公開する姿勢も、技術者として共感できました。
しかも、ADC-1の実績で、Benchmarkは、外装も含めて非常に品質が良いのも確認済み。
その他、44.1kHz・48kHzのどちらの整数倍でもない211kHzオーバーサンプリング、超低ジッター(UltraLock3)、デジタルフィルターで発生する0dB越えの音もひずみなく再生する高ヘッドルームDSPなど、技術的に納得する仕掛けもいろいろです。ビット数実測表示、データエラー(補間発生)警告表示などもマニアックで面白いし、役に立ちそう。


弱点は、なかなか試聴できないこと。日本のオーディオ誌にも、ほぼ登場しない。

しかし、26.4万円
(2021年当時、2023年は39万円)と、非常にリーズナブルなお値段(いや、一般常識ではタケーよ)
海外では超高評価なので、とりあえず、試聴もせずに買ってみることに。
→ ADC-1もそれで成功したのですから。


しかも、ADC-1とお揃いのデザインなので、こんなうまい置き方ができる。

DAC3 の接続方法

以下2つが考えられます。
@ 2台目のDACとしてエソテリックD-02xと使い分ける。
A DAC3のアナログ出力をADC-1経由で96kHzPCMに変換する。
      DAC3+ADC-1を、高品位アップサンプラーと見なす事になります。

常識的には@ですが、DP-720との差を聴くためにAからはじめました。
そして、その音(この後説明)に驚愕。ES9018から9028への進化は大きい。

その後で、@も試しました。以下はそのテスト中。

確かに、ストレートな音にはなる。しかし味気ない。私には、どうしてもAの方が良い。
D-02xのデジタル・マジックを通るからだと思います。いわゆる「すごい音」になる。迷わず、非常識なAの方に決定です。



アースループを作らぬようにCOAXとTOS(光)の変換も使って、
@ 44.1kHzPCMダイレクト(DAC3のDigital pass throughを使用)
A
DP-720のアナログ出力をADC1で96kHzPCMに
B
DAC3のアナログ出力をADC1で96kHzPCMに

を聴き比べられる配線にしました。

その音は
 
まず、AとBの比較。音色としての変化は意外にない。DP-720に極めて近い音色。ただし、音の定位が全く違う。DAC3にすると、中央に定位するバイオリンの音像が、すっと小さく収束。バレーボールがテニスボールくらいに。

 これは聴いたこともない収束ではありません。アナログディスクやハイレゾで、常に到達していた定位です。しかし、それがどうしてもCDでは出来なかった。
 これは高音部の位相特性が、44.1kHzでは非常に悪いため。ただし、それは技術進歩で改善していくことは分かっている。そして、DAC3で、ほぼアナログディスクに追いついた。ハイレゾにはもうちょっとかもしれないが、もはや、ほとんど気にならない。

 次に、@とBの比較。@は、これまで通りのCDの音。クラッシック曲で聴くと、楽器の定位がバスケットボールくらいに大きい。クラシックのCDでは@Aが、Bに勝るケースはないと判定しました。ただし、オンマイク・ボーカルのポップスだと、@の方が自然で快適なことがあります。

 DAC3を使う
Bだと、初期のデジタル録音のCDも、気持ちよく聴けます。今後は、CDでしか出ていない曲も、躊躇なく買えます。


内部の設定
 DAC3は、内部の基板上で、二つの設定ができます。
@ 出力レベルアッテネータ設定: 0dB、-10dB、-20dB
A Digital Pass ThroughのOn/Off: COAX入力4が、デジタル出力に変わる。
「基盤を触る時には、静電気防止のためアース付の腕カバーをせよ」との注意書きも。いや、普通は持ってないでしょ。蓋は自分で開けるな、というコンシュマーモデルと、プロ用機の差ですね。

これが内部の様子。アキュフェーズやマッキントッシュ並の美しい基盤と配線です。
外装には金がかかっていても、蓋を開けると、あれ?っていうのも多い中、これは
なかなかの仕上がり。EAR Phonoboxが手作業の名人芸なら、こちらは設計の
プロの仕事。ボリウムとヘッドホン端子を備えた
DAC3-HCG と、それらを省いた
DAC3 B の基盤は共通ですが、使っていない基盤部を放置せず、ハンダで丁寧
に埋めているこだわりは、性能上での意味はないかもしれませんが、丁寧さが伝
わります。


@ 出力レベルアッテネータ設定
 XLRアナログ出力部のジャンパープラグ4個で-10dBに設定します。

DAC3の出荷状態は、プロ用機の24dBu(=12.3V)なので、これは大きすぎる。
DP-720の出力は約10dBu(=2.5V)なので、それに近づけるため、DAC3の
アッテネータを「-10dB」に設定し、出力を14dBu(=3.9V)にします。
DAC3の方が4dBほど音が大きくなり、そのままではDEQ2496のデジタル入力
が0dbをオーバーしかねませんので、DAC3にあわせ、ADC-1のトリマを調整し
ゲインを4dB落としました。
DAC3とDP-720の相対音量は、DEQ2496の出力レベル設定で合わせます。


A Digital Pass ThroughのOn/Off
同様のジャンパー設定でDigital Pass ThroughをOnとします。そのデジタル出力は、COAX-TOS変換器を経て、DEQ2496のTOS入力に繋ぎ、CDを44.1kHzのPCMダイレクトで聴くときと、ハイレゾを聴く場合に使います



配線図をもう一度掲載。



リモート制御リレーの自作
 DAC3は、他の機器の電源On/Offを制御するためのDC12V出力があるので、ADC-1のOn/Offを連動させるためのリレーボックスを自作しました。

たまたまリレーも、妙にちょうどよいものが工作箱に落ちていたので、
作成費用ゼロ円。何のために買ったリレーだったか忘れましたが、
12Vなので車の改造用だったかも。

Benchmark DAC3 B は、こんなに小さいけれど、私のシステムの中で、CDの音を画期的に改善した重要器材となりました。

Benchmark Media Systemsの新しい輸入元、Emilai が作った日本語説明書は、印刷はレーザープリンターっぽいですが、誤訳もなく、内容は非常によくできています。よいディーラーだと思いました。



2021年12月追記
ハイレゾ接続をDAC3 B経由に変更

 DAC3 Bには、デジタル入力切替とデジタルパススルー出力があるので、ハイレゾファイル再生に使っているDDコンバータ uDSD の接続方法を、DAC3 B経由に変更しました。

以下にシステム全体回路図を示します。



ピンク部分がuDSD関連です。 uDSDのCOAX(RCA)デジタル出力は、Benchmark DAC3 B のCOAX入力3に繋ぎました。

uDSDを使う理由: DAC3にはUSB接続もあるのですから、それにPCを繋ぐことも試しました。しかし、他の大多数のUSB-DACと同じで、ドライバーで96kHzを選択すると、どのファイルもデフォルトで96kHzにアップ or ダウンサンプリングするタイプでした。オリジナルファイルを一切いじらず、ビットパーフェクトで送り出すuDSDがやはり貴重です。音も、少なからず変わってしまうので、今回も、uDSDを採用し、あえてS/PDIFでDAC3に繋いでいます。


ハイレゾは、デジタルパススルー出力端子 → DEQ2496。
44.1kHzCD同等は、DAC3 B+ADC-1で96kHzに変換 → DEQ2496。

DA-3000配線の変更: デジタルレコーダDA-3000の出力は、これまでは下の左図(黄色部)のようにSRC2496に入れてあり、DA-3000の入出力線間に、やむを得ないアースループが存在しました。しかし、上記変更に伴い、uDSDに繋がっていたDEQ2496の光デジタル入力が空きましたので、下の右図のように、COAX出力をTOSに変換してDEQ2496に直接入れることで、このアースループを解消しました。
 → 
 これまでも入出力の線を捩じり合わせていたので、アナログのL-R間にある小さなループと同様で、実際には気にする意味はなかったのですが、可能なので完全解消のほうが気分が良いかと思いました。




Foober2000を使うための設定
 DAC3のUSB入力を使う場合、Windows10以後ではドライバーのインストールは不要なのですが、なにも操作もせずにUSBケーブルをPCと繋いだだけで動くわけではありませんでした。以下に、私の場合に必要だった操作を記載しておきます。

1)Foober2000の操作
 @Foober2000のトップのメニューから「Libraly」をクリック。
 A左のメニューから「Output」をクリック。
 B開いたページの一番上の「Device」の選択欄のプルダウンメニューから、
   「DAC
2」の文字がある名前を選択(DAC3じゃないのに注意)。
 C左下の「Apply」をクリック。
 Dその右の「OK」をクリック。
 以上で、Foober2000での再生は可能になります。

再生されたデータのサンプリング周波数は、いくつになっているか、
DAC3の表示で確認しましょう。96kHzのハイレゾのはずなのに48kHzとかになっていませんか? 以下の操作で、使いたいサンプリング周波数を選択しておかなければなりません。音が出ないという事態を防ぐため、古いDACでも対応する48kHzがあらかじめ選ばれている可能性があります。

2)Windows10の設定

 @Windows10の画面左下にマウスを動かした時に出る「
」みたいなマークをクリック。
 A左側の
ギアみたいなマークをクリック(設定に入る)。
 B
システムをクリック。
 C
サウンドをクリック。
 Dトップ欄では DAC
2 の文字が含まれるデバイス名が選ばれているのを確認して、
   その下にある
デバイスのプロパティをクリック。
 E開いたページの下の方にある
追加のデバイスのプロパティをクリック
 F上に並ぶタブから
詳細をクリック。
 Gサンプリング周波数の選択肢がでるので、使いたい周波数を選択。

 どんなファイルを再生するときも、上記で選んだサンプリング周波数に
変換されて再生されます。例えば、96kHzを選んでおいたとすると、44kHzのCDからのリッピングファイルも96kHzに(勝手に)アップサンプリングされますし、192kHzのハイレゾも96kHzに(勝手に)ダウンサンプリングされます。再サンプリングしない、という選択肢はない。それでハッピーな場合には問題なし。

 私は、CDのリッピングファイルは44kHzで、96kHzのハイレゾは96kHzで再生したかったので、DAC3のUSB入力の利用をあきらめ、勝手に再サンプリングしない 
uDSD を使ってS/PDIFに変換してDAC3に入力しています。96kHzハイレゾの音は、uDSDからS/PDIFで入力した音と、DAC3にUSB入力した音とで、区別がつきませんが、44kHzのリッピングファイルの音は、USBからDAC3に入れると、勝手に96kHzになるので、明らかに音が変わります。悪くなるとは言えませんが、そこで勝手に変わるのが気持ちが悪い。


 CD再生時の特性変更(2022/7/3)

 DAC3+ADC1による96kHzアップサンプリング再生により、CDの高域はかなり改善されました。無理して背伸びしていない透明感のある高域。しかし、1980年代の44kHzデジタル録音原版の場合は、CDとアナログレコード両方を持っていれば、レコードで再生したほうが、なんか高域の印象が良い。非常にわずかですが、ベールを一枚はいだ感じ。現代のADCの方が優秀なはずなのに、これは不思議。

 理由を想像するに、カートリッジのSUMIKO Starlingも、バンデンハルMC-10Sも、高域の周波数特性が上がっています。

SUMIKO Starling


Van den Hul MC-10S




 とりわけ、44kHzデジタル録音原版のレコード再生で気に入っているMC-10Sのほうは、4kHz付近から直線的に上昇が始まっている。
 かつて、CDの再生特性もこれに合わせて高域をあげてみたことはありましたが、結果は、当時は、CD高域の弱点を強調するばかりで、没でした。
 しかし、その頃はDAC3+ADC1を使わず、44kHzのままで聴いていた頃のはなし。DAC3+ADC1にしてからは、まだ、高域特性変更を試していなかったのを思い出したのでした。

 MC-10Sの高域のように、5kHz以上をちょっと強調してみてはどうかな。で、やってみました。



DEQ2496のGEQ設定のLchのみ比較しています。赤が旧設定、青が新設定。
年寄には聴こえない12kHz以上は無駄に上げないことにしました。

 これは、想像した通りの良い方向に変わりました。ヒヤリングの結果から、MC-10Sの特性より少し多めに強調していますが、原版がデジタル録音のアナログレコードの再生音に近づいた感じ。今回は、DAC3+ADC1 のおかげで、CD高域の弱点強調も感じません。

 なんか、高域の空気感がふわっと広がる。定位も少し引き締まる。よく体験する例としては、スピーカーの薄いサランネットを外したような違い、といえばわかりやすいかも。

 こんなお金がかからないお楽しみがあるのがDEQ2496の威力とも思います。


     2021年11月19日
     2021年12月23日改定
     2022年3月15日追記
     2022年7月3日追記

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