Benchmark ADC-1
Benchmark ADC-1
ADコンバータ
2015年10月
 
SACD & LP用ADコンバータ


高透明度ガラスプレート+超低反発インシュレータは自作。

1. SACDをPCM化する
 ここまでSACD導入に時間がかかっていたのは、デジタル出力が許されないSACDをDEQ2496にデジタル入力する方法に迷っていたからでした。

  そもそもSACDのデジタル出力は禁止されているなどの説もありますが(法的には微妙)、HDMI出力と、いまは売っていないちょっと古いゲーム機やHDMIコンバータを通すと、SACDの出力を88.2kHz以上のハイレゾPCMで出せるというのが割とよく知られている方法のようです。

 もちろん、この方法も考えてはみましたが、HDMIが付いているのは大抵が、いわゆる「SACDも再生できる」マルチディスクプレーヤーで、ハイエンド級のSACDプレーヤーではHDMI出力がある機種というのは極めて少ない(いまは絶滅)。

 違法ながら、SACDからDSD信号を取り出すという怪しいソフトもあるようですが、DSDではデジタルイコライジングはできませんし、違法かもしれないものは、私には無縁です。


 長年(本当に何年も)考えぬいた結論は、LP同様、アナログで出力してADコンバータでPCM化する、という至極真っ正直な方法です。無限オーバーサンプリング(つまりアナログ化)してからAD変換するわけで、お金はかなりかかりますが、これが一番いい音になる気がします。

 しかし、ADコンバータは、コンシュ-マ・オーディオではほとんど商品がないので、PA用製品から探すことになります。これは安いのもあるし、逆に上を見ればきりがないけれど、やはりADコンバータも「アナログ機器」なので、数万円の格安品というわけにはいかんでしょう。

 10万円前後のRME ADI-2と、20万円程度のBenchmark ADC-1とに絞り込みました。しかし、ここからは参考になる情報も少なく、この際、仕方がないので、両方買ってみた結果、SACDのデジタル化用には、Benchmark ADC-1 を採用。Benchmarkは日本ではあまり知られていませんが、米国ではPA用として名が知れているらしいです。納期はかかりましたが、正規輸入品が買えました。


RMEとBenchmark、どちらも、そこまでの価格はどうもなあ、という方には、2万円台で買えるベリンガーのSRC2496内蔵のADCを使うことを薦めたいです。言い方を変えれば、SRC2496のADCは価格から考えるとかなり優秀です。これはまったくリーズナブルなお値段。可変入力がある分、DEQ2496のADCよりよいと思います。DEQ2496の2段切替の入力は、帯に短し、たすきに長し、になりがちで、ちょっと使いにくい。もちろんADC-1と同じとはいきませんが、ADCは変換アルゴリズムに工夫の余地があまりないので、DACほどコストの差がでないように感じています。

 ADC-1はPA機器ですから、アナログ入力は当然バランスです。SACDプレーヤからのバランス出力をBenchmark ADC-1に入れ、96kHz24bitに変換、TOS光ケーブル経由でDEQ2496に送ります。ADC-1は、TOSも含めて192kHzでも出せますが、DEQ2496の制約で、今は96kHzまでです。TOSの差込口が非常に固くしっかりしていて感心。

TOSってアマチュア専用かと思っていましたが、プロ仕様ってのがあるのでしょうか。グラグラしません。(グラグラすると、同期が途切れてしまうのが確認できますから、音にもよいはずはないのです)。光のSTリンクが滅亡した今となっては、TOSに頑張ってもらわねば仕方がありません。光リンクは、私のように複雑な機材組合せをする人間にとっては、アースを切るのに重要なことがあるんです。









 
ADC-1で経由で出てきたSACD(マランツSA-11S3 や アキュフェーズDP-720)の音は、期待以上でした。これはまがいもなくSACDの音です。これならLPの音にも対抗できると思います。

2021年12月追記:その後、Benchmark DAC3 B (上の写真のADC-1の上)も追加し、CDも44.1kzのままでなく、DAC3 + ADC1 で96kHzに変換してから DEQ2496 に入れ エソテリック D02x でDA変換、という常識外の接続で聴いています。CDは、何度試してもこれが最良。DAC3 +ADC1はどんなアップサンプラー(アップスケーラー)より優秀と思いました。(詳細は下記)


以下は、
RME ADI-2(上)とBenchmark ADC-1(下)の比較テスト中の様子。

 Benchmark ADC-1は、LPを聞いているかと思うようななめらかな音と、充実した低域が印象的。
 Thorens TD-126MkIIIに付けた Van Den Hul MC-10 Special (+フォノイコライザ Octave EQ.2) の出力をデジタル化するのにもADC-1採用しています。

 一方、RME ADI-2 の音は、こちらのほうが歯切れがよいという人もいるかもしれません。こちらは、Pro-Ject Xtension 9TAに付けたSumiko Starling (+フォノイコライザ EAR Phonobox)の出力をデジタル化するのに採用しています。シャープなStarlingにはこちらがふさわしい。


キャリブレーション機能
 BenchmarkのADC-1は、RMEのADI-2にはできない機能があります。それが入力の精密キャリブレーションです。


 上の写真のVariableと書かれた下のレバー(左右それぞれ)を下に下げるとCalibratedのモードに変わり、大きな黒ダイヤル(1dB刻み)は無効となり、その横の穴の奥にあるトリマーで音量を微調整可能になります。トリマーは精密ドライバーで回します。10回転回りますので超精密です。この機能と、DEQ2496のレベルメーター(0.1dB精度)とピンクノイズを使うことで、左右差を0.1dB精度で揃えることが可能。DEQ2496でも調整精度は0.5dB刻みなので、ここで精密調整しておくことがベストです。


2. CDの再サンプリングにも利用


 デジタル出力が可能なCDは、常識的にはデジタル出力をDEQ2496に直接入れると思いますが、実は、SACDと同様に、DP-720のアナログ出力をADC-1に入れて96kHzに再サンプリングしてからDEQ2496に入れると、曲によっては圧倒的に良いことがあります。最初は、接続設定をSACDのままで「間違って」CDを再生して、音が良いのに驚いた、というのが発見の経緯。

 さらにDP-720より最新のESSチップ ES9028proを搭載するBenchmarkのDAC DAC3 B まで導入し、CDも 
DAC3 B +ADC1で 96kHzに変換して聴くようにしました。

 44.1kHzのままのデジタル入力では、ほぼ、エソテリックの音で聴くことができます。きれいな響きが伴う、最高レベルのCDの音。でも、定位がかなり拡がります。

 
DP-720のアナログ出力+ADC-1経由の音は、アキュファーズの音が優先し、そこにD-02xの超高S/N感が加わるイメージ。響きが少し整理され、その分、定位がシャープで、聴こえる音数も増えます。こちらは、バイオリン・ソナタとかバイオリン協奏曲で、ダントツに快適。ハイレゾに準ずる美音と定位感を示します。


 さらに、44.1kHz出力をDAC3 Bに入れ、そのアナログ出力をADC-1に入れて96kHzにすると、音色は上記のDP-720の時と非常に似ていますが、
定位の収束が圧倒的にシャープになります。ES9018よりES9028のDA変換の精度が上がったからです。

 ADC-1の価格は21万円くらい。安くはないですが、私にとって、SACDの(そしてCDの)音質を決定づける機器なんですから、むしろ、DP-720等に対して、健全なバランスという気がします。

2015年10月
2015年12月改定
2021年3月改定
2021年12月改定


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